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14話。モブ皇子、Sランク冒険者に勝利し、心服される

 ガイン師匠は、迷いを吹っ切るかのように剣を構えた。


「だが、ソイツはできない相談だ」

「……なぜですか?」


 俺はとにかく詳しい状況を聞き出そうとした。状況さえわかれば、打開策が考えられる。


「レナは魔法で、決して目覚めることのない昏睡状態にされている。しかも、居場所もわからないときたもんだ。確実に言えるのは……俺が裏切ったらレナは殺されるってことだ!」


 ガイン師匠から爆発的な魔力が放たれると同時に、その全身の筋肉が盛り上がった。


「固有魔法【狂戦士】(ベルセルク)!」


 これは身体能力強化系の固有魔法か。

 この心臓を握り潰されるかのような威圧感は、並の強化率じゃないぞ。


「俺の切り札だ。力が倍増する代わりに理性が飛んで、相手を殺すまで止まらなくなる! お前も俺を殺す気で来いルーク!」


 俺が口を開く前に、地面を蹴ったガイン師匠が音さえ置き去りにするような猛スピードで迫ってきた。

 戦いたくはないが、全力で迎え撃つしかない。


【闇刃壁】ダークエッジ・ウォール!」


 俺は分厚い大盾形態の【闇刃】(ダークエッジ)を、目前に展開する。


「うぉおおおおおおッ!」


 獣のような雄叫びを上げて、ガイン師匠が【闇刃壁】ダークエッジ・ウォールに剣を叩き込んだ。


 一撃で、【闇刃壁】ダークエッジ・ウォールに亀裂が走る。腕がビリビリと骨の髄まで痺れた。


 ま、まさか、これ程とは。まるで破城槌のような破壊力だ。


「はぁ!」


 俺は足裏から【闇刃】(ダークエッジ)を飛び出させ、その反動で後方に跳躍した。


 ガイン師匠の剛剣が、俺のいた空間に打ち下ろされる。

 あと一瞬、反応が遅れていたら、【闇刃壁】ダークエッジ・ウォールごと身体を真っ二つにされていただろう。


「ハリネズミモード!」


 さらに、ガイン師匠の追撃を防ぐために、身体の前面から無数の細長い【魔断剣】(ディスペル・ソード)を出現させた。


 【魔断剣】(ディスペル・ソード)を当てれば、ガイン師匠の固有魔法【狂戦士】(ベルセルク)を解除することができる。


「ぐぅッ!」


 ガイン師匠は本能で危険を察知したのか、寸前で踏みとどまった。

 だが、強引な急制動で身体のバランスが崩れる。


 狙い通りだ。


「【ヒュプノスの魔剣】!」


 俺は着地と同時に地面を蹴って、魔剣をガイン師匠に振り下ろした。


 バッキィインンンン!


 【ヒュプノスの魔剣】が師匠の剣とぶつかり合い、一撃で粉砕される。

 師匠は、ここぞとばかりに反撃に移ろうとして、身体を硬直させた。


「……剣術とは先の読み合い、そう教えてくれたガイン師匠のおかげです」


 破壊された【ヒュプノスの魔剣】の破片が、ガイン師匠に浴びせられていた。


 実は砕かれた破片にも、その誘眠効果が乗っていた。

 俺は【ヒュプノスの魔剣】の強度を下げて、わざと砕かせたのだ。


「ぐはっ!?」


 ガイン師匠は、糸の切れた操り人形のように倒れた。


「……ふぅ、危なかったな」


 ガイン師匠は冒険者の最高峰Sランクにまで上り詰めた男だ。

 単に剣が強いだけでなく、何か切り札を隠し持っていると思っていたが、これ程とはな。


 この2週間あまりの修行と、母さんのおかげで開発できた【ヒュプノスの魔剣】が無ければ、負けていたのは俺の方だっただろう。


 なにはともあれ、ガイン師匠を殺さずに制圧できて良かった。

 これが母さんが言っていた、他人を傷つけずに争いを収める理想の剣ってやつか……?

 

 あの時は、何を甘いことをと思ったが、どうやら世間知らずなのは、俺の方だったみたいだな。

 こういう窮地に追い込まれることだってあるんだ。


「レナちゃんの居場所がわからないか……手掛かりはこいつだな」


 俺は【ヒュプノスの魔剣】で眠らせたテイマーを、野営テント用の張り縄で、グルグル巻きに縛り上げた。


 それから、【魔断剣】(ディスペル・ソード)をテイマーの右足に突き刺して、目を覚まさせる。足を負傷させれば、万が一にも逃げられる心配は無い。


「ぎゃあああッ! て、てめぇ何しやがる!?」

「ガイン師匠の娘の居場所を教えろ。拒否するなら殺す」


 飛び起きたテイマーに、俺は努めて冷酷に告げた。


「はぁ……っ!? だ、誰が言うかよ!」

「状況がわかっていないようだな」


 テイマーは俺を7歳の子供だと思って、侮っているようだった。


 俺はさらに男の左足に【闇刃】(ダークエッジ)を突き刺す。敵に対して、かける慈悲など無い。


「あああッ!? ガキが、なんてことしやがる!?」

「お前が知らなければ、知っているヤツのところに連れて行け。次は、腕を刺すぞ」

「い、言う! 娘の居場所を話すからやめろぉおおおッ!」


 男は途端に素直になる。

 どうやら、俺が本気だと理解したようだ。


「よし。今からそこに俺を案内するんだ」

「はっ、はぁいいいいッ!」


 テイマーは泣き笑いのような表情になった。


「……ルーク、なぜ俺を殺さなかった?」


 ガイン師匠が目を覚ました。


 これにはいささか驚いた。もう【ヒュプノスの魔剣】の効果から抜け出すとは。

 どうやら、師匠は相当強い状態異常耐性を持っているようだ。

 

 だが幸い、理性が飛ぶという固有魔法【狂戦士】(ベルセルク)は解除されているようだった。

 これなら、まともな話し合いができる。


「決まっています。師匠もレナちゃんも助けたいからです。レナちゃんは、魔法で昏睡状態にされているそうですが、魔法を無効化できる俺の【魔断剣】(ディスペル・ソード)なら、解くことができるので、問題ありません」

「なに……!?」

「それから、彼女の居場所はこの男が案内してくれるそうです」


 ガイン師匠は衝撃に口をあんぐりと開けた。


「お、俺はお前を殺そうとしたんだぞ。なのに、俺とレナを助けてくれるのか?」

「俺と師匠は似たもの同士でしょう。俺にも、師匠の気持ちが痛いほどわかります。俺も母さんとディアを守るためなら、何でもする覚悟を決めていますから」


 なにより、ガイン師匠は俺に剣を向けるのに、ためらいを見せた。

 固有魔法【狂戦士】(ベルセルク)を使った目的は、パワーアップだけじゃなく、素じゃ俺に剣を向けられないからだ。


「それに俺たちが殺し合いをしたら、それこそカミラ皇妃の思惑通りじゃないですか? レナちゃんを助けて、あの女は叩き潰す。そうじゃなければ、俺たちの完全勝利とは言えませんよね」

「……恐れ入った。本当に俺の完敗だ」


 ガイン師匠は朗らかに笑った。


「お前が成長したら、きっと俺なんかじゃ足元にも及ばない、世界に名が轟くような英雄になるだろうなルーク」

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