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私は追い出された。使用人ギルドに登録して仕事を探そう。
ギルマスから紹介してもらった。
アドル伯爵家のタウンハウスだ。
☆☆☆アドル家
「旦那様、奥様、坊ちゃま。今日からお世話になるアフリでございます」
「うむ。子守メイドを頼む」
「そうね。ルキアって言うの。少しやんちゃだわ」
「ねえ。ねえ。僕と遊んでくれるの?」
「はい、アフリと申します。宜しくお願いします」
・・・・
ルキア様は8歳。
このくらいの男の子は元気いっぱいだ。外で遊ぶのを好まれる。
「アフリ!逆立ちをしたから見て!」
「はい、坊ちゃま。素晴らしいですわ」
「ねえ。アフリ、木登りするから見て!」
「はい、坊ちゃま。あまり高い所には登らないで下さいませ」
「大丈夫だよ!」
高い所に行くわ。注意をしてはいけない。声に気を取られたら落ちる原因になるわ。
私が出来る事は、落ちたときの対処よ。
「アフリ、天辺まで登ったよ!あっ」
落ちてしまった!
この場合、私の腕では坊ちゃまをささえるのは無理。
街の冒険者の会話を思い出した。
こういった場合、突き飛ばすのが賢明、落下したときの威力は半減する。
「坊ちゃま。失礼!エイッ!」
「ウギャアアーーー」
坊ちゃまは芝生の上を転がったわ。
「ルキア様!」
「見ました。このメイド、坊ちゃまを突き飛ばしました!」
「まあ、主家の子息になんてことを」
散々だった。伯爵夫妻からお叱りを受けた。
「何てことを、奇跡的に怪我が無かったから良かったものを・・・」
「使用人ギルドに連絡しますわ!」
「アフリは悪くないよ!僕が悪いんだ!それはやめてあげてよ!」
「まあ・・・通報だけはしないわ。しかし、短期で解雇になった貴女に職はあるのかしら」
「坊ちゃま。お世話になりました」
「ウワ~ン、グスン、グスン」
「坊ちゃま。私の事は忘れて下さい。辛い過去は忘れるのが1番ですわ」
私は使用人ギルドに戻った。
しかし、職はあった。
「王宮で第三王子殿下の婚約者選定のパーティーで人が足りない。臨時だ」
「はい、やらせて下さい」
メロディ、選ばれるかしら・・・いや、過去の事だ。どうでも良い。
☆☆☆アドル家
「リヒャルト殿下が来られました!」
「殿下、我が屋敷にご来訪、光栄の限りでございます」
「叔父と甥の関係ではありませんか。今日は話があって参りました」
「殿下、それでは応接室に、今、お茶をご用意します。護衛騎士の方々も」
私は第三王子リヒャルト、今日は母上の実家に訪れた。
大事な話があるからだ。
アドル伯爵と夫人に求めていた理想の婚約者が現れた事を報告するためだ。
「まあ、Fクラスで・・・と言うことは」
「天才肌であろう。あの論文は痛快だった。もしかして我国が抱えている問題を解決してくれるかもしれない。
侯爵令嬢と伯爵令嬢も選定されているが、王宮で口頭の実地試験を行う。嫌になるよ。出来レースだ」
「まあ、どちらの家門の令嬢ですの?」
「グラシー商会のメロディ嬢だ。知っていることを教えて頂けないか?」
「まあ、グラシー商会?平民ですわ。そう言えば、前の子守メイドもグラシー商会の雑用メイド出身でしたわね」
「殿下、最近、良い噂を聞きません。ある日から途端に商品が乱雑になりました。何て言うか商品が届くのが遅くなったり。間違って届くようになりました。」
「・・・もしかして、王宮の出仕が負担になっているのか?」
いや、しかし、それでもやらなければならない。
「この論文を見て頂きたい」
「まあ、綺麗な字だわ・・・大丈夫かしら、トンデモない内容だわ」
「ほお、過激だな。よほどの胆力があるのであろうが、大丈夫でしょうか?」
「はい、交渉相手も薄々分かっているはずです。でなければ騎士団の出番です・・・余興です」
話は終わった。ルキアにでも会うか。
「ルキアは?」
「それが、部屋で塞ぎ込んでいます」
「何かあったか?将来私の幕営に来てもらう人材だ。恋の悩みか?」
「いえ、実は・・・」
何と、木から落ちて、メイドに突き飛ばされた。
怪我はなかった。
メイドが解雇になり。自分のせいだと悩んでいる。
「どこから、落ちたのか?」
「それが、高い木で、天辺まで登ったようです。10メートルくらいかしらね」
「そんなに高く登って、落ちたら普通は大けがを負うぞ。受け止めようにも女性の腕だったら折れるな。そのメイドは怪我を負ったのか?」
「そう言えば、無事だったわね」
「そうか。ルキアと話をしよう」
甥から話を聞いた。
「グスン、グスン、僕のせいだ!」
「起きてしまった事は仕方ない。そのメイド殿が暮らしていけるように算段をしよう」
「有難うございます」
「気にするな。だから一生懸命学んで遊ぶのだぞ」
「はい!」
名前一つでは探すのは苦労する。冒険者ギルドに依頼するか。
突き飛ばした事について護衛騎士に尋ねた。
「ギリバース、普通、人が高い所から落ちたら貴殿はどうする?」
「はい、突き飛ばします。それが両法助かる方法でございます。しかし、知っていても出来るかどうかは分かりません。一見したら人情がない方法です」
「うむ」
しかし、冒険者ギルドでメイドの事を聞いたら、様子がおかしい。
有名人のようだ。
「おうよ。最近、見ないな」
「いつも街でキャンディーを配っていたよ」
「誰がプロポースするか。抜け駆け無しの協定があったんだ。茶髪で、目が薄い緑の子だろう」
なんと。ルキアから聞いた特徴と一致している。
「こちらは邪な目的で探しているのではない。男と男の約束だ・・・きちんと生活出来るようにするのが目的である」
理由を話し。クエストを受けてもらった。
「アフリ様と言ったら、グラシー商会の元後継ぎ娘様ではございませんか?」
彼女の境遇はギルマスが知っていた。
いつも、ギルドに商品を届けていたそうだ。
「ええ、あの家は今、大混乱です。アフリ様は追い出されました。私も気になっていました。クエストを受けさせてもらいます」
「宜しく頼むぞ」
同名のメイドか?よく分からないが、見つかったらルキアに人物を判定してもらって王宮メイドにすれば良いだろう。あの胆力騎士の妻向きだ。
さて、それよりも、メロディ嬢だ。
どのように振る舞うか楽しみだ。
兄上たちも興味津々だ。
最後までお読み頂き有難うございました。