第九話 オレンジ髪の魔法使い
レイヴン先生が去った後、俺の一日はかなり変化した。
午前は父さんとの剣の練習だ。だいぶ剣筋も良くなってきたので、
剣技を習得するのだ。例えば「爆炎斬」や「5連斬り」などの基本の技。
しかし今の冒険者はこういった技を誰も使わないらしい。
基本の技を使うが敵を倒しきれない!とかがあったりするそうで、そうなると強い技を求めてしまうからだ。
「アレク、もしどんなに強い技を放っても勝てない時があったとしよう。そうなったらどうすればいいと思う?」
「拳で殴るとか、、」
「どこの力自慢だ、、」
父さんはため息をつく。ただのジョークじゃないか。
ジョークが通じない人は嫌われますよベレトさん。
「答えは、自己流の技を使うことだ。」
「オリジナルですか?」
「そう。まずどんなことでもこれは大切にして欲しい。第一段階では基本となるものを参考書などを見て真似をする。第二段階でそれを極める。第三段階で自己流に発展させる。そうした方が相手と戦う際に、相手に読まれにくいし戦いやすい。どうだ?」
なるほど。確かにそれは有利だ。
父さんも元冒険者なのでちゃんとした説得力がある。
「わかりました。やってみます!」
「おう!だが、そろそろ午後になるぞ。」
「あ、もうこんな時間なのか!」
急いで着替え、駆け足で門を出る。
そう、これが俺の午後にやること。
隣の家のラミアと魔法を練習することだ。
俺はあの日から少しずつラミアと交流を深め、お互い魔法が得意ということで教え合うということが日課に加わった。
「ごめん!遅れた!」
「もう、遅いよ〜」
部屋に入り、疲れていない雰囲気を出す。
これ、カッコよく見せる時のコツね。
「じゃあまずは私の番。今日は守護系魔法の[ホーリー]を教えるね。」
「ついにマスター級の魔法ができるようになったの?」
「そうなの!これで夢の最強の魔法使いにまた一歩近づいたわ。」
早い間から夢を追いかけられるのはいいことだ。
前世は夢が見つからなくて、結局フリーターになっちゃったし。
それはそうとホーリーを唱えるのはかなり難しい。
マスター級の魔法は大人になってようやく唱えることができる魔法だ。
「そうそう、手と手の間を温めるイメージで、、」
その後、数十分ほどで俺も唱えられるようになった。
「よし、じゃあ次は俺だね。今日は花火をやってみようと思う!!」
「花火、、って何?」
「爆発魔法を使って火球を空に打ち上げるんだ。」
こんな感じで交互に魔法を教え合っている。そうした方が効率が良いのだ。
「こんな感じ?」
ヒュー、、ボゥッ
「燃えたら失敗かな?火力を調整するのがいいかもね。」
「わかった!そーっと、そーっと、、」
こんなことをしていると時間なんてあっという間に過ぎた。
「じゃあ、今日は帰るね。また明日!」
「うん、今日もありがとね。」
俺は手を振りながら屋敷を後にした。
今思うと、ラミアは結構可愛らしい男の子みたいなんだよなー。
俺は、夕焼けの空と同じように頬を赤く染めた。