第八話 出会いと別れ
「おじさん、この魔導書はいくら?」
「坊主にその本はまだ早いぜ。だが、どうせお前のことだから止めても無駄だろう。安くでいいぜ。」
「まじか!ありがとう!」
最近は修行が落ち着いてきたので、街に出て交流を深めることにした。
前世では周りの目を嫌い、外を出歩くことはなかった。
でも、最近の俺は『自信』というものが自然と湧いてくる。
この世界なら本当に前の自分から変われるのではないか、、
そう考えながら歩いていると、突然声をかけられた。
「あの、、すみません。少しお尋ねしたいのですがよろしいでしょうか?」
若い女性の声で、雰囲気もいい。
優しそうな見た目をしており髪の毛はオレンジ色?のロングの少女だ。
目は緑で帽子をかぶっている。
「はい。どうかされましたか?」
俺は紳士的な口調で返す。
「実は、この場所に行きたいのです。ここまでの道はわかりますか?」
「あ、ここの家なら知ってますよ。」
「ほんとですか!ありがとうございます!」
なんていい子なんだ。
ボソボソと言わずはっきり言ってくれる。
そしてなぜ俺がその場所を知っているのか。
それは俺の家の隣りだから、、
「ここですね。合ってますか?」
「はい!大丈夫です!ありがとうございます。」
「いえいえお礼なんていりませんよ。」
人を助けるのに見返りを求めたらそれは人を助けたとは言えない。偽善行為になる。
「ですが、お礼にこれを。」
少女は、変な紋章が刻まれた腕輪をくれた。なんだこれ?骨董品か?
「今日は本当にありがとうございました!あなたの名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「ロギアス・アレク・レオナード。アレクでいいよ。君の家のお隣さんになるのかな。」
「あれ、そうだったの?私はラミア・グライル。じゃあこれからもお隣同士というわけで仲良くしましょう。」
そう言うと走って館の中に入って行ってしまった。
俺は初めて他の女の子と喋ったので少し嬉しかった。
スキップをしながら家の方へ向かうと、レイヴン先生が俺の家の門の前で立っている。
「レイヴン先生。どうしたんですか?」
「そろそろ私も旅に出るのだよ。ずっと長居するわけには行かんからね。ちなみに、さっきアレクが話していた子はカルタナ族だね。」
なるほど。
だから少し違う雰囲気を感じられたのか、、ってそれよりレイヴン先生が出ていってしまうのか。
「本当に行かれるんですか?まだ教わりたいことはいっぱいあるのに。」
「あまり私が教えすぎると親の役割がなくなってしまうんだよ。それに君は充分強くなった。」
「じゃあ、最後にレイヴン先生に魔法が聞かなかった理由を教えてくださいよ。」
「ふむ、わかった。それはね、、、」
その話はとても興味深い内容だった。
「では、私はこれで失礼するよ。アレク、また会う日まで。」
「レイヴン先生、ありがとうございました!」
最後の挨拶をしている時に母さんと父さんが飛んで出てきた。
「お、俺からもありがとうと言っておくよ。レイヴンさん。」
「本当にありがとうね、師匠。」
父さんは照れながらいい、母さんは涙を浮かべている。
レイヴン先生も少し目が潤んでいる。
「2人とも幸せにな、、」
2人は恥ずかしそうだ。
そしてレイヴン先生は静かに去っていった。
教えられたり助けられたりばっかりだった。
そしてまた数ヶ月たち、俺は9歳になった。
10歳になると初めて誕生日を祝われるらしい。
そして俺は10歳になったら冒険者になると決めた。
理由としてはレイヴン先生がいなくなった今、神とやらが来たら対処できない。
だから冒険者の資格が取れる10歳になんとしてでもなりたいのだ。
こうして俺は、カルタナ族の女の子と出会い、レイヴン先生という恩師と別れた。
このことがのちに、アレクの人生に大きく関わってくるのだった。
ラミア・グライル ??? カルタナ族の魔法使いで、元気がある明るい子。アレクとは同い年でこの町に引っ越してきた理由は親の仕事の都合。