第七十一話 森の紛争
俺たち一行はネオアに連れられて、森の街から少し離れた『神域』と呼ばれる場所に来た。そこでは人族や獣族、そして珍しい昆虫族、鳥族など様々な種族が言い争っていた。
すると、1人の狼の獣族が声を荒げる。
「貴様ら人間が先に『神域』にまで居住区を広げてきたのではないかッ!」
負けじと人間達も指を刺しながら抗議する。
「ならば、貴様ら亜人だけが『再生の神』女神様の加護を独占するとはどういうことだッ!我々にも受ける権利はあるはずだ!」
これは、おそらく宗教的な勘違いだろう。両者が自分達の都合の良い解釈を教えられてしまい、意見が食い違っているのだ。
「ネオア殿、これを解決すれば女神に会えるのだな?」とルーク兄さんが腕を組みながら尋ねる。
ネオアは少し呆れた口調で質問に答えた。
「そうだね。話によると、女神様はこの件は収集がつかないと困っているらしいんだ。君たちが解決してくれたら必ず現れるだろう!……多分ね」
あ、コイツ最後に濁しやがったな?
「とりあえず、見て見ぬ振りは出来ないし二手に別れて聞き込みを始めようか。 じゃあレナとルーク、俺とアイヴィで……」と言おうと思ったら先程まで黙っていたレナが「嫌よッ!」と吐き捨てた。
聖魔王国の時からそうだが、彼女は兄さんを酷く嫌っている。兄さんも気づいているようだが、パーティになっている以上、贅沢は言ってられない。
「レナ、気持ちは分かるがこれから共に闘っていく仲間だ。今回で少し仲を良くしておいてくれ」
と言って別れたが、本当に大丈夫かなぁ……
ネオアは鼻歌を歌い、アイヴィは心配そうにあの2人を見ている。
とりあえず、さっきの争いで発言してた狼の人に話を聞いてみる。少しグレーの毛が混じり、身長も,体格もかなりがっしりしていて強そうだ。
「どうも。 少し聞きたいんだけど良いかな?」
俺は友好的な雰囲気で接触してみた。
しかし、彼は涼しげな表情から歯を剥き出し「グルル」と警戒する態度を見せた。
「申し訳ないが、君も説得してこいと言われたのだろう? 話し合いは難しいな。」
これは無理かな…と思っていると何かを発見したのか、急に態度を改めて聞き耳を立ててくれた。
「……申し訳ありません。私の誤解だったようです。何でしょうか? 必要とあらばお答えしますよ。」
アイヴィも少し警戒していたが、この人は別に悪い人では無さそうだ。
少し争いの場から離れ、静かな場所の切り株の椅子に腰掛けて話し始めた。
「自己紹介がまだだったね。俺はアレク。こっちはアイヴィでガイドのネオアさん。」
彼は一人一人に丁寧に会釈をしてから自己紹介を始めた。
「私はガロン。神域の守人をしております。そして…こちらがグレック、私のバディに当たります。」
大柄な体格の後ろからひょっこっと暗い顔をした男の子が出てきた。
「…よ……よろしく…」
やべ、暗すぎで全然気づかなかった……っとと早く本題の質問をしないと。
「俺たち、この争いを止める方法を探してるんだよ。この争いの発端って何かあったの?」
2人は顔を見合わせながら頷き合い、恐る恐るガロンの口から語ってくれた。
「実は、この件には奇妙なことが起こっているんです。それが……人の消失です」
周囲の木々が異様にざわめき始めた気がした。




