第五十三話 決戦前日
聖魔王国城内にて
「まだ、ロギアス・アレク・レオナードは捕まられないのか?これは貴様の失態だぞルーク。」
まだ治癒しきっていない身体で王の前に膝をつく。
「ご安心を。しばらく奴が何かすることはないでしょう。もし、また起こしたのならそこに向かいアレクを殺すのみです。」
俺だって自分の家族を手にかけるような真似はしたくない。
だが、唯一の問題点は俺はアレクのことを何も知らないという点だ。
その時、城の扉が勢いよく開き兵が慌てた様子で転がり込んできた。
「何事だ!?王の前で無礼だぞ!」
「も、申し訳ありません王よ。しかし、急ぎでお伝えしなくてはならないことがございます。」
王は部下に命令し発言を許す。
そして、俺の一番聞きたくない情報が入って来た。
「世界の異端者、ロギアス・アレク・レオナードが聖魔王国に戦争を仕掛けようとしている模様です!」
なに!?
「「「「まさか、、、いったいどうやって?」」」
周りがざわついている。
あいつ1人でどうやって戦争なんかを、、
いつのまにか俺はその場を飛ぶように離れ、アーサーのいる訓練所へ向かった。
「アーサー!!いるか!?」
アーサーは騎士団長の椅子で紅茶を飲んでいた。
「あぁ、知ってるよ。まずい事になったね。彼の情報を調べてみると大賢者レイヴンと接触しているようだ。」
大賢者レイヴンだと?なるほど。協力者のおかげでここまで出来たのか。
「やるのかい?」
こちら側も腹を括るしかない、、か。
「あぁ、戦の準備だ。」
獣王国 訓練所
あれから1週間。やめていたトレーニングをやり直し、魔力量と衰えていた筋力を取り戻した。
「998、、999、1000っ、、。はぁ、、はぁ。」
流石にきついな、、昔はよくこんなことを続けていた自分に感心した。
「さて、アレクよ。『能力』の次の段階へ行こうか。」
岩の上に腰掛け、リンゴを齧っている。
「次の段階?」
流れ出る汗をタオルで拭きながら聞き返す。
「そう。能力は『応用』することで別の力を発揮する。極少数だが、能力が『覚醒』する場合がある。まぁ、基本はならないと思っていた方が良いだろう。だが、覚醒に行くまでの道のりに能力の『応用』が必要なのだよ。」
例えるならエドワードが使っていた巨大ゴーレムか。俺も『複製』を使って『接続』の能力をコピーしているが、複数の部分を繋げることはできない。
「応用は口で言っても伝わりづらいな。そうだな、アレクはリンゴの食べ方はどんなものがあると思う?」
レイヴン先生はリンゴをクルクルと回しながら質問をする。
「アップルパイとか、、ジュースとか、、」
「そう!甘いというものベースにしてもっと他の味に変えて美味しくする。それと同じ原理だ。」
でも、それをするには何かを加えなければならない、、そうか!他の人の技術と俺の能力を合わせるのか!
訓練所にメリフィスを呼んで、召喚術のアレコレを教えてもらった。
「よし、これなら、、ルークにも勝てる。」
三日後 聖魔王国への道中
聖魔王国の騎士団が俺たちの行く道を塞いでいる。
「来たか、世界の異端者。降伏しない場合は武力で制圧させてもらうぞ。」
めんどくさいな。あの隊長が一番強いのか?
レイヴン先生の修行をつけてもらった俺が手こずる相手ではない。
「、、降伏の意思が無いようだ。能力『兵隊鼓舞』!」
周りのにバフがかかったようだ。
「かかれぇぇぇえ!!」
一斉に剣を持った兵が突撃してくる。
後ろのみんなが動こうとしたが、俺はそれを手で静止し大軍の中に向かっていった。
「邪魔だ。どけ。」
地鳴りを起こし、全員を薙ぎ倒す。
うわぁぁぁぁぁあ
兵がバタバタと地面に落ちていく。
もう後戻りはしない。
こうして二つの意思がぶつかり合う。
どちらも自分が正しいと思うことをするために。
『兵隊鼓舞』自分を含め、周りの人間のステータスを上げることができる。効果時間は10分程度だが、いくらでも使えるので集団戦ではかなり強力。




