第五話 初めての戦い
父さんが長い出張から帰ってきた。
「アレ坊、元気にしていたか?こんなに大きくなって、、」
「父さん、どんな冒険をしてきたのか教えてくださいよ。」
「あぁ、また今度な。あんまり話してやれなくてすまねぇ。」
かなり疲労していたようで軽く俺に話しかけたあと、すぐに眠ってしまった。
突然だが、俺には最近悩みがある。
ジュリアとそろそろ打ち解けたいのだ。
メルと楽しく、話し合っている時のこと。
「ジュリアもお話しよう!」
「今忙しいので、また後日に。」
このようにあっさり断られてしまう。
庭でキャッチボールをしている時も、
「行くわよ〜。それぇー!」
母さんの一撃は凄まじい。
うごっ、、
「大丈夫ですか!?坊ちゃん!」
メルはすぐに心配してくれる。ジュリアは遠くの方の木陰でティータイム。
だから、話してもらえない理由を問い詰めようと思う!
父さんが帰ってきた次の日、いつものようにレイヴンに授業をつけてもらっている。
父さんが帰ってきたので、今は語学の勉強中。
授業が終わり、父さんの部屋に行き少し話をした後、すぐにジュリアのがいる場所へと向かった。
「ジュリア!ちょっといいかな?」
ジュリアは持っていた掃除用具を置き、俺を睨みつけるような感じで見てきた。
「なにかご用でしょうか?」
軽くメンチでも切ってんのかなと思う口調だ。
「ジュリアはどうして俺と話してくれないのかなって気になってたんだ。理由だけでも教えてくれるかい?」
ジュリアは少しため息を着いた後、いきなり口調を変えて話してきた。
「私はね、あなたみたいな人間が大嫌いなの。」
「え、、?」
「違う種族だから、奴隷だからといい軽蔑してくる。私はずっと耐えてきた。」
ジュリアはかなり怒っている。
しかし、少しわかるかもしれない。
前世の俺もこんな感じだった。
周りと変わっているところを馬鹿にされ、仲間外れにされた。
いじめにもよくあっていたが学校は何もしてくれない。
親は俺のことを気づきもしなかった。
あの時、耐えていた俺はこんな風に怒りの感情だったのだろう。
誰もわかってくれない、そんな気持ちに。
「でも誰もジュリアを奴隷とは思わない。父さんも母さんも家族の一員と思ってるんだ。別に俺はジュリアのことを悪くは思わない。」
「アレク様の言いたいことはわかったわ。でも、、手遅れよ。明日、仲間の悪魔を呼びここを襲撃する。」
俺は驚いた。
まさか、ここまで人間を恨んでいたとは。
「軽蔑されていたからと言って、命を奪っていいとは限らない!」
「命までは取りません。ただ、あなたか奥様を攫い人質にします。そして奴隷の解放を約束させます。」
確か奴隷の契約は、主人に解除してもらうか、その主人が死ぬかで破棄される。
そしてこの家でこれを知っているのは俺だけ。
レイヴン先生は買い物に出かけている。
父さんは、、多分戦えない。
どうせ、誰かに話したらジュリアは捕らえられ状況はさらに悪化する。
俺しかいない。これだけは確実だ。
「俺は、あなたの計画を阻止する。」
ここでやるしかない。やらなきゃいけない。
「わかりました。あなたを死なない程度に痛めつけます。」
ここは裏庭。
周りからは木で見えないようになっている。
ここで話したのは間違いだった。
でも、ジュリアの能力をコピーすれば勝機はある!
俺は剣を抜き、加速能力で距離をつめる。
「はぁっ!」
しかし、ひらりとかわされる。
そしてジュリアはついに能力を見せた。
水の瓶を取り出し、中の水を変形させ剣に作り替えた。
「私の能力は、液体操作。液体であれば固めて武器にすることもできる。」
そしてジュリアが突撃してくる。
俺は剣で受け止め、風魔法の[メガウインド]を打ち距離を取る。
しかしすかさず距離をつめられ剣にかすってしまった。
「くっ!!」
痛っ!
かなりの出血だ。
本来なら治療魔法を使うが今は使わないことにした。
そしてジュリアは翼を背中から出し、空から自分の血を大量に落とした。
吸血鬼には再生能力があるから、多少の傷は気にしないらしい。
ずるくないか?そう考えているうちに刃物の雨が降ってくる。
俺はメガファイヤーボールである程度蒸発させるが、爆炎に紛れての攻撃には対応できなかった。
俺は全身傷だらけになる。
「あなた、本当に大丈夫?殺すつもりはなかったけど、死ぬわよ?」
「へっ、全然気かないよ!もっとちゃんと攻撃してもらわなくちゃね!」
煽って相手を誘い出すんだ。
「そう、ならそうしてあげるわ!!」
ジュリアが急降下し、自分の血で短剣を作り投げてくる。
この時を待っていた!俺はメガウォーターとライトニングを放つ。
そして血のナイフに電気が通り、ジュリアは感電する。
「くっっ!な、なにをしたの!?」
「少し血の成分を思い出してね。血には水を浴びると電気を流す物質に変わるんだ。それを利用したのさ。」
最後の一撃を加えようとした。
すると俺の剣に何かが絡みつき遠くに飛ばされてしまった。
残っていた血を使ってロープを作っていたのだ。
「これで君の武器はない!拳で倒す気?君の魔法では私の自己回復には上回らないわよ!」
「いや、武器は作ればいいんだよ。」
治さなかった傷口から大量の血が出てくる。
俺はそれを固め、大剣を作った。
「まさか!それは私の能力!あなたも同じ能力を!?」
「いや、君の能力を複製したんだ。いくら再生能力があってもこれで斬られたら終わりじゃない?」
俺は剣を振り下ろす。
こうして、俺の初めての戦いは幕を閉じた。
ジュリア 液体操作 液体であればなんでも形を変形できる。強度は脆いが、水滴などを刃物に変えることできるためかなり強い。発動条件は対象となる液体に触れること。