第四十九話 救いの手
心拍数が上がり、剣を抜く手が震えている。
圧倒的な実力の差が見えていると言うのに敵は俺を殺そうとしている事実に俺は恐怖している。
「、、、っ、くそ!お前らなんで俺の場所を知ってるんだよ!?」
ルークは不思議そうな顔をした。
「なにを言っている。わざと俺たちの目につくようなフードを被っていたではないか。」
なに?意味がわからない。いや、今はそんなことはどうでも良い。
震えをなんとか止めて剣を抜く。そこにルークは攻撃を繰り出してくる。
「西欧流 交叉する闘牛!!」
猛牛のような勢いで交差した斬撃が俺が倒れていた店を襲う。
レナは俺が吹き飛ばされてから立ち尽くしていたがようやく状況を理解したのかルーク目掛けて攻撃をする。
「あんた、アレクから離れなさいよッ!」
『空間操作』でテレポートし、背後から鎌を振り下ろす。
が瞬きもしない間にルークは彼女の背後を取っていた。
「え、、?」
「どけ、貴様には用がない。」
思い切りレナの腹部分を蹴り飛ばす。
「うっ、、が、、」
向こうの通りの建物を貫通して倒れる。
なんとかしてスキさえ作れば、、
ルークがまたこちらを向いて歩み寄ってくるが、その瞬間三本の矢が飛んできた。
アイヴィが屋根に登ってルークを狙撃する。
よし、今のスキに『透明化』と『加速』と『筋力増強』を順番に使えば懐に潜り込める!
だが、ルークは片手で水聖流を使い弓矢を受け流し、もう片方の手で俺に攻撃を受けた。
「おい、お前たちは向こうの弓使いを倒してこい。」
ギリギリと剣を押し合っていたが、両者とも一度離れる。
「いいのかよ、一対一だと負けちまうかもしれないぜ?」
「お前は私1人で充分だ。」
「そうかよっ!」
居合の四式 虎突!
ルーク目掛けて剣を突き出す。
「水聖流 ウェーブ・カーテン」
俺の攻撃は相手の技に当たった瞬間、速度が落ち波に揺られているような感覚になった。
「西欧流 征鳥の斬撃」
視界が真っ赤になる。あれ、、?俺、斬られたのか?
「こんなものか。向こうの弓使いも逃げているだけでもう邪魔はできんな。」
剣を握る力はない。回復魔法をかけ、立ちあがろうとするが胸からドバドバと出てくる血をなかなか止められない。
残りの手は神業さが残っていない。
だが二つの神業は通用しない気がする。
ロック・カタストロフは意味がない。ランド・クエイクも避けられるだろう。
ならば残り一つ。俺の家と故郷の街を消したであろうあの神業。
やる、、やってやる。今ここで大災害を起こせば混乱に乗じて逃げられる。
グランド級の魔法であり技である。
最後の力を振り絞って魔力を貯める。
「なにをするつもりだ貴様?」
しかし、手を振りかざした瞬間、身体に激痛が走る。
「ぐぁぁぁぁあ!!」
全身が痺れるような痛さが収まる気配を見せない。
まさか、、この技は今の自分の実力では使えないということなのか?
「何をするかと思ったが、、最後の望みもないようだな。」
俺はもう指一本すら動かせない。魔力が無くなり、身体も血が出て何もできない。
ルークは俺を絶対に殺す。
かすかに開いた目に映ったのは這いずりながら助けようとしてくれているレナ。
「アレク、、、逃げて、。」
ごめん、、俺はここで終わるみたいだ。
剣が振り下ろされる。俺は目を閉じ、過去のことを思い出す。
また中途半端な人生だったな、、
「待たせたな、アレク。」
上から鎧を着た男が降ってくる。
少しだけ目を開けるとそこにいたのはポラリス王国の騎士団長 ジェイドだった。
「お前たち、アレクとレナ、そして仲間一行を安全な場所に避難させるんだ。絶対に遂行しろ!」
「「「「はっ!」」」
攻撃を避けていたルークが立ち上がる。
「ジェイド殿、、これは我ら聖魔王国に対しての裏切りと受け取ってよいだろうか?」
「まぁ、あなた方に取っての追い風が逆風に変わっただけだと思ってくれ。」
ジェイドは、軽く腕を鳴らしルークに拳を向ける。
「さぁ、始めるとしよう。」
二つの正義が、今ぶつかる、、。
ルーク ??? 西欧流と水聖流の二つの剣技を操ることができる。二刀流の剣士で剣士の上位の称号である『剣王』を持っている。