第四十五話 狩人からの依頼
ドサッと切り株の上に採れたものを入れたカゴを置く。
「ねぇ、貴方達今日はもう直ぐ夜だしウチで食べて行かない?」
ぐぅ〜とウェルアが堂々と腹を鳴らしよだれを垂らしながら頷く。
アイヴィの家は中心街から少し離れたツリーハウスの住宅街。辺りの家に所々明かりが灯っていて幻想的だ。
アイヴィが獲った獣肉と俺たちの山菜を加え、売っている香辛料を入れた『カリェー』という料理が振る舞われた。
パクっと一口。うん、◯ャワカレーだ。懐かしい味がして涙が出そう。ウェルアはバクバクと食べ、おかわりもする。
食後は子供達を寝かしつけて、少し冒険の話をして別れたのだった。
ふぁ〜あ。
眠たい。昨日は夜遅くに宿に帰ったのでレナとデュークは心配していた。
2人はすでに依頼の方へと向かい、ウェルアはムニャムニャと眠りながら布団をぐしゃぐしゃにしている。
起こすわけにもいかないので黙って一階に降り、まだ霧の立ち込めている朝の石畳の道を進んでいた。
早く金を稼いで家族を探さないと、、とぶつぶつ呟いていると走ってきた女の子が俺とぶつかってしまった。
「あ、すまんお嬢ちゃん。怪我はないか?」
少女に手を差し伸べるが、何事もなかったかのようにすくっと立ち上がりまた走っていった。すると、後ろの方から薬屋の店主が走ってきた。
「その盗人を誰か捕まえてくれぇー!」
盗人?とりあえず『加速』と『筋力増強』を使い、女の子をガシッと捕まえる。抵抗もせずにただ自分の持っているものを強く抱えていた。
「ありがとうよ兄ちゃん、さ、早く警備隊に引き渡して、、」
「この子、少し俺が預かっていいか?ほら、盗んだものは返すから。」
渋々店主は受け入れ、去っていった。俺はウェルアを呼び、近くの喫茶店のような場所で話を聞くことにした。
「どうして薬を盗んだの?」
「、、母さんは病弱なんだ。なのに、治療士は『金が払えないなら帰れ』って言ってきて誰も助けてくれない。このままだと母さんは死んで、私は孤児になっちゃう。」
ウェルアは何も言わずに彼女の涙を拭う。ウェルアの両親も病で亡くなったから気持ちがわかるのだろう。当時のあの店はどう見ても治療士に金が払える感じではなかった。
ウェルアはこちらに視線を向けてきて、俺は無言で理解する。
「わかった!俺たちがその薬草を探してやるよ!」
「ほ、、ほんとに!?」
「あぁ。早速薬屋の店主に聞きに、、は無理か。あ、アイヴィならそういう薬草がある場所に詳しいんじゃないか?」
「おお〜、名案じゃない!たまには頭が働くんだねアレク!」無茶苦茶馬鹿された気分だが今は我慢しよう。「今は」な!
アイヴィの家に行き、彼女はある魔獣の棲家に薬草があると教えてくれた。そして事情を説明するとアイヴィも付いてきてくれるようだ。
魔獣の正体は「ワイルド・ジャガー」。名前の割にブサイクなマスター級の魔獣だった。まぁ、あっさり倒したので薬草を回収し急いでその子の家に戻った。
母親はかなり弱っていたが、治癒魔法と薬のおかげでなんとか回復したようだ。
女の子はすぐさま起き上がった母親に抱きついた。
2人は泣きながら抱きしめ合っている。
俺たちは手を振り、お別れをしてツリーケーブルに乗る。するとアイヴィが突然話し出した。
「私もね、昔捨子だったの。そして、『森の孤児院』で保護された。初めは嬉しかったんだけど、そこでの恐ろしい実験をのことを知って逃げ出した、、」
彼女は微かに震えながらも俺とウェルアの手を取った。
「貴方達冒険者に私から依頼するわ。子供達が囚われている『森の孤児院』を壊滅に手伝って欲しい。依頼料はもちろん出すから。」
俺達は顔を見合わせてふふっと笑った。
「依頼料はいらないわよ。私たちは友人なんだから、助け合うのは当たり前。どのみち、見捨てる訳にも行かないし協力させてもらうわ!」
アイヴィは俺とウェルアをギュッと抱きしめた。
彼女は初めて笑顔を見せた。