第四十話 思いを込めた拳
ポラリス王国城下町 中央広場
「くそ、あいつの装甲が硬すぎて壊せねぇ。」
「どうする?アレク。」
レナの空間を削る攻撃も効かず、俺の居合流も効かない。まさに無敵といっても過言ではない。
「『神業』ならあいつの装甲も破壊そうだけど、それをしたらあんたの身体が、、。」
そうだ。あの技は人間が本来撃てるものではない。
だが、勝つためには出し惜しみをしている暇はないのだ。
迷っているとエドワードは、城壁の大砲と接続し俺たちめがけて撃ってきた。考え事をしていた俺は反応が遅れる。
そこに飛んできて俺を庇ったのはジェイドだった。
「ぐっ、、アレク、、しっかりしろ。装甲の金属は衝撃に弱いはずだ、、」
しかし、ゴーレムへの攻撃を防ぐように城の中ににあった鎧にも接続され、俺たちの前に立ちはだかった。
すると、ジェイドは何か気付いたのか鎧の兵の方へと向かっていった。
「おい!なにやって、、」
「よそ見をしている場合か!?」
デュークが突っ込んできて間一髪のところで助かった。
装甲を破壊する方法はわかる。だが、あのゴーレムには隙がない。
「はっ、、わかったか!アレク・レオナード!!これが正義の力だ。この力を見れば、誰も悪の道へと進まない。戦争にも勝利できる!これがあれば皆が望んだ世界を作り上げられるじゃないか!!」
違う。それは正義じゃない。言葉ではうまく表せないが、それを誰も望んでいないのは確かだ。
恐怖で支配することは正しいことなわけがない。
すると、避難していた少年が俺にあるものを渡して来た。
「お兄さん、これを使って!あの時のお礼だよ!」
魔力を回復するポーション?かなり貴重なものだ。だが、これさえあればいける!
「やるぞ!少しの間だけ時間を作ってくれ!」
「ええ!」「わかった」「ほんと無茶ばっか言うんだから!」
俺は、鎧兵の中を突っ切る。
「シールドアタック!」「旋風のアリア!」「オブリヴィオン・スラッシュ!!」
みんなのおかげで敵への道は開けた。
上からゴーレムの拳が振るわれる。
「頑張れよ、俺!岩盤の大災害!!」
2つの拳がぶつかり合う。そしてゴーレムの硬い装甲にヒビが入り、バラバラと崩れていく。
いってぇ、、左手が弾けてる、、。でも、あとは攻撃を繰り出せば、、
「アレク!横!」
「え?」
もう片方のゴーレムの拳が俺をぶっ飛ばした。
「おぐっ、、」
飛んでいく途中、ジェイドが俺をキャッチした。
「アレク!大丈夫か!?」
「何とかな、、ん?それは?」
「これが接続された鎧と一緒にここに運ばれていた。」
ボロボロの鎧だ。だが、かなり頑丈そうに見える。
「最後に手伝ってもらいたい。あの装甲の中には操縦室がある。そこにはまだ硬い装甲がある。それを突破するにはこの鎧を使えばいける。」
「お、いいね。ちょうど腕を守るのが欲しかったんだ。」
そしてさっきもらったポーションを飲み、無くなっていた魔力を回復させた。
「「いくぜ!!」
2人で急降下する。
ゴーレムは少しずつ立ちあがろうとする。
「な、なんだあれは??まさか、、アレク!ジェイド!」
拳の鎧を右腕につけ、操縦室目掛けて突っ込む。
「ロック、、」「ファング、、」
エドワードは咄嗟に腕で操縦室を守る。
「カタストロフ!!」「フィスト!」
2つの合わさった鉄の拳が全てを貫通し、エドワードの顔面をぶん殴った。
激しい砂埃が起こり、辺りは騒然とする。
そして、俺とジェイドは手を上に上げガッツポーズをした。
二つの腕部分の鎧は、あの日エドワードとジェイドの2人で誓い合った時のものだった。
偽られた正義は終わり、昔のような本当の正義を取り戻したのだった。
狼の鉄拳 貫通に特化した技。威力は絶大だが、腕に負荷がかかる。




