第三十八話 鎧の約束
辺りは指名手配の紙で溢れている。警備隊や兵は巡回をしながら目を光らせている。
アレクとジェイドさんはまだ回復していないので私とデュークさんで頼まれたものを買いにきました。
一応軽い変装をしているのでバレることはないですが気を引き締めないといけない、、あー緊張するー。
「(デュークさん、、ちゃんと着いてきて、、)うぇっ!?」
振り返るとデュークさんは警備隊に道を聞いている。
「すまん、この店に行きたいのだがどこか知っているだろうか?」
「待て、、事件が起こっているというのに呑気だな。何の用でこの店に行きたいんだ?」
ま、まずい。早く止めないと!
「お、オジイサン。地図ガサカサマダヨ。オウチにカエロウ。」
なんとかやり過ごした。その後は裏道を使いようやくお目当ての店の中に入ることができた。
「あーら、ようこそ!骨董品店、馬の星へ!」
馬の星、、ダサい!!
「良い名前だな主人殿。」
デュークさんの感性には亀裂が入っているようだ。
「あーら、ありがとう。お二人様、何をお求めで?」
「火薬ってありますか?あと安い防具と回復のポーション、速度上昇のポーションを、、」
すると、店主は何かを察したのか周りを見て私たちに品物を押し付けた。
「(早く持っていきなさい。あとこの石も。)」
「(え、、でもお代がまだ、、)」
「(あんたら2人とも外から来て騒動を起こした冒険者だろう?この国を変えるために私たちも協力するよ!)」
小声で囁きながら、安全に帰れる抜け道を教えてくれた。
私とデュークさんは何度もお辞儀をしてお店を出た。
これで準備は整った。あの店主さんの気持ちをこの国の人々の思いを無駄にしてはいけない。
宿にて
すー、すー。
アレクは腕が治ってきて、今はぐっすり眠っている。
看病をしてくれたレナという女の子も今はうたた寝をしているようだ。
俺はその間、昔のことを思い出していた。
20年前、、
「兄さん!兄さん!俺、兄さんや国民を支えられる騎士になるよ!」
「えぇ?お前みたいなハズレ能力の奴が俺を守れるのか?」
あの日は、親には内緒で兄の訓練場を訪れた時だった。兄は昔から魔力が多く、能力も強い。さらに王の素質も持ち合わせていた為、のちに生まれた俺は皆から見て霞んで見えていた。
兄は俺を馬鹿にしてはいたものの、決して見捨てはしなかった。俺の正義を否定せず、頑張れと励ましてくれた。
俺は「じゃあ」といい、近くにあった大人用の腕部分の鎧を2つ持ってきた。
「ここでお互い、この国を支えていくことを誓おうよ!」
「そんな、子供らしいことを、、。まぁ、いいけど。」
俺は満面の笑みで見つめる。兄は少し照れくさそうに目を逸らしている。
「俺はこの国を平和な国にする!」「僕はこの国を守れる存在になる!」
コツンっ
あの約束は必ず果たす、、絶対に、、
「なぁ、ジェイド。」
ふと我に帰り、アレクの呼びかけに応じた。
「なんだ?」
「兄のこと、悩んでるんだろ?」
「まぁな。」
「俺もさ、兄貴がいて、すげー仲良かったんだよ。でも、突然いなくなって、気づいたら死んでて。周りからは死んで当然みたいな反応されてさ。何考えれば良いかわからなかった。今のお前の兄貴とは違うけれど、昔の頃なら俺の兄貴と同じような性格をしてたんじゃないか?」
「、、、お前の兄が間違った道を歩んでいたら、お前はどうする?」
「そうなった時は、、。」
その答えを聞いて俺はふふっと笑ってしまった。
決行は明日、俺と兄の人生を変える時が来た。