第三十六話 倒れない意味
この男は、間違いなく危険だ。
これまで戦ってきた人は、レイヴン先生を抜いて自分の実力を力に変えている人ばかりだった。
でも、ジェイドという人間は素が強い。俺はこの男に勝てるのかと心配になるくらいだ。
沈黙を破ったのはウェルアだった。
「早くそこを退いてください!出ないと貴方も倒しますよ!」
「やってみろ、、」
すると、ジェイドは俺たちの前から姿を消した。
次の瞬間、デュークの目の前に現れ、肘で突き、蹴り飛ばした。
「デューク!!」
今のは、「加速」の能力だ。だが、通常の速度ではない。
「くそっ、、」
さらに、切り掛かってみるが全身が鎧なので切ることすらできない。全て弾かれてしまう。
「これでもくらいなさい!」
レナの「空間操作」でジェイドの鎧を捩じ切って壊そうとする。
しかし、それもすかさず回避しレナに近づく。
ウェルアは煙幕の魔法を貼ってなんとか避けることができたが、明らかにこいつは強い。
「レナ、相手に攻撃が効かなくていい。このまま向こうの家までジェイドを下がらせてくれ。」
レナは無言で頷き、俺に合わせながら連撃を繰り出す。
「お前達の剣が俺に効かないのは知っているだろう?無駄な足掻きはやめておけ!」
俺とレナの武器は弾かれ、俺には蹴りを、レナには拳を繰り出し吹き飛ばした。
「「ぐっ、、」」
でも、誘導はできた。
「今だ!デューク!」
瓦礫の山からデュークが出てきて、錬金で作り出したハンマーでジェイドの鎧を打ち砕いた。
「がはっ、、なんだと!?」
「お前が初めにぶっ飛ばした時から埋まってもらってたんだよ。これでご自慢の鎧ももう無くなったな。」
倒すような気配を見せているものの、本当の目的は逃げることにある。
今はウェルアの魔法で警備隊や兵を遠ざけているが、集まってくるのも時間の問題だ。
「アレク!こっちに抜け道があるわ!」
「よし、みんな!逃げ、、。」
すると、また鎧の騎士が目の前に移動してきた。
「な、、、お前さっきやられたはずじゃ、、」
「俺の能力を言い忘れていた。俺の能力は「鎧着脱」。能力範囲内ならどこからでも鎧を飛ばしてこさせ、自動で着脱させてくれる能力だ。」
ただの便利能力の奴がこんなに強いわけねぇだろ!
「俺の能力は弱い。魔法も得意ではない。だが、俺は自分の能力に過信するのではなく、味方や誰でも習得できることを少しずつ磨いた。だから、俺は倒れない。部下がいるから、力を持たない民もいるから、俺は苦しくても、何度でも立ち上がる!!」
こいつを倒すには、、あの技を使うしかないみたいだ。
ギレイア・ジェイド・ジンジャー 「鎧着脱」
シンプルな能力だが、硬い鎧から繰り出される攻撃と剣や弓すら通さない守り、二つの強さを兼ね備えている。魔法の応用や加速能力を使い、アレク達を追い詰める。