第三十二話 涙の旅立ち
100年前にあった正規の洞窟の入り口に多くの人々が走る。
そして人々はさらに大きな喜びを分かち合った。
そこに、異変に気づいたポラリス軍がやって来た。
「な、なんだお前達は!地下の住民だな?どうやって抜けたのかは知らんが元の場所へ戻れ!」
しかし、みんなは大反発。
「うるせぇ!俺たちは自由になったんだ!この国から出ていけ!」
ずっと黙っていた地上の人々も息を合わせ「そうだ!そうだ!」と責め立てる。
人々の威勢に負け、ポラリス軍は足早に退散していった。
「ほら、アレク見える?」
レナとウェルアが俺に肩を貸しながら地上まで運んでくれた。
「あぁ、やっぱり、明るいのが1番だ、、」
その夜、俺たちは勝利を祝う宴を開催した。豪華な料理は地上の人々が助けられなかったお詫びとしてたくさん用意してくれた。
ローガンも誘おうとしたが彼は「次会う時は、敵じゃないといいな。」と言い残しどこかに消えてしまった。
宴が開かれると数ヶ月ぶりのまともな食事に涙を流す住民もいた。
俺も皆んなと肩を組み合い笑い、楽しんだ。でも、心の中には深い悲しみが残っている。
今回の勝利にはあまりにも犠牲が多すぎた、、
次の日、俺とウェルアは旅に出る身支度をしていた。
ポラリス軍を追い返したと言うことは、次にやってくるのは本格的に武装をした奴らだ。
だから、次の目標は地下に人々が閉じ込められた原因を作ったポラリス王国の元凶を倒す。
これに成功すれば、今度こそゴルデア王国は安全になる。
俺がモグラの宿の外で待っているとデュークが居た。
新しく買おうと思っていたがデュークは俺に剣を一本渡してくれた。
「これは?」
「この剣はオロチの身体が消える際、尻尾の部分から出て来たものだ。」
神話通りだ。この剣の正式名称は確か「天叢雲剣」だ。
「よし、今日からこいつを使うよ。」
「ああ、それと。俺もお前達の旅についていっていいか?俺はアレクの戦いを見て誰かを支えることが自分には向いていると思う。旅の目的は俺の物作りの実力を高めつつお前達の援護をすることだ。」
「俺は大歓迎だぜ。あとは、、レナだけだな。」
レナはまだ自分が俺たちと一緒に行くべきか迷っている。
キルスがいなくなった今、カレラさんを守れるのはレナだけになる。これまで育ててくれた人を置いて出ていくのはどうだろうかと考えているのだ。
しばらく待っているとカレラさんとレナが出て来た。
「アレク、私もあなた達の旅に同行することにしたわ。アレクが言うには神って奴らが世界を脅かそうとしているんでしょ?だったら待っていても仕方がない。それに、、あんたは私がいないと素早く移動することすらできないじゃない。」
「はいはい、そうだな。仲間が増えて嬉しいよ。」
カレラさんは俺に目配りをして来た。
大丈夫、キルスとも約束はした。レナも守る、絶対に。
地上に出て地下を出発しようとしたが、いつの間にか地下のみんなに見送りに来てもらっていた。
そして町長から手紙を渡された。
差出人はジースだった。
よう。この手紙をお前らが読んでいるってことは、、まぁ察してくれ。かといってアレクを責めたりはしない。お前はまだ10という歳で先陣を切って頑張ってくれた。大したもんだぜ。俺には娘がいるがアレクやレナを見ているとつい自分の子供に見えちまった。短い間だったがお前達と共に行動できて楽しかった。
最後になるが、お前たちはこれから先もたくさんの経験をするはずだ。悲しいこともある。嬉しいこともある。でもそれらひっくるめて人生だ。その人生を大切にするんだぞ。お前達の旅が無事に終わることを心から願っている。 ジース
俺とレナは大粒の涙を流していた。涙で濡れた紙はくしゃくしゃになっている。
そして決戦前夜の汚かったジースの字は手紙の最後は綺麗でまっすぐな字へと変わっていた、、




