第三十一話 長き戦いの終わり
砂埃が舞い、あたりは視界が悪くなっていた。
俺たちは崖に作られた小さな洞穴に入り、新しい打開策を考えている。
「正直、あいつの倒し方は俺にはわからない。とりあえず、下に降りて様子を、、」
「待って!」
俺の手を掴んできたのはウェルアだった。
「え、どうしたんだ?」
「私が見るに下には大量の毒の霧が立ち込めてる。今降りるのは危険よ。」
そういえば、神話にもオロチは毒を吐いたとされていたな。すっかり忘れていた。
「では、もう少し様子を見るしかないな。」
デュークが言い終えた瞬間、オロチが俺たちのいる洞穴に突っ込んできた。
「ぐっ、、」「きゃあ!」「む、、」
くそ、オロチは熱感知できるんだった。
蛇は、視野がとにかく狭い。後ろから攻撃をすればいけるはず、、だが今度はそんなことを許してくれるわけがない。
そういえばあの額の位置にある宝石、、あれこそがオロチな弱点じゃないのか?
剣もあそこに刺さっていた、、ならあそこが1番効果があるのだろう。
試してみるしかない。
「ローガン、俺たちが合図をしたらあいつの額ぐらいに銃弾を打ち込んでくれないか?」
「一応できるけどあいつの鱗は硬いぜ?俺の銃でも撃ち抜けない可能性だってある。」
「いや、それでいい。まずは感覚器官を使えなくする。確か、ピット器官と呼ばれる熱感知をする場所が目と鼻の間にあるはずだ。だが、鱗を突破するには、、」
するとウェルアが声をあげた。
「この討伐をやろうと言い出したのは私。だから少しは任せてちょうだい。」
なにか考えがあるんだな。
「よし、ここまで来たら色々試すしかない!ダメでもいい、最後まで諦めずにやるぞ!」
「「「おう!」」」
ローガンは高所に登って狙撃の機会を待ってもらう。ウェルアはとっておきの魔法とやらを準備する。
デュークには残りの魔力でクロスボウをあるものを撃ってもらうために作ってもらっている。
俺とレナはウェルアとデュークの2人への気を逸らすために、動き回っていた。
オロチは必死に大きい火球を放ってくる。
すると必死すぎて気づかなかったのかオロチの首が動きについていけず絡まってしまっている。
「よし、今だ!」
デュークが逃げる時用に残していた撹乱剤をこめた矢をオロチの全体に放つ。
「アァァ?グワァ?」
よし、混乱してるな。
その後、ウェルアが崖の上から溜め続けていた魔法を撃つ。
「いけっ!!!」
するとオロチの顔が四つとも爆発して額を守っていた鱗が剥がれ落ちピット器官の効果が消えた。
ガンッ!ガンッ!
そこにローガンの弾丸が唸るように飛んできて一本の首の額を撃ち抜ぬいた。
奴の熱感知が消えている間に残り三本を落としたい。
そして俺たちも方向を変え、オロチの額を刺すように狙った。
しかし、また鱗が紫色に光出し三本の首が集まった。
まずい!あの攻撃が来る!
ウェルアは魔力切れ、デュークもあのクロスボウと矢だけで限界だったようだ。
このままだと、、巻き込まれる、、
するとまた撹乱剤がオロチの首に直撃した。
「ヌォォォォッッ!」
オロチはブレスを溜まるのを中断し混乱している。
デュークのいた場所を見ると街のみんながいた。
「戦えないけど手助けぐらいはできるぞ!」「この設計図を見れば能力がないワシらでも作ることはできるわい!」「俺たちだって地上に出たい!君たちだけに背負わすわけにはいかないよ!」
多くの人々が危険を顧みず助けに来てくれた、、もう俺も魔力が少ない。
混乱して首が三本ともまとまっている今がチャンスだ。
「レナ、このまま奴の首に突っ込んでくれ。」
レナは驚く表情をしている。
「で、でもどうやってあいつの額に、、」
「大丈夫、今の俺は自信しかないんだ。」
その言葉にプッと笑い、何も言わずにオロチ首に向かって移動した。
するとオロチは無理やりブレスを吐こうとする。
レナは俺を信じている。なら俺も大丈夫だ。
俺は目を瞑り剣を鞘に納める。
居合流は一撃一撃が重い。硬い三本の首を切るには難易度が高い「居合の一式」を使うしかない。
戦いの前日、俺はジースに技を教えてもらっていた。
「そういえば、ジースは何式まで居合流を使えるんですか?」
ジースはポリポリと顔を掻きながら教えてくれる。
「二式までだよ。一式は難しすぎて使えねぇ。だが、、そうだな。お前にはどんな技かだけ教えておこう。お前の実力は高いと思ってるからな。」
「ジース。あの技、使わせてもらうよ、、、」
俺は呼吸を整え、オロチのブレスに突っ込む。
「居合の一式 奥義」
「臥龍一閃」
一筋の赤い閃光が走る。
次の瞬間、オロチのブレスを断ち切り、首も切り落としていた。
そして斬撃はさらに飛んでいき、後ろの岩に激突した。
すると、そこから光が見えてくる。
オロチの身体はボロボロと崩れていき、倒れた。
「や、やりやがった!」
ローガンはその場に倒れ込む。
そしてウェルアはデュークの肩にのしかかった。
「勝った、、勝ったんだ!やったーー!!」
「うむ、、」
その瞬間大きな歓声が上がった。
俺はレナに支えてもらいながら朽ち果てた剣を上に上げる。
俺たちは100年前の幻獣、オロチを多くの人と協力し打ち勝った。