第三十話 絶望の向こう側
う、、痛い。目が乾燥している。体を少し動かしてみるが左腕と腰のあたりに激痛が走る。
確かレナと一緒に上空にいた時、オロチの攻撃で地上が燃やされて、、その爆風で落ちていく時に誰かが、、、
「、、ク!、、、ア、ク!、アレク!しっかりして!」
「ん、、レナか、、?」
「そうよ!何とか生きてるみたいね、、」
「なにが、、起こったんだ?」
俺は体を起こし、辺りを見る。
黒い煙が立つ中、奥に紫色の炎が見える。
パチパチと炎の焼ける音が聞こえ、奥にはオロチがこちらを睨んでいた。
「あれ?みんなは、、?」
レナは俯いている。
「ジース!ウェルア!デューク!!」
誰も返事がない、、みんなどこに、、?
すると黒い煙が晴れ、地上が姿を現す。
そこには焼けこげた人の死体が無数にあった。
みんな、 逃げきれなかったんだ、、
今思えば、あの爆風を受けた時に助けてくれたのは、ジースだった。
「あ、あぁ、、、うわぁぁぁ!!!」
「お、落ち着きなさいよ!」
すると高所から人が降りてくる音が聞こえる。
デュークとウェルア、そして、おととい作戦会議にいた鉄砲をまた男、ローガン。
「大丈夫?アレクはどうしちゃったの?」
ウェルアは治癒魔法をかけながらレナに問いかける。
「知らないわよ、、アレクが急に泣き叫び始めただけ、、、」
「おい!しっかりしろ!君がいないと全体の行動が、、」
デュークも普段は無口だが、今はかなり焦っている。
思い出したくもない、記憶が蘇る。
もう、、過去のことは思い出す気はなかったのに、、
俺は、いろんな計画を立てては失敗をする。
抜けていたり、甘かったり。
初めて就職した会社で何か大きいことを成し遂げようと調子に乗ってしまった俺はそこでも自分の甘さで失敗をしてしまった。人間は誰しも失敗が嫌いだ。
「失敗は成功のもと」なんて言葉もあるが今思うとそんなことは生優しい。
社会に出ると一度失敗すれば、負の連鎖のように続いていく。怒鳴られる毎日が続けば自然と周りの「デキる」人間は「デキない」人間を避けていく。
こうして俺は仕事がうまくいかず引きこもりになってしまった。
悪いのは自分の甘さだ。転生してそんなことも忘れてしまっていた。自分には自信なんていう素晴らしいものは存在しない。あるのは、失敗できないと言う不安、恐怖。
今になってこの気持ちを思い出してしまった。
また、、みんなから見放されてしまう。
ようやく異世界でやり直そうと思たのに、、
どうしよう、不安だ、なにができる、俺の計画が甘いせいでみんなが、倒せるわけがない、諦めたい、、、いっそこのまま、、
すると雷のようなやかましい声で我に帰った。
「なにぼさっとしてんのよ!早くこっちに来なさい!」
レナが俺の首を引っ張り、オロチの噛みつき攻撃をギリギリで避ける。
なんで、、誰も逃げてないんだ?俺なんか置いていけばいいのに。
すると黙っていたローガンが俺の頬を引っ叩いた。
「いいか、お前になにがあったのかは知らないが自分1人で抱え込むな。あの落とした首はみんなの成果だろう。お前はその成果を棒に振るのか?大丈夫だ、お前を誰も責めない。失敗したっていい、たが、最後まで諦めるな!」
、、、、思い出すんだ、レイヴン先生との辛い修行を。その時、俺の魔法が成功しなくても責めてくることはなく改善点を優しく教えてくれた。親父も剣でなかなか技を撃てなくても一緒に笑ってくれた。
特に、、レナとメルは必ず生きて帰って来てと言った。
ここは前の世界じゃない。
帰るべき場所がある、会うべき人がいる、成し遂げないといけない目標がある。
まだやれる。
亡くなっていった人々が俺を信じてくれていたように、俺も自分を信じる。
「はぁ、、はぁ、、、もう、大丈夫。ありがとう。」
俺の体は先程よりも軽くなったように感じた。
「反撃開始だ。オロチは俺たちが絶対に倒す!」