第二十話 1人目の仲間
昼間、俺はニアさんに呼ばれて冒険者ギルドに来ていた。
「アレクさんにお願いがあるんですニャ。」
小声で言われたことから大切な話だとわかり、俺は小さく頷いた。
「沼のカエル亭って知ってますよね?あそこの店主の方がどうしているのか知りたいんですニャ。」
「あの人と知り合いなのか?」
「私がまだ奴隷だった頃もよく話してくださったニャ。だから最近来ないことがおかしく思えちゃったんですニャ。」
なるほど、目がキラキラしてることから助けてあげてねと言っているのだろう。
「君からのクエストっていうならやってもいいよ。」
「りょーかいしましたニャ!依頼さてもらいますニャ。」
そして沼のカエル亭についた俺は、辺りを警戒しつつ中に入る。
店内はウェルアがいる様子はなく、静かだ。
そして何者かによって荒らされた形跡がある。
少しの間、店内を確認していると外から2人の男が入ってきた。
「さて、あの女がいっていた金はどこっすかね。」
「さぁな。にしてもあの女も強情な奴だ。親の形見だとか言ってやがったが自分の命が危ねぇってなんで気づかないのかねぇ、、」
俺はその会話を聞いて、一瞬で2人を無力化し制圧した。
俺は話を聞いて、落ち着きながらも怒っている。
「おい、さっさと答えろ。ウェルアはどこにいる?」
「てめぇなんかに、、」
「命は取らなくても、腕や足は取る覚悟はできてるぞ、、」
そう静かに脅すと、子分のほうが口を開いた。
「は、話すよ!ここの町の近くにある森に隠れ家があるんだ!頼む!俺を傷つけないでくれ!」
おい!ばかっ、、ともう片方の男は呆れている。
話を聞き終えた後、全速力で近くの森へと向かった。
盗賊の隠れ家にて、、
「なぁ、嬢ちゃん。いい加減話してくれよ。君の親の借金は君が返してくれないと困るんだよ。このまま話してくれないのなら、奴隷として売るか、殺すかだ。」
「何度言っても無駄よ、、あのお店は両親の残したものだからあんたみたいな奴らに渡す気は無いわ!」
盗賊のリーダーはついに痺れを切らした。
「ちっ、、めんどうだ。おい!こいつを変態貴族共に売りつけてやれ!」
「い、嫌っっ!話してよっっ!」
抵抗していると私は壁に向かって蹴られてしまった。
「ぐっっ、、」
口から血が出る。
痛い。
奴隷になったら多分一生帰ってこれない。
いつか誰かを助けられるような魔法使いになりたかったな、、
広間から小さな部屋に連れていかれる。
そして、近くには鉄の焼印が置いてある。
奴隷の紋を押されるのだ。
最後にあったアレクという男は、私から見たら誰よりも輝いて見えた。
私も彼の旅に付いて行きたいと思ってしまった。
男たちは準備をするために部屋を出ていく。
ドアが開くと聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「やっと見つけた、ウェルア。」
「な、なんで、、」
「お前に言いたいことがあるんだよ。だから助けに来た!」
その言葉を聞いて安心したのか、私は気絶してしまった。
次に目が覚めると、アレクが横に座っていた。
ここは冒険者ギルドの応接室だ。
「お、やっと起きたか。急にぶっ倒れたから心配したんだよ。」
私は起き上がり、助けてくれたアレクになんて言えばいいかわからなくなっていた。
「ここの部屋はニアさんが用意してくれたんだ。盗賊たちは警備隊に連れて行ってもらった。そんで、俺はお前に言いたいことがある。」
彼の目は真剣な目だった。
「ウェルア、親の形見を大切にするのはいいことだが自分が死ぬことは形見を捨てると一緒だぞ?」
私には彼の言っている意味がわからなかった。
「ど、どういうこと?」
「つまり、親はお前の心の中でまだ生きてるんだ。親の思いは店を守れとかじゃない。娘であるお前に生きてて欲しいんだよ。ウェルアが死ねば、娘という親の形見が無くなるんだよ。店なんかいい、お前はお前がしたいことをやれ。それがどんな親でも1番に守って欲しいものだ。」
涙が止まらなかった。
幼い頃に亡くなった両親がどんなことを思ってるかわからない。
とにかく親の残した店を大事にしないとと思っていた。
でも違った。
私が勝手に勘違いをしていたんだ。
私は私がやりたいように生きる、それこそが親が残したものだったのだと気づいた。
涙を拭い、アレクに言う。
「ありがとうアレク。お願いがあるんだけど、私を君の旅に連れて行って。」
俺は、黙って頷く。
この日、ウェルアが俺の1人目の仲間となったのだった。
ウェルア・ビーリス 中級魔法使い 青色の髪色をしており、かなり偉そう。メガ級まで使える。
※魔法使いで能力を持っているものはかなり少ないが、その分基礎魔法ではなく自己流の魔法を作ることが可能。
(毒消しや空を飛ぶ魔法、穴を掘る魔法など。)