第十七話 お人好し
ようやく、最後の闘いとなった。
相手はあのガルドだ。
街に来てまもないのに、なんで俺こんなことやっているのだろうと今更思えてくる。
他人のために命をかけるのはおかしいことだ。
でも、前世の俺みたいに逃げたくても逃げれない人を見た以上、見過ごすわけにはいかない。
この勝負、絶対勝つ。
「それでは、最終試合開始です!」
少しの間、両者は沈黙する。
そんな沈黙を破ったのはガルドだった。
「アレク、実に見事な戦いぶりだったな。感心したぜ。だがな、やっぱりてめぇはここで死んでもらう。」
「強引だな。俺が悪いことでもしたってか?それともニアさんのことで悩んでるのか?」
ガルドは戦闘態勢に入った。
「これから、だよ。お前みたいな強い奴が俺たちの周りをうろちょろされると悪いことができなくなるんだわ。」
「だからっっっ、、!!」
ガルドの体がいきなり巨大化し俺にすごい速度で突っ込んできた。
「うおっ」
俺は横に飛んでかわすが、明らかに強くなっている。
まるで、ゴーレムのような、ボディービルダーのような異様な身体付きになっている。
「俺の能力は「筋力増強」。体にある筋肉全てを大幅にパワーアップさせる能力だ!」
ひたすらに俺を殴り潰そうと連続で殴り込んでくる。
最後の一発は避けきれず剣で受けたが、壁まで吹っ飛ばされてしまった。
「くほっ、、」
前のラリアットとは比にならないほどのパワーと速度だ。
俺もやられっぱなしになるわけにはいかない。
「透明化」
まずは姿を消す。そして背後から剣で、、
しかし、ガルドは急に振り向き横から拳を繰り出してきた。
まるで俺のことが見えているかのように。
またも横に飛ばされ、盛大に転がってしまう。
あの時のふざけた感じではない。本気で俺を殺しに来てるんだ。
なら俺もそのくらいの気でいかなくては。
地面に向かって風魔法を撃つ。
「おいおい、砂埃を出したら不利になるのはテメェじゃねぇのか?透明化できねぇぞ!」
ガルドの危機感知能力は異常だ。だからこそ、当たりやすいあの魔法を使う。
「メガエレキ!!」
分散した稲妻はガルドの体に当たった。
「へっ、確かに痛てぇがどうってこと、、、」
ガルドが俺の魔法を撃った場所を予測し、攻撃を仕掛けてきたが俺に当たってもあまり効果が無かった。
「な!?どうなってやがる!?」
「筋肉は電気に当たると収縮を始める。少しの電流ならともかく俺の巨大な電流を喰らえば忽ちお前の殴る力が抜けていくんだよ。」
そして俺は、ゼロ距離で剣技を放つ。
「烈火爆炎斬!!」
上位の炎魔法と組み合わせることで強靭な肉体ですら焼き切る技だ。
ガルドは床に倒れ込む。
「降参しろ。命までは取らないで置いてやる。」
剣を向け、降参を促す。
俺にはまだ、人を殺す勇気がない。
「、、、だから、テメェのそういうところがお人好しなんだよ!!」
ガルドはズボンの辺りから妙な薬を出し、それを一気飲みする。
俺の体はガルドが立ち上がった瞬間、場外までぶっ飛ばされた。
あっけなさすぎて気づくことすら出来ない。
「ぐほっ、、」
大量の血を吐く。魔力で少し体を守っていなければ腹がズタボロになっていただろう。
「言ッタヨナァ?お人好しハ危ナイッテ。善人カラ見レバお人好しハ助ケニナルガ、悪人カラシタラ「ドウゾ殺シテクダサイッテ言ッテルヨウナモンダロォガァァ!!!」
ガルドは、さらに強くなり、この世界の厳しさを俺に教えてくれるかのような悍ましい姿へと変貌したのだった。
ガルド・ゴルザース 筋力増強 自分の力を込めたい部分の筋肉を強くする。片腕だけに集中することで大きくすることも可能。足に込めれば、瞬発力も上がる。