第十五話 地下闘技場第一試合
咳き込んでしまうような不衛生な環境。
所々に蜘蛛の巣があり、壁も汚れている。
薄暗い階段を降りて行くと、明るく開けた場所に出る。
「あんた誰の推薦で来たんだ?」
この男が受付をしているようだ。
「ガルドっていう奴の誘いで。」
受付を通り、控室らしき所に入る。そこには、ガルドがいた。
「よう、新人坊主。本当に来てくれたんだな。嬉しいぜ〜。ここに来たってことは、死ににきたってことでいいのか?」
「そんなわけねぇだろ。ガルド、約束しろ。俺が勝ったらニアさんを解放しろ。」
ガルドは笑い、俺の肩に手を強く当てた。
「いいぜ、勝ったら、な?」
俺は闘技場内に入る。周りには大量のギャラリーがいた。
どいつもこいつも悪人しかいない。
「さて、最初の相手は、、」
向こう側、ガルド陣営から送り込まれてきたのは国際指名手配にもされている有名な盗人スウィーク。
「ようお兄さん。あんたは木刀でいくのかぁ?」
ここのルールには真剣は無し、と書かれていたがスウィークの持っているものはどう見てもナイフだ。
さて、相手はどんな手を使ってくるのやら、、
「さぁさぁ、お集まりの皆様!今回の挑戦者は俺の奴隷を解放するとカッコつけて死ににきた!アレク君だ!!」
クソみたいな放送ありがとよ!死ににきたんじゃない、生きる目的を見つける為に人を助けるんだ。
「第一試合開始!」
いくぜっっ!
っと思いきや、手に握っていた木刀がない。
なぜかスウィークが持っている。なるほど、それが奴の能力か。
おそらく、相手の能力は「盗み」。
「お兄さん、まさか手ぶらで来たの?どんどんいっちゃうよぉ〜。」
二刀流になったスウィークは問答無用で攻撃してくる。
俺はひらりとかわしながら、持ってきた水のボトルを出す。
「ポーションかぁ?それで俺に勝てたら国際的に指名手配なんてされねぇんだよ!!」
怒涛の攻撃も軽くあしらい、俺も能力を使う。
能力「液体操作」発動。
あまり強度は高くないが威力は期待できる。
「なるほど、それがお前の能力かぁ。だが、二刀流に勝てるわけねぇよなぁ!?」
確かに、今は俺が不利な状況にある。
しかし、俺の本当の能力を使えば逆転は容易だ。
俺の水で出来た剣が、衝撃に耐えられず消えてなくなった。
「貰ったァァァァ!!」
そこでスウィークは気づく。
あれ、なんで俺は「何も」持っていないんだ??
なんで、こいつの手に木刀と俺のナイフが、、、
「はぁぁっっ!!」
木刀で顔面を一撃。
観客全員が驚いていた。ガルドも目を見開いている。
なぁに、簡単だ。
俺が「盗み」をコピーし、相手の武器2つを奪った。
「しょ、勝者、アレクゥゥゥ!!!」
歓声が上がることもなく、ただ沈黙が走る。
これが俺の戦闘スタイル、「複製」を存分に発揮して勝利する。
スウィーク 「盗み」 視界内に捉えたもので半径約2メートル範囲内の物を瞬時に自分の手に移す能力。