第十二話 託された思い
次の日、早朝に起きた俺は出発の身支度をしていた。
何せどんな旅になるかわからない。
だからこそ、入念に準備する。前世だと修学旅行前の準備を怠らないことに近い。
ちなみに、ラミアには旅に出ることは伝えていない。今更、喚かれてしまうとややこしくなるからだ。
まだラミアからもらった腕輪がなんなのかは聞いてないな。まぁ、いいか。
「アレク様、本当に行かれるのですか?」
ドアの方に目をやるとメルとジュリアが立っていた。
「うん、急でごめんね。本当はもう少し思い出を作りたかったんだけど、、」
そう、まだ10年しか経っていないのだ。家族との触れ合う時間としてはあまりにも短い。特にジュリアなんか2年前に仲直りしたばかりだ。
「わかりました。主人様の判断にお任せします。でも、、決して死なないでくださいね。我々はあなた様の家来であり、家族なのですから」
「うん。死ぬ気で生きてみるさ。」
なぜかしみじみときてしまう。
俺がずっと修行をしていたからまともに話し合えていない。
だからこそ、寂しい。
「大丈夫です。我々はいつまでもあなた様の帰りを待ちますので。あ、そう言えば昨日、祖母のミレア様から出発前にアレクを中庭に連れてきて欲しいと頼まれていました。」
祖母?なぜ今更。あんなに俺のことは興味無さそうだったのに。
とりあえず向かってみると、中庭のベンチに祖母が座っていた。
「来たか、アレクよ。まぁここに座りなさい。」
俺の予想の何倍も優しい声だった。言われるがままお婆ちゃんの横に座る。
「昨日ことを聞いてな、お前さんに助言をしに来たんだよ。」
なるほど、RPGで言うところの長老か。この世界の真実とかそういったことを教えてくれるのかな。
「これからお前さんが対峙することになる[神]について話しておこう。レイヴンから大体の話は聞いただろう。だが、厄災が起こったあの日に多くの疑問が残っているのじゃ。なぜ神は種族の繁栄を恐れたのか。突如として現れた神とはなんなのか。国王と騎士団達はどこに消えたのか。私はその答えを知っている。」
「え、なんで100年前のことを知ってるの?俺の祖母だったら、せいぜい60年前くらいじゃ、、」
「私の能力不老だよ。このスキルのおかげで何年も生きているんだ。」
な、なにぃー!?不老なんて最高じゃないか!
いや待て、とりあえずこの人は100年以上は生きていることになる。
つまり、俺の知りたいことも全て知ってるはずだ。
「じゃあ、、その真実を俺に教えてくれない?」
お婆ちゃんは少し考えた後、俺の方に手を伸ばしてきた。
「アレク、お前は相手の能力を受け取る力があるんじゃないのか?」
「俺の能力を知ってるの?」
「いや、長いこと生きてる間の勘じゃ。とにかく、私の不老と『瞬間転移』をもらってくれ。」
「瞬間転移?なにそれ。」
「簡単に言えば自分の見えるところならばどこにでも瞬間で移動することができる能力じゃ。加速と同じで誰でも覚えられる能力じゃな。まぁ、今は高度過ぎて覚えられるものはおらんが、お前さんならできる。」
俺は新たな能力、不老と瞬間転移のスキルを手に入れた。
「では、今こそ話そう。100年前の真実すべてを、、、」
ドォォォォン!!!
ここから少し離れたところに凄まじい速度で何かが落ちてきた。
砂埃が消え、視界が開けてくるとクレーターの真ん中に1人の男が立っていた。
そいつからは、嫌な気配が漂っており人間なのに人間じゃない感じだった。
「くっ、、やはり来たか。しかし、もう私のやるべきことは終わっておる!」
お婆ちゃんは、俺の手をぎゅっと握った。
「いいか!お前さんが最後の希望じゃ!この世界の異端者ということを自覚し、神と対峙してくれ!これは、私が託す未来への希望だ!!」
そう言い終わると、お婆ちゃんは地面に手を当て屋敷全体を覆うほどの魔法陣を出現させた。
その行動を見た男は、拳を強く握り締め腕を横に振り壁を叩くかのような素振りを見せながら大声で叫んだ。
「グランド、、アァァァァス!!!」
俺はその瞬間、光に包まれ何もかもわからなくなった。
祖母 不老 年をとることはなく無限に生き続けることができる。しかし、病気や闘いで死ぬ場合は効果を受けなくなる。
謎の男 恐ろしく強い魔力を持っている。大柄な体型である。能力は不明。




