第十一話 悲劇の前日
「あんたはゲームばっかりして!テストでも悪点ばかり取るし、あんたの兄ならこんなに学校のことで悩むことは無かったのよ!」
「すぐにそうやって人と比べて何がしたいんだよ。勉強は苦手なんだよ!もういいからほっといてくれ!」
「その態度が気に入らないのよ!そうやってすぐに突っぱねてくる感じ!あんたなんかいなければ、、いなければ、、こんなにお金をかける必要もなかったのに、、、やっぱあの時あんたが死ねば良かったのよ、、、」
俺は前世から酷いものだった。
小学校、中学校までは何事も無かった。
でも、高校のペースに追いつくことが出来ず、挫折しスマホゲームやネットばかりをしていた。特に趣味はなく、遊びたくても予定がない。
自分でもわかってる。明日から変わろう、明日から頑張ろう。そう思っても数日経てばそんな気持ちどこかに飛んでしまっている。
できる兄や友達と比べられ、金のことばかりを口にされ、出来ない自分を責めるだけ責めて全く変わろうとしない。
だから学力や才能だけで選ばれるこの世界が大嫌いだった。
大学も入らず、家を出て行きフリーターのような生活を送っていたが、そんな生活も長くは続かない。
親が死んだことを聞き、家に帰っても待っていたのは親族からの慰めではなく お前みたいなダメ息子は消えろ と言われた。
あの時、喧嘩をせず親に従っていたら、もっと頑張っていたら。こんな後悔しか浮かんでこない。
そんなことを思い出しながら部屋に戻ると母さんがいた。泣くこともなく、ただ俺を見ている。
「ねぇ、アレク。あなたはその夢に責任を持てるの?あなたはどうしたいの?それだけ聞かせて。」
「母さん、今まで俺の夢を応援してくれてありがとう。もちろん母さんや親父が俺のことを心配してくれていることも知ってる。でも、、ようやく、ようやく自分でやろうと決断したことなんだ。親が正しいとしても、俺は俺の道を進みたい。もう誰も心配しなくていいように。せっかくの2度目の人生なんだ、今度こそ、 もうどうでもいい なんて思わないようにしたいんだ。」
ごめんよ、母さん。ほんとはすごく心配してくれているのだろう。だから泣いていたし、何も言えなかったのだ。
「わかった。ベレトには、私から話しておくわ。2度目の人生というのはよくわからないけど、とても辛い経験をしたのでしょう?だったなら尚更、もう何も言いません。行きなさい、アレク。もう私は、、、」
「安心しました。」
そう言い終えると、母さんは部屋から出ていった。
俺の言いたいことを言っても母さんは辛くとも受け止めてくれた。俺はこの思いを無駄にしてはいけない。
明日、この家を出て[神]の手がかりを見つける旅に出よう。
誰かに託されたんだ。これまで誰にも託されたことない俺からしたらやり直すチャンスかもしれない。
だからこそ俺は、今度こそ後悔のない人生を送りたいんだ。