第十話 喧嘩
そして、ついに10歳の誕生日を迎えた。
それにより、これまで俺が生まれた時にしか来ていなかった祖母が来てくれた。
俺はテーブルの中央に座り、皆がそれを囲むように座った。
「はーい、これはママからのプレゼント。困った時に使える魔集書!普段は手帳くらいのサイズなのに一度手を叩けば分厚い本になるのよ。中には色んなことが書いてあるからね。」
「じゃあ次は俺からだな。ほら前から欲しかったお前専用の剣だ。アストソードという魔剣でな、お前の魔法と合わせやすく壊れにくい一級品だぜ。」
「父さん、母さん、本当にありがとうございます!」
俺はすごく嬉しかった。
前世でも小さい頃は祝ってもらえていたが、、いやもう思い出したくも無い。
とにかくこの幸せな時間を邪魔したく無いのだ。
祖母は黙って黙々と料理を食べている。
全く、あの人はこの幸せを知らないのだろうか?
しかし、これから地獄となることを誰も予想していなかった。
「これからアレクはどうしたいんだ?やっぱり王国の騎士にでもなるのか〜?」
父さんはかなりお酒に酔っている。
俺も少し飲んでしまっていたから気が緩んでいた。
「俺、明日から旅に出て冒険者になろうと思うです。もう準備万端なんですよ。」
と、口を滑らせてしまう。
生まれてから一度も怒られることはなかったので、大丈夫だと安心し切ってしまっていたのだ。
すると父さんの笑いがピタリ止まった。
「おい、待て。どういうことだ?俺はお前を冒険者にはさせないってあれほど言ったよな?」
さっきまでのふざけた顔ではなく、怒っている。
「でも、これは前から決めていて、、」
俺はなるべく普段通りに作り笑顔をしながら話を切り出そうとした。
だが、帰ってきたのは見たこともないほどの怒りだった。
「黙れ!!そんな子に育てた覚えはない!お前はここの土地を継ぐって約束しただろうが!!」
「それは昔のことです!今は冒険者になって神の目的を止めるという目標があるんですよ!」
「そんなもの知るわけないだろ!いいからお前は親の言うとうりにすればいいんだ!」
俺は、この世界に来て初めてカチンときた。
俺の夢を簡単に否定し、自分の意見を強引に押し付ける。典型的な親の戦法だ。
思い出そうとして思い出すのをやめた記憶が頭から飛び出てくる。
「そうやって、自分の意見ばっか押し付けないでください。なんで俺が自由なことをしてはいけないんですか?俺は実力もつけた!魔法も言語も覚えた!これまで修行してきたことは全部自分で自分の夢を叶えるために頑張ってきたんですよ!その頑張りも知らず、見てもないくせにずっと世話をしていたようなことを言わないでください!!」
全て言いたいことは言えた。
親父はため息を吐き、冷酷な睨みつけるような目で俺を見てきた。
「つまらないな。そんなことに人生を賭けていたのか?そんな子供のような考えを持っていたとはがっかりだ。冒険者になる?なってどうする。神を倒す?どうやって。」
「それは、、、」
くそ、何も言えない。よくよく考えてみれば俺はただ言葉を並べていたに過ぎなかったとだと気づいた。
「いいからそんな考えはもう捨てろ。まず命をかける度胸があるとは思えない。諦めるんだな。」
最後の言葉を聞いて、自分の中で何かが壊れる音がした。
もういい。限界だ。
母さんやジュリアたちは怯えて何も言いそうにない。
祖母は俺たちの喧嘩を黙って見ている。
「どうしてやりたいことがあるって言ってそこに一生懸命頑張ってることに何が悪いんだよ!子供が夢持ったのなら最後まで応援してくれよ!俺だってわからないからやって見たいって言ってんだよ、、自分のことしか考えられないのか!このクソ親父!!」
次の瞬間、親父の拳が飛んできた。
そして、親父は我に帰ったのかリビングから2階にかけ上がり自室に戻った。
周りは静まり返っていた。
母さんは泣いてしまい泣き崩れてしまった。
祖母は、ジュリアたちを呼んでどこかに行ってしまった。
俺は、またやってしまったのだろうか、、、