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宇宙(そら)へ  作者: 桜華
25/25

第弐拾弐話 interception ~~国境宙域~~

投稿遅くなりまして、大変申し訳ありません。

最近、ようやく時間が空いてきたので、少しずつでも書けたらと思っています。

誤字・脱字が御座いましたら修正致します。

<皇国軍艦隊・旗艦白鷺艦橋>

「全艦主砲照準!目標、前方エルトリア帝国艦隊!」

「攻撃隊、攻撃開始!」

一斉に第一次、第二次攻撃隊が敵編隊に突入していった。その数1500と同数である。

両軍のレクルスが入り乱れる中、両軍の艦隊が戦闘宙域に接近する。

「敵艦隊!主砲射程圏内まで、12000!」

「主砲全門起動!墳進弾発射管、全門弐号式墳進弾装填!」

「了解!主砲全門起動!」

「全墳進弾発射管、弐号式装填!」


<エルトリア帝国軍旗艦>

「敵艦隊!段式横一列陣形で接近してきます!」

「敵艦隊!射程までおよそ11000!」

「艦隊中央に旗艦白鷺の反応を確認しました!」

旗艦艦橋内でオペレーターの声が響いた。

「L4宙域の機動部隊を下がらせろ。やつらのことだ、偵察機を出しているに違いない。損害を受ける前に後退だ。」

「しかし、このまま進撃すれば勝てるのではないか?」

フェニウス方面副総督のガレリア・リオ・ビッテンベルグ伯爵が言った。

ビッテンベルグは失態を晒したビルダー候が処刑された後任として派遣された。

そして、この艦隊の司令官ビッテンベルグ伯爵はまだ、16歳なのだ。タイタニア公もそれを承知の上で人事を行った。このビッテンベルグ伯爵家は伯爵家であるものの、先の第二次帝国内戦で彼の父に当たる現当主が多大な戦果を挙げ、現皇帝の即位を手助けした4英雄家の子息に当たる。

「いいえ、閣下。相手は我が軍の包囲網を幾度も打ち破った軍です。別働隊はやはり温存しておいた方が良いでしょう。」

「そうか。なら、そのように。援軍の必要はあるか?」

「いえ、現戦力で申し分ないかと。あとは、DⅡの効果に期待し、本艦隊は前進し…」

「一気に蹴散らす。戦場を制圧する軍馬の如く、か。」

「仰る通りです。閣下。」

「ふん、アルフォウスらしいな。まるで、昔、帝立書院で読んだ帝国の戦いとそっくりだな。」

「申し訳ありません。古きを好む人間でして。」

「いや、いい。実にいい作戦だ。正しく帝国軍らしい戦法だ。今の帝国のやり方には気に食わんからな。敵の大軍をさらに上回る大軍でもって制圧する。これこそあるべき帝国軍の姿だ。この戦いに勝利し、今度こそ白鷺の翼を捥ぎ取るぞ。」

「はっ!」

アルフォウス少将が敬礼した。

「(ビッテンベルグ伯爵。このお人なら。)」

「皇国軍艦隊!尚も本艦隊に接近!」

「閣下。ご指示を。」

アルフォウスがビッテンベルグに対して言った。

「ああ。」

「聞け!帝国将兵たちよ!」

全帝国軍回線で回線が開き、全将兵が耳を傾けた。

「これ以上の帝国軍の失態は、全銀河統一を目指される皇帝陛下のご意向に反するものになる!我らの目標は皇国軍旗艦白鷺のみ!!敵軍は必死に抗戦してくるだろう!だが、恐れるな!!貴様らは、銀河最強の兵たちである!貴様らの圧倒的な力を持ってこの戦場を蹂躙せよ!!!!大エルトリア帝国!皇帝陛下万歳!!」

おおおおおお!!!という怒声が戦域に展開する帝国全軍に響き渡った。

「全艦、対艦、対空戦闘用意!」

アルフォウス少将が言った。

「全ミサイル発射管、全門ラインハルト装填!主砲照準!目標!敵皇国軍艦隊!」

「敵艦隊の左翼を狙え、機動部隊の攻撃で弱っているはずだ。」

アルフォウスが参謀に対して言った。

「了解しました!」

「全艦隊に通達!全艦、敵艦隊の左翼を狙え!」

「敵レクルス連隊、レクルス隊の防衛線突破!本艦隊に接近!」

「対空戦闘始め!アンチショックシールド展開!!」

<皇国軍レクルス部隊>

「こちら、黒金1。艦隊防衛線突破。前方に敵艦隊視認。これより、艦隊攻撃に移る。」

黒金隊約150機が敵艦隊に急接近した。

エルトリア艦隊の対空砲が黒金隊を襲うが、それでも果敢に突撃を続ける。

「照準目標、前方ヘンデル級3!一号式、発射!」

村雨がミサイルを発射したが、エルトリア艦隊の対空砲火により殆ど届かない。

「くそっ!このハリネズミめ!」

「旗艦より全攻撃隊へ。全機、敵艦隊の主砲を狙え。繰り返す、全機、主砲を狙え。」

「こちら第一攻撃隊了解。」

「第二攻撃隊了解。」

「第三攻撃隊、了解した。」

「こちら、第一攻撃隊。敵艦隊に再攻撃を開始する。」


<エルトリア帝国艦隊>

「敵機、再度接近!本艦左舷前方より侵入!!」

「対空砲撃、打ち落とせ!」

旗艦ルルシウス艦長、エレン少佐が言った。

エルトリア旗艦艦隊の対空砲が一斉に左舷より接近するレクルスに砲火を浴びせている。

だが、その砲火の中でも対空砲を掻い潜りレクルスは接近する。

<皇国軍攻撃部隊>

「こちら第一次攻撃隊各機、攻撃態勢。いいか!」

「「「「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」」」」

もう既に10機以上が撃墜されていたが、第一次攻撃隊が敵第一戦隊主力艦部隊に対し攻撃を敢行した。

「こちら黒金1、全機、打ち方始め!!」

第一次攻撃隊が一斉にミサイルを発射した。その弾道は真っ直ぐ敵戦艦に向かう。

ドォォォォォォォンン!!っという轟音と共に、戦艦たちを覆っていたシールドの色が薄くなる。

「くそっ!やっぱり戦艦は無理か!」

「戦艦部隊は艦隊に任せ、我々はその取り巻きに目標変更!各機、続け!!」

「「「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」」」

<白鷺艦橋>

「全艦隊、主砲射撃準備完了!!いつでもいけます!」

「敵艦隊、主砲射程圏内まで、7500!」

「第一防御戦隊を前へ、対重攻障壁、展開準備。」

常陸が橘参謀に言った。

「はっ!」

松山型重戦艦群が艦隊の少し前方に展開し、その周りに無数の障壁展開専用艦雪風型が展開した。

「全攻撃機に通達。全機、艦隊射程範囲より退避。」

常陸が各オペレーターに言った。

「了解。旗艦より全攻撃機へ。全機、艦隊主砲射程圏内より退避せよ。繰り返す、全機!艦隊主砲射程圏内より退避!」


「黒金1了解!第一次攻撃隊撤収!」

「ようやくかよ!お待ちかねだったぜ!」

「さっさとづらかるぞ!各機、続け!」

「第二次攻撃隊了解。撤退する。」

「第三次攻撃隊、了解。」

水晶機構に映し出される無数の友軍機反応が左右に散って撤退していく、その間にも各艦隊の距離は縮む。

最初に戦場に響いた砲声は、エルトリア側のものだった。

「エルトリア艦隊より高エネルギー反応!主砲射撃体勢!」

「第一戦隊!対重攻障壁、展開開始!!」

橘少佐が言った。

命令が発令され、松山型重戦艦の先端から青色の障壁が展開され、雪風型も艦首に同様の障壁を展開し、皇国軍艦隊お得意の防御戦術が発動された。


<エルトリア帝国艦隊>

「なんだ、あの光は!」

ビッテンベルグ伯爵が指揮官席から驚いて立ち上がった。

「閣下は、初めてご覧になるようですね。心配要りません。ただシールドを展開しただけです。」

「だが、あれでは敵艦隊に攻撃を加えられないではないか!」

ビッテンベルグが少し動揺して言った。

「確かにあの障壁を展開されると少し厄介ですが、こちらが攻撃し続ければ長くは展開できないはずです。」

「そうか。では、攻撃開始だ。思う存分やるといい。」

「了解しました。」

「敵艦隊、主砲射程圏内突入!」

「よし!全艦、主砲斉射!打ち方、始め!!」

アルフォウス少将が後方に控えていた参謀に言った。

「全艦、攻撃開始!打ち方、始め!!」

参謀が復唱し、各艦に指令が伝達された。

「全門斉射、ファイヤー!!」

ルルシウスの主砲斉射後、少し遅れて帝国軍艦隊の猛攻が開始され、無数の光の槍が、青き盾に守られた艦隊に襲い掛かった。


<皇国軍艦隊>

「エルトリア艦隊、発砲!!」

「来るぞ!各艦、前方にバリアブルフィールド展開!!」

艦隊構成各艦がさらに艦体に戦闘用障壁を展開した。

「第一波、接近、4、3、2…」

ドォォォォォォォォォォォンンン!!!!!っという音と共に白鷺が激しく揺れた。

思わず、オペレーターたちが驚きの声を上げる。

だが、彼らに心を落ち着かせる時間は与えられなかった。

第一波を受けきったと判断された瞬間、司令官の激が飛ぶ。

「重攻障壁、即時解除!!各艦、主砲射撃準備!!」

「「りょ、了解!!」」

「旗艦より第一戦隊松山部隊へ!全障壁解除!!主砲雷撃戦に移行せよ!」

障壁が即時解除され、雪風型のみが障壁を展開する。

「障壁解除確認!」

「敵艦隊、本艦隊射程範囲、既に侵入!いつでもいけます!!」

オペレーターの一人が振り返って言った。

「よし!全艦、全門斉発!打ち方、始め!!」

橘少佐が復唱する。

「全艦、全門斉発!打ち方、始め!!」

「主砲、打ち方始め!!」

九条大佐が下命後、白鷺を初めとする無数の戦闘艦の放火がエルトリア艦隊に反撃を開始し、皇国軍艦隊から放たれた光の槍がエルトリア艦隊に襲う。


<エルトリア帝国軍>

「第一波目標、効果無し!」

「敵艦隊より高エネルギー反応!攻撃、来ます!!」

各オペレーターたちが叫んだ。

「全艦、シールド強度最大!回避運動開始!」

アルフォウスが艦橋で言った。

その数秒後、帝国軍艦隊を皇国の光矢が襲い掛かった。

「第一戦艦隊被害多数!戦艦パリマスタ戦線より離脱します!」

「戦艦グリーダス、フォルクス大破!フォルクス左舷被害甚大!」

「シュナイザーⅡ世!航行不能!」

「アルグレアす、『ドォォォォォォォンンンン』」

「「うわぁぁ!!」」

オペレーターたちが被害報告をしている間に、ルルシウス右舷シールドに皇国軍の主砲が掠り、艦内に大きな衝撃が走った。

「くっ!怯むな!全艦、主砲打ち続けろ!」

「主砲照準!目標!敵前方艦!ファイヤァァァー!!!」

エレン少佐が言った。

前方の皇国艦が主砲の直撃を受け、爆沈した。

「第一戦艦隊、前線部隊に下命!敵のシールドシップに攻撃を集中せよ!」

「了解。旗艦より第一戦隊及び前線部隊へ。敵のシールドシップに攻撃を集中せよ。」

エルトリア側の壮絶な反撃が始まった。

エルトリア前衛艦隊構成艦の全砲門が目前に迫った皇国軍艦に照準を合わせる。

「ファイヤァー!」

この雄たけびと同時に、無数の輝く弾道が皇国軍艦隊に迫り。皇国艦を次々と薙ぎ倒していった。


<皇国軍艦隊>

「障壁駆逐艦烏山、爆沈!」

「障壁巡洋艦昭島大破!戦列より離脱!」

「戦艦鞍馬、左舷直撃航行不能!取り舵!?僚艦と衝突します!!」

「戦艦鞍馬、重巡葉山と衝突!両艦とも航行不能!」

オペレーター達が必至に戦況を報告する。

「損害の大きい艦は艦隊後方へ撤退だ!障壁艦は損害艦の援護に付けよ!」

常陸がオペレーターに言った。

その命令を発する最中にも、容赦なく白鷺とその護衛艦隊に敵艦の攻撃による轟音が艦隊を包む。

「各艦怯むな!全艦、自由砲撃に移行!攻撃開始!!」

「障壁艦が狙われているぞ!前方の艦に集中砲撃だ!反撃の隙を与えるな!」

各幕僚たちも必至に指揮を執る。


両軍は進軍速度こそ落としたものの、各艦隊は接近し壮絶な殴り合い繰り広げている。帝国軍と皇国軍が全面衝突した衝撃は凄まじく、神々が宇宙の支配権を賭けて戦いを繰り広げているかのように思える程であった。

だが、激しい戦闘とは裏腹に両軍とも敵軍に対して致命的損害を与えられずに、すでに戦闘開始から2時間が経過していた。


「敵艦隊尚も本艦隊に接近してきます!距離、27000!!」

「敵艦隊陣形変更!」

オペレーターが言った。

「くそっ中央突破だ!敵の突撃が来るぞ!!各艦、近接格闘戦闘よぉーい!!」

「旗艦より全艦隊へ。全艦、敵の突撃に備えよ!近接格闘戦闘用意!繰り返す、全艦、近接格闘戦闘用意!!」

オペレーターがマイクを手で押さえながら言った。

「このままでは、敵に本艦隊の中央を突破されかねませんぞ、閣下。」

井上参謀長が言った。

「閣下。あまり得策ではありませんが、時間を稼ぐ策が一つ思いつきました。」

橘少佐が常陸と井上を見て言った。

「何だ?言ってみろ。」

「はい。当方のレクルス機でもって、敵艦の機関部を攻撃するのです。それも艦隊の前衛艦のみ。」

「そうか。上手くいけば、滞留する敵艦を敵軍全体の進撃に対する妨害物にできるということか。」

井上参謀長が顎に手を当てて言った。

「それだけではありません。敵軍は救助の為、貴重な時間を割かなければなりません。その隙をついて比較的損害の大きい右翼に集中攻撃を浴びせ、敵艦隊を混乱状態にできます。」

「通信参謀!レクルス各機に通達!目標変更、敵艦隊前衛艦の機関部を狙え!」

常陸が参謀に対して言った。

「了解!旗艦より全攻撃機へ。目標変更。敵艦隊前衛艦の機関部を狙え!繰り返す、敵艦隊前衛艦の機関部を狙え!」

「こちら第一次攻撃隊、了解。敵艦隊に接近を試みる。突撃路確保の為、艦隊の援護射撃を請う。目標点、地点430-1!」

「了解!」

「第一次攻撃隊より艦隊支援砲撃要請です!目標点、地点430-1!!」

オペレーターが振り返って言った。

「第一戦隊、支援砲撃開始。目標!地点430-1敵艦群!」

命を受けた第一戦隊の構成艦らの砲塔が目標点に展開しているエルトリア第二艦隊に照準を合わせた。率いるのは林部少将である。

「全艦、主砲一斉射!打ち方始めぇ!」

第一戦隊から放たれた砲線がエルトリア帝国艦隊に迫った。

少し曲線を描いたように見えた弾道は、目標であったエルトリア艦隊を確実に捕らえていき多大な損害をもたらした。


<エルトリア帝国艦隊>

「第二戦艦隊左翼部隊被害甚大!戦闘不能艦多数!」

「第二戦艦隊が集中砲撃を受けています!」

「作戦開始はあともう少しなのだ!なんとか持ちこたえさせろ!」

「敵艦よりレクルス群の発進を多数確認!レクルス群、本艦隊左舷方面より第二戦艦隊方面に接近してきます!」

「第四戦艦隊に通達!ドライ隊発進!敵機を迎撃せよ!」

アルフォウス少将の命を受けたドライ隊が出撃体制に入り、次々と一糸乱れぬ形で発進していく。

「第二戦艦隊を砲撃した敵艦群の位置特定。特定次第、第三戦艦隊は特定した敵艦群に集中攻撃せよ!」

「了解!」

オペレーターが司令官の命令を第三戦艦隊に伝達した。

その間にも、両艦隊から発進したレクルス部隊の距離は縮まり、両軍の砲撃戦も激しさを増していく。

「第一戦艦隊、中央部まで被害出ています!このままでは敵の主砲斉射があった場合持ちこたえられません!」

「(くそっ、第一戦艦隊を中央で突出させたのが仇になったか!)」

「目的は達した!第一戦艦隊、後退開始!後衛部隊は第一戦艦隊の撤退を援護せよ!」

「敵艦群地点特定完了!」

「よし、第三戦艦隊に伝え!」

「了解。第三戦艦隊、受諾しました。これより攻撃を開始します。」

エルトリア帝国艦隊第三戦艦隊構成艦の砲塔が林部少将率いる第一戦隊に照準を合わせた。

「感情的に撃つな!より慎重に、より正確にだ!」

「司令。全艦射撃準備完了しました。」

「よし、全艦、攻撃開始!」

第三戦艦隊司令のガーフィールド少将が拳を握り閉めて言った。

第三戦艦隊から放たれた弾道は、少将が下した命令の如く正確に第一戦隊構成艦に襲い掛かり、第二戦艦隊に対して注意を払っていた第一戦隊は突然の攻撃に不意を突かれた形となった。


<皇国軍艦隊>

「第一戦隊が敵の集中攻撃を受けています!」

「第一戦隊被害多数!」

「旗艦嵐山、被弾!」

「なに!?損害は!?」

井上参謀長がオペレーターに対して言った。

「損害軽微!戦闘に支障なしとのことです!」

一瞬、白鷺艦橋内に走った衝撃は、オペレーターからの発言で収束をみた。

「全く、林部閣下にはいつも驚かせられてばっかりですね。」

「いやいや、とにかく無事でよかった。」

両参謀が軍帽を取り、汗が滲んだ顔を扇いだ。

「だが、戦況は以前として厳しい。敵の中央突破を何とか防いだとしても、このままでは消耗戦だ。」

「あとは作戦が上手くいけばいいのですが。」

「第一戦隊は作戦続行。第二戦隊は第一戦隊の援護に、その他の艦艇は引き続き敵艦隊正面に対して攻撃続行!」

常陸が橘少佐に対して言った。

「はっ!」

「(あともう少しだ。全軍何とか踏みとどまってくれ。)」

<皇国軍第一戦隊旗艦嵐山艦橋>

「損害箇所、応急修理急げ!隔壁閉鎖!」

このとき、宇宙戦艦嵐山は左舷中央に敵砲撃の直撃を受け、フィールドシステムの強度が著しく低下しており、再度の直撃弾を喰らえば多大な損害は不可避な状況にあった。

だが、猛将林部と呼ばれる所以でもあるが、嵐山は後退するどころか前線に留まり、敵艦隊にレクルス群突撃の為の支援砲撃を加え続けた。

「撃ち続けよ!何としても作戦を成功させるのだ!撃てぇー!!」

その覇気に押され、他の僚艦も第三戦艦隊の攻撃には目もくれずに第二戦艦隊に攻撃を加え続ける。

第一戦隊の必死の攻撃に第二戦艦隊の陣形が徐々に崩れていった。

「よし、第一戦隊が押しているぞ!大鐘中佐に通達、突撃開始!」

<皇国軍レクルス第一攻撃隊>

「こちら、大鐘!了解した!これより作戦行動に移る!」

「黒金1より各機!第一戦隊が晩餐会への招待状をやっと手に入れたぞ!各機、有難く頂戴しろ!全隊、突入!!」

「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」

「敵機は我々が引き受ける!第二攻撃隊全機、続け!」

約800機のレクルスが見方機の突撃を援護体制に入り、敵機の必死の抵抗を妨害する。

「くっそ!艦隊には近づかせん!」

「お前の相手はこっちだ、よ!!」

敵機の下方から突撃した村雨隊が攻撃隊を追撃するドライ隊に切り込む。

「おらぁぁあ!」

赤く光った村雨の両翼が、敵レクルス、ドライの機体を真っ二つにした。

「うわぁああ!!」

ドォォォォォンン!との爆発音と共に、機体が四散し、他のドライがすかさず散開し迎撃体制に入った。

「さすが基山さん!お見事!」

「なめた真似しやがって!皇国人風情がぁ!」

一機のドライがビームサーベルを抜き、先ほど敵機を撃墜し終え迎撃体制が整っていない基山機に襲いかかった。

「(はっ!!)」

「大将機!貰ったぁぁぁあああ!」

ドォォォォォンン!

基山機を狙ったドライがものの2秒で基山機の目の前で四散した。

「でも、まぁ相変わらず詰めが甘いっすけどね!」

「うるさいぞ、わ田辺の癖に!」

「わ田辺じゃないですからぁ!田辺っつってんでしょうが!お礼の一つくらい言えないんすかぁ?そんなんだから万年前線勤務なんす、よ!」

また一機、ドライがビームの直撃を受けて四散した。

「うっうるさい!大きなお世話だ!お前こそ、品行悪性で戦果に似合わず昇進できてないじゃない、か!」

そして、また一機。

「お二方。いいかげん喋りながら撃墜数稼ぐの止めてください。不愉快です。軍法会議に記録装置提出しますよ?」

「「あぁ、秋穂少尉。すみません。」」

両雄が同時に言葉を発した直後、新たに3機のドライが四散し、宇宙の藻屑と消えた。

後に、基山大尉、田辺中尉は第3次グラン=グリード会戦において、航宙母艦8隻を撃沈した英雄として、特二級青樹勲章を授与され、同じく青樹勲章をペアで受章した田上・大上ペアと並ぶ英雄として歴史にその名を残すこととなる。


「帝国軍の奴ら追ってきません!足止め成功です!」

「よし、全機!安心して晩餐会を楽しめそうだぞ!満遍なく平らげろ!」

「敵艦の対空砲火に注意!対艦レーザー兵器、使用許可!機関部に対し全機攻撃開始!」

「「「「「了解!!」」」」」

対艦装備をした村雨が第二戦艦隊と撤退中の第一戦艦隊の前衛部隊に襲い掛かった。

善戦する皇国軍。

だが、その艦隊の左舷方面より近づく脅威があった。

<皇国軍艦隊・白鷺艦橋>

「レクルス部隊の突撃を確認!着々と敵艦に攻撃中!」

「第一戦隊を援護!レクルスが作戦を完了するまで戦線を維持せよ!」

「敵左翼に対する攻撃も怠るな!また、一斉射撃があるかもしれんぞ!」

井上・橘両参謀が激を飛ばしている。

「ん?なんだ?これ。」

「どうした?なんかあったか?」

水晶機構を監視しているオペレーターの一人が、その異変を主張した同僚に話しかけた。

「ああ、左舷480+6・5地点に反応があった。そっちでも詳細分析してみてくれ!」

「!?わかった!」

「司令!本艦隊左舷前方、地点480方面に異変あり!現在解析中!」

「何!?」

常陸が指揮官席から身を乗り出す形になり、上申したオペレーターの顔を見て言った。

「解析結果・・・出ました!こ、これは!」

「敵機来襲!レクルスの大編隊です!数、およそ2500!数!尚も増大!」

「何だと!!??」

「馬鹿な、多すぎる!正確に確認したのか!?」

「間違いありません!数、依然として増大!」

オペレーターが額に汗を滲ませながら、水晶機構に表示された残酷な真実を伝えた。

「閣下。第五戦隊に残してある村雨の戦力では対応できません。直ちにレクルス部隊を呼び戻しましょう!」

「だが、すでに当方の機体の多くは敵艦隊の中だ。無理に呼び戻せば、逆撃に遭って部隊は壊滅だ。第五戦隊の村雨で対処するしかない。後は、レクルス部隊が早期に作戦を完了して帰還し、第一戦隊を後退させるまで耐えるしかないな。」

「し、しかし!」

「わかっている!第一戦隊及び第一攻撃隊に通達!作戦対象を敵艦隊右翼前衛及び中央部前衛に限定!作戦完了後、直ちに撤収!本旗艦艦隊の直援に回れ!」

「はっ!」

橘少佐が常陸の命令をオペレーターに復唱した。

「参謀長!全艦隊に通達!全艦、左舷対空戦闘用意!ギリギリまで艦砲射撃で打ち落とし、残数はレクルス隊で対処する!第五戦隊に伝え!」

「了解しました。」


白鷺艦内に走った衝撃。

ここに、国境宙域での最大危機に常陸は晒されていった。



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