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宇宙(そら)へ  作者: 桜華
22/25

第弐拾話 concentration ~~集結~~

更新大変遅くなりました。申し訳ありませんでした。

「えっ!?何か手伝いたいって!?」

神聖扶桑皇国宇宙軍第弐宇宙艦隊旗艦白鷺の司令官私室内で常陸の声が響いた。

「何でいきなり、どうしたのさ?みんな。」

「いや、最近戦いが多いし、俺たち守ってもらってばっかで、何かしたいって思ったんだよ。」

大上が照れくさそうに言った。

「戦争はできないけど、何か簡単なこととかさ!ほら、私たち総合機械化にいたんだしさ、何か手伝えることってあると思うの!」

雨宮が大上に続いた。

「俺は、飛行機の整備士志望だったから役に立つと思うんだけどな~、ドックとか、ドックとか!ドックとか!!」

御坂が常陸の前にある机から身を乗り出し、顔を近づけて言った。

「御坂、君はただレクルスに触りたいだけだろ…」

「あっ、バレた??」

御坂が机から手を離し、数歩下がった。

それと同時に、高町の平手打ちが御坂の後頭部を襲う。

「まぁ、ドックの整備ができなくても、何かお手伝いはできると思います。食堂のお手伝いでもいいので、何かやらせてはいただけませんか?」

高町が御坂の一歩前を出て、常陸に言った。

「嘘?食堂で~?」

宮崎卓也がつまらなそうに言った。

「何いってんの!?何でもいいから力になりたいっていってたじゃん!」

空かさず優香がつっこんだ。


「まぁ、みんなの気持ちは有難いけど、ドックでの整備は許可できないかな。」

常陸が大上たちを見て言った。

「なんでだよ~一番力を発揮できる場所なのに~」

御坂が落胆した様子で言った。

空かさず、御坂の後頭部に衝撃が走る。

「痛っ~!さっきから叩きすぎなんだよ!馬鹿!」

「ん?誰が??」

高町が威圧的に御坂を見た。

「はいはい、やめてね。ここで喧嘩すると従兵が入って来ちゃうから、ほら。」

常陸が苦笑しながら言った。

カッ!カッ!カッ!カッ!!

二人ほどの走る足音が聞こえ、その後ドアをノックする音が続いた。

「閣下!!何か大きな音が聞こえましたが!?如何なさいましたか!?」

皆がビクッ!として一斉にドアの方を向いた。

「いや、なんでもない!持ち場に戻れ!」

「「はっ!失礼します!!」」

というと、従兵たちが持ち場に戻っていく足音が聞こえた。

「まぁ、みんなの気持ちは有難いけど、やっぱり許可はできないかな。僕にはみんなを無事、扶桑まで連れて行く責任があるからね。オペレーティング研修とか、来るべき地球奪還作戦に備える訓練とかはどうかな??」

常陸が逆提案した。

「えっ!?オペレーティングって管制官みたいなやつだよな?」

大上が常陸に尋ねた。

「そうだね。レクルス発艦の管制とか、戦闘中の索敵任務とかかな。まぁ、これはまだ大上准尉にしか話してなかったんだけどね。」

「兄貴に?なんで教えてくれなかったんだよ、兄貴のやつ!」

「そんなに怒んないでよ、大上。大上准尉は、何も皆の気持ちを知らなかった訳じゃないんだ。みんなに危険が伴うことはさせたくなかったんだと思う。みんなに話したら絶対この話に乗って訓練を始めてしまうと考えていたからね、実際、僕も大上准尉と同じ意見だし。」

常陸が苦笑しながら言った。

「なんだよ!俺たちの力が信じられねぇってのかよ!?」

「違うよ、大上。そうじゃない。これは戦いを知っている人間だから言えるんだ。戦争に参加するということは、それだけリスクを伴う。要するに死と隣り合わせということだよ。オペレーティングは艦橋で行うことが殆どだ。艦橋などの艦体の中心部には攻撃が集中することが多いからね、もし、直撃でもしたら即死だよ?そんな世界でみんなの安全を保障できると思う?」

全員が“死”という言葉に息を呑む。

常陸が続けた。

「では、こうしようか。もし、大上准尉と相談して大上准尉の許可があれば、その翌日から我が神聖扶桑皇国宇宙軍訓練生として皆を迎え入れよう。ただし、戦闘参加は許可できないけどね。」

「マジで!?やった!」

「いいの?そんなことして?怒られないの、常陸君?」

宮崎兄妹が言った。

「いいってなにも、僕がこの艦隊の司令官だから大丈夫だよ?」

常陸が言った。

「では、まずは大上君のお兄さんに会いに行きましょうか?」

高町が皆の方を向いて言った。

「よし!じゃあまたな、常陸!それとお前、最近ちゃんと休んでるのか?体調崩すからちゃんと休めよ?」

「うん、わかった。ありがと、大上。」

常陸が笑いながら言った。

その言葉を聞いて満足そうな顔をして大上たちが部屋を後にした。




「ほら、ご学友も閣下の休息を望んでいるみたいですよ?」

常陸が座っている椅子の後ろの壁にかかっているカーテンから橘少佐が出てきた。

「うるさい。第一なぜ隠れたんだ?別にいいだろ、見られても。」

「いや、私がいたら皆さん緊張されると思いまして。それに閣下も私がいるとお話難いこともあると思いますし。」

橘少佐が微笑みながら言った。

「なんだ?貴様がいると話難いこととは?」

「何でしょうかね、私も聞きたいぐらいです。」

「はぁ、全く。答えになってないぞ、橘少佐。」

ため息をつきながら常陸が言った。


「申し訳ありません、閣下。お時間よろしいでしょうか?」

ドアの向こうから井上大佐の声が聞こえた。

「いいぞ、入れ。」

「はっ!失礼します!」

「なんだ、橘くんここにいたのか。まぁ良いか。閣下、数日前の戦闘による戦死者のリストをお持ちしました。」

「ああ。」

井上大佐が常陸にリスト表を手渡した。

そのリストの重みを感じながら、リストを捲り一通り目を通した後、常陸は神棚の下にある戦死者リスト専用の棚の中にリストを入れた。

「無念に散った、英霊たちに、敬礼!!」


ザッ!!


常陸、橘少佐、井上参謀が力強く神棚に敬礼した。


「まもなく。第弐艦隊主力部隊との合流地点に到達します!」

艦橋でオペレーターが言った。

「これで、安心して本国まで帰還できますな。」

井上参謀長が言った。

「確かに、セルベリア側も置いてきた艦隊とも合流できると喜んでいると思いますよ。」

橘少佐が宙域図を見ながら言った。

「確かに。まさか高速艦だけで我々の救援に来るなんて、さすがアームストロング閣下ですな。」

井上参謀長が笑いながら言った。

「だが、まだ油断はできない。合流まで警戒は怠るな。」

常陸が司令官席に座りながら、横目で両者を見て言った。

「「はっ!」」

常陸に対し、苦笑しながら簡易な敬礼を送った。


「本艦隊前方!未確認反応多数確認!!」

艦橋にいる全員が緊張に包まれる。


「反応確認!友軍反応です!皇国第弐宇宙艦隊とセルベリア第三艦隊です!」


わぁぁ!っと艦橋が拍手に包まれ、この情報が艦内アナウンスで乗組員に伝えられ、艦内も安堵と歓声に包まれた。


「有軍艦、白鶴より通信です!」

「よし、回線を開け」

橘少佐が言った。

白鶴は、地球に派遣された白鷺に変わって臨時に神聖扶桑皇国宇宙軍第弐宇宙艦隊旗艦を務めていた舞鶴型弐番艦である。

「閣下!ご無事のご帰還、我ら艦隊乗組員一同を代表し…」

いきなり大画面で臨時司令官兼白鶴艦長、林部少将が言った。

「わかったから、その顔を画面から引け。」

常陸が顔を引きつりながら言った。

「こ、これは失礼いたしました!と、とにかくご無事のご帰還何よりです!」

林部少将が敬礼して言った。

「あぁ、私が留守の間よくやってくれた。礼を言う、ありがとう。」

常陸が画面越しに立ち上がり、林部少将に対し頭を少し下げた。

「な!閣下!お止めください!私風情に礼など!この林部、閣下の為、聖皇陛下の為なら!!」

「ふっ、貴様は変わらん奴だな。」

常陸が噴き出して笑った。艦橋に居る一同も同じく笑い、艦橋が笑い声に包まれた。

「それでは閣下、指揮権を閣下に返上いたします!」

「あぁ、任務ご苦労。」

林部少将が画面越しに敬礼し、常陸たちが答礼した。

「指揮権返上に伴い!司令官閣下に総員、敬礼!!」

林部少将が言った後、少将の後ろに控えていた参謀たちが敬礼した。

常陸が答礼して回線が切られた。


前方に艦隊の全艦2000隻が180度回頭して接近し、白鷺や夕月、その他構成艦を包んだ。

ここに、神聖扶桑皇国宇宙軍第弐宇宙艦隊の全戦力が集結した。


「補給艦から物資の搬送急がせろ。帝国との戦闘宙域から出るからといって油断するな。」

「了解!」

「「旗艦より各補給艦部隊へ。物資搬送は1400を持って終了する。第四戦隊の物資搬送を急がせろ。」」

「こちら補給艦翔鯨、了解した。1400までに間に合わせます。」

「了解」

艦橋オペレーターと補給艦部隊との通信が艦橋内で続いている。


「偵察機を周囲へ展開はどうなっているか!このまま素直に帰してくれるとは限らない。敵機の襲来の可能性がある。警戒を怠るな!」

常陸が各オペレーターに対して言った。

「聖衛の状況は?防衛線は無事だろうな?」

常陸が林部少将と再び回線を開き、防衛線の情報について報告を受けている。

「はっ!エルトリアは15艦隊を投入してきましたが、なんとか持ちこたえています。」

「15艦隊だと?なんて大規模な攻勢か。くそ、自治領域から兵を送ったな。」

常陸が言った。

「確かに大軍ですな。わがセルベリアもシュバルツランド戦線とグラン=グリード戦線で手一杯なところがありますし、援軍は出すのは難しいでしょう。わが艦隊にはエレス宙域の防衛が命ぜられておりますので、わが艦隊と卿の第弐艦隊と合わせて5000ですか。」

アームストロング大将が言った。

「しかし、神雷で敵艦隊も相当な痛手を負っているはずです。戦力は何とか互角になるかと思います。まずは、補給を。その後全速でエレスへ向かいます。よろしいですね?」

常陸がアームストロング大将に言った。

「了解しました。それではまた後ほど。」

アームストロング大将と常陸、林部少将の通信が終わった。

「閣下、エルトリアがここで引き下がるはずがありません。早急に聖衛へ向かうべきです。」

橘少佐が言った。

「わかっている。だが、兵には休息が必要だ。それに聖衛には殿下直参の部隊も配備されているはずだ。そう易々とはやられんよ。」

「殿下直参部隊とは、皇都防衛艦隊ですか?」

「あぁ、だが主力艦隊ではなく機動部隊が派遣されてるようだったかな。」

常陸が顎に手を当てながら言った。

「あの山城大将が陛下をお守りする部隊の派遣を認めるとは、情勢はやはり。」

「そうだな。今の我が国は連邦の援助が無ければ帝国軍の侵攻を防ぎきるのは難しい、閣下もさぞ悩んだだろうな。」

「まぁ、山城閣下は大の連邦嫌いで有名ですから、連邦に頭を下げて更なる援軍を要請するのは、耐えられなかったのでしょうね。」

橘少佐が少し笑いながら言った。

「橘君、上官を笑うのは感心できないな。」


「い、井上大佐…。」

橘少佐が顔を引きつりながら振り向くと、井上大佐が何かのファイルを片手に持って立っていた。表情は言うまでも無い。

「橘少佐、後でお茶でも飲みながら、今後の皇国について語り合いましょうか?」

「い、いえ。私は、閣下と今後の作戦についての議論の最中でして…」

「ん?そんな話していなかったぞ?作戦は井上大佐と議論済みだから、安心して大佐から教鞭を受けてくるといい。」

「(な、閣下!助けてくださいよ!)」

橘少佐が小声で言った。

「(さっき盗み聞きした罰だ、久しぶりに怒られてこい。)」

常陸が少し笑いながら小声で言った。

「(そ、そんな~)」


「では、閣下。少しの間、少佐をお借りします。さぁ、いくぞ橘くん。お茶ぐらい淹れてやろう。」

「は、はい…。」

その後、橘少佐は大佐の私室で久しぶりに大佐の皇国史観を叩き込まれたという。


<白鷺艦内・食堂>

「絶対ダメだ。」

大上准尉が田上少尉と食堂で食事をしながら言った。

「何でだよ!兄貴!俺たちだって何か役に立ちたいんだよ!!」

「だったら、食堂の手伝いでもさせてもらえばいいだろ。第一、艦橋勤務に偵察機見習いなんて。艦にとってどれだけ重要な任務かわかってるのか?」

大上准尉が弟の顔を見ながら言った。

「それじゃあダメなんだよ!今まで守ってもらってばっかで!俺たちだって戦える!ロボット操作技能検定だって特一級持っているし!」

貴明が兄である准尉に言った。

「戦争をゲームと一緒にするな!!」

食堂のテーブルを大上准尉が拳で強く叩いた。

「そうやって、月の戦いでも俺より操縦検定が二級や三級も高かった仲間がたくさん死んだんだ!!お前が戦場に出て勝てる相手じゃない!無茶を言うな!」

場の空気が凍りついた。

「大体、常陸卿だったから良かったものの、もし違う司令官だったら門前払いだったぞ?それにお前たちをそんな危険に晒すわけにはいかない。絶対ダメだ。」


ダン!!


「もういい!この馬鹿兄貴!!」

大上が食堂の椅子を蹴って食堂を出て行った。

「ちょ、ちょっと貴明!待ちなさいよ!」

雨宮が一回困った顔で兄である大上准尉を見て、貴明の後を追いかけて行った。

その雨宮の後、他の4人も雨宮続いて気まずそうな顔をして食堂を後にした。


「大上さん、ちょっと言いすぎじゃ。まだ相手は16、7ですよ?」

「すみません、少尉。ですが、あの子達を危険に晒すわけにはいかないんです。」

「まぁ、その気持ちはわかりますが。ですが、あの子達も凄いですね?」

「ん?何がですか?」

大上准尉が言った。

「いや、だって今回の一軒、捉え方によっては直訴行為ですよ?閣下にそんなことできるなんて、いやぁスゴイ!」

田上少尉が胸の前で腕を組みながら言った。

「それ、褒めてるんですか?」

「えぇ、もちろん。」

田上少尉が笑いながら言った。


ウィーンウィーンウィーン!!


<白鷺艦橋>

「レーダーに感あり!本艦隊左舷前方!未確認機反応確認!」

艦橋オペレーターが振り返って言った。

「閣下、艦隊の補給完了まで、まだおよそ20分かかります。」

橘少佐が言った。

「わかっている。第一・第二防衛隊を緊急発進させろ!全艦隊に通達!総員、対空戦闘用意!」

常陸が言った。

「「了解!旗艦より全艦隊へ!全艦、対空戦闘用意!第一・第二防衛隊は直ちに発進!未確認機迎撃に当たれ!」」

「「総員、対空戦闘用意!繰り返す!総員、対空戦闘用意!」」

白鷺艦内でアナウンスが響く。


<同時刻白鷺艦内・食堂>

「大上さん!」

田上少尉が大上准尉の顔を見て言った。

「我々もドックに行きましょう!」

「はい!」

大上准尉と田上少尉が食堂を走って出て行った。


<白鷺艦橋>

「目標、本艦隊警戒宙域になおも接近!速度を上げつつ接近してきます!」

水晶機構は艦隊にものすごい速さで接近してくる機影を捉えていた。

「艦隊進路維持!防衛隊の発進はどうか!?」

常陸がレクルス管制官に言った。

「既に母艦高山より第一・第二防衛隊が発進しています。接触まで約3分!」

「偵察機より入電!本艦隊左舷後方、距離150000にエルトリア艦艇らしき艦艇を多数確認!レクルスの発進を多数確認しました!」

「レクルスのみでの攻撃か、帝国らしくないな。」

「閣下。こちらもレクルスを。」

「わかっている。第一・第二宙母部隊に通達!第一から第二十三レクルス隊発進!第一から第六隊は本艦隊左舷前方の敵を、その他の部隊は艦隊後方からのレクルス襲来を防御!」

「「了解!!」」

第一・第二宙母部隊に通達され、レクルスが多数発進した。


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