第拾肆話 Break〜〜脱出〜〜
ようやく本編です。長らく大変お待たせ致しました。よろしければ読んでいって下さい。
「全艦、大気圏離脱を確認!各艦艦隊編成を整えよ!」
「敵艦隊確認!敵レクルス隊接近!数15!その後方に駆逐艦隊群!」
「各艦全速で離脱!敵機に構うな!ワープ航行可能宙域まで振り切れ!!」
神聖扶桑皇国宇宙軍第弐艦隊旗艦白鷺の艦橋内で声が響いた。
「レクルス接近!振り切れません!」
「くっ!!やむ終えん!対レクルス戦闘用意!!各艦速度を維持しつつ応戦せよ!」
「全対空迎撃砲展開。レパシブルフィールド展開!」
旗艦白鷺から出た緑色の光が白鷺を包んだ。
「全艦撃ち方始め!!」
地球連邦派遣護衛艦隊群は全艦隊数20隻と、侵攻してきた大エルトリア帝国第三艦隊の6分の1の戦力しかなく到底適うものでは無かった。
「閣下!まもなくワープ航行可能宙域に到達します!!」
「駆逐艦舞月被弾!損害軽微!レクルス三機、本艦に接近!墳進弾来ます!数14!」
「対空砲で打ち落とせ!」
ドドドドドドッ!っという音と共に砲火が墳進弾に集中した。
だが、撃ち漏らした3発が白鷺のシールドに直撃した。
「うわぁぁあ!」
轟音と共に艦が激しく揺れ、艦橋にいたクルーが叫んだ。
「くっ被害報告!」
白鷺艦長九条隆文少佐が言った。
「本艦に損害無し!航行可能です!」
「閣下!後方七時の方角より敵駆逐艦隊群接近!攻撃来ます!!」
「ワープ航行可能宙域に到達!閣下!」
「ダメだ!敵駆逐艦群をやらねば狙い撃ちになる!」
「舞鶴、翔鶴、夕月に通達!我に続け!他の艦艇はワープ航行準備に入れ!それまで時間を稼ぐ!艦長、頼んだぞ。」
「了解!!」
オペレーター達が各艦に指令を出した。
「各艦会頭、これより敵駆逐艦隊群を迎撃する!!各艦敵艦と一定距離を保ちつつ攻撃を開始せよ!」
常陸が各艦に指令を出し、白鷺、舞鶴、翔鶴、夕月が会頭し敵駆逐艦隊と対峙した。
「各艦主砲照準!目標!敵アイス級駆逐艦隊群!!」
各艦の主砲塔が前方の敵艦隊に照準を合わせ、重巡洋艦2隻を後方に展開し前衛に駆逐艦12隻、巡洋艦3隻を展開した敵哨戒艦隊に決戦を挑んだ。
「敵艦隊、本艦隊の射程圏に入ります!」
「…よし、全艦撃ち方始め!!」
常陸が指揮官専用席から立ち上がり、各艦に指令を下した。
「主砲、てぇぇーーーー!!!」
宇宙戦闘母艦白鷺、夕月、宇宙戦艦舞鶴、翔鶴による主砲砲撃が開始され、それに応戦して敵艦隊の砲撃も開始された。
白鷺、夕月から放たれた92cmレーザー砲により前衛の敵駆逐艦2隻が轟沈した。
「敵駆逐艦2隻撃沈!舞鶴、翔鶴、夕月の損害無し!」
「レクルス群さらに接近!」
「ミサイル発射管全門カスタムザー装填!」
「装填完了!」
「てぇぇーー!!」
白鷺から発射された対レクルス用広域拡散攻撃ミサイル「カスタムザー」は、皇国が独自開発した最新兵器の一つで、一発のミサイルの中に多数の小型墳進爆雷が内臓されており、付近の敵を制圧する能力があり、その効果は絶大であった。
『敵、旗艦白鷺よりミサイル発射を確認!』
『ちっ!死に損ないの分際でぇ!レクルス部隊に打ち落とさせろ!』
『全レクルス部隊へ、敵ミサイルを打ち落とせ!』
オペレーター達がレクルス部隊に指令を下した。
『了解!』
一斉にレクルス群がカスタムザーを迎撃した。
ミサイル撃墜の轟音と共に無数の小型式亜号墳進爆雷が敵レクルスを襲った。
『!?なんだぁ?あの小さな光は、ん?うわぁぁぁあああ!!!』
無数の亜号爆雷が機体に突き刺さり、爆発した。
『うわぁぁ!なんだよ!!まだ、死にたくねぇ!!うわあああ!!』
レクルス隊がビームライフルで亜号爆雷を迎撃したが、全部を打ち落とせる筈もなく、次々と直撃し撃墜していった。
『ミサイル攻撃により、レクルス部隊全滅!駆逐艦5隻大破戦線より離脱します!』
『なんだと!?』
エルトリア第53哨戒艦隊指令チュニス准将が驚きの表情で言った。
『閣下!レクルスを失った我が艦隊に戦艦に立ち向かう力はもうありません。撤退命令を!』
『敵戦艦後退を開始!その後方の駆逐艦並びに巡洋艦部隊の後方にワープゲート反応多数確認!』
『ほれ、見ろ!奴等はここから逃げ出すつもりだ!このままみすみす見逃す訳にはいかん!全艦、交戦を続けよ!わが帝国軍の力を奴等に見せつけよ!!』
『(ここでまた手柄をとれば、私の昇進は間違いない。もしかすると皇帝陛下から爵位の叙位があるかもしれん!そうすれば…。なんとしても、やつらを討たねば!)』
チュニスは心の中でその野心を燃やし冷静な判断が出来ない状態にいた。
「敵駆逐艦隊群、尚も接近してきます!」
「くっ!今ので怖気づいて逃げ出してくれたらありがたかったが、仕方あるまい。艦長!草薙砲を使う。準備に入れ!」
「しかし閣下!それは、まだ…。」
「今使わずして、いつ使うというのだ!いいからやれ!」
「了解しました。草薙砲発射準備!目標!敵駆逐艦隊群!!」
「各艦に射線上より退避勧告!白鷺の後方に下がらせろ!」
白鷺の艦首部分に巨大な砲が姿を現した。
「エネルギー充填開始。出力75%」
「総員、衝撃に備えよ!」
その異様な光景は敵艦隊も捕捉されていた。
『なにをしようというのだ。戦艦3隻を下がらせ、戦艦1隻で我が艦隊と戦うだと!?なめるな!戦艦といえど敵は1隻だ!砲火を集中しろ!』
『旗艦から全艦隊へ、前にでた敵戦艦に砲火を集中せよ。』
敵艦隊による一斉攻撃が開始された。
「敵艦主砲来ます!到達まで約7秒!!」
「草薙砲発射準備完了!」
「よし、草薙砲発射!てぇええええええーーーーー!!」
白鷺から放たれた巨大な粒子ビームが敵艦隊の攻撃をなぎ払い、神々しい光と共に艦隊を襲った。
『高エネルギー体接近!!』
『回避ぃ!!』
『ダメです!間に合いません!うわぁぁぁああ!!!!』
『くそぉぉぉ!!こんなところでぇぇぇぇえええ!!!』
チュニスの雄叫びとともに、敵艦隊が光の中に消えていった。
「敵艦隊消滅を確認。艦の損害なし!」
「よし、白鷺反転!ワープ準備!本宙域を離脱する!」
「了解!」
「艦隊後方に新たな敵反応確認!これは…!コンキスタドール!?エルトリア第三艦隊主力艦隊群です!!」
「くっ!やつらに取り付かれたらおしまいだ!まだ飛べないのか!?」
「ワープゲート展開まで約20秒!」
「後方、15000まで接近!」
「敵ハウゼン級よりレクルスの発進を多数確認。本艦隊に向け接近してきます!!」
「ワープゲート展開完了!ワープ準備完了!」
「よし!全艦ワープ航行開始!!」
常陸の指令により、一斉に全艦がワープインした。
「機関全速!白鷺、ワープイン!」
緑色の光の中にその巨艦は姿を消した。
『敵艦隊、ワープイン。目標の反応完全に消失しました。』
『くそっ!なんということだ!皇国公爵を取り逃がすとは!…っふ、まあよい。これでガイアはわが帝国の手に堕ちた。また帝国の全銀河統一の夢が一歩前進したのだ。今度こそ、あの憎きセルベリア連邦を討ち、それに組する扶桑皇国を討ち我が帝国が全銀河を支配するのだ。ふふふっあはははは!!!』
『この戦闘をもって、ガイア占領作戦の終了を宣言する!諸君らの忠義に満ちた働きに、皇帝陛下はさぞ喜ばれるであろう!!大エルトリア帝国に栄光あれ!アーラーハイゲル、エルトーリア!!!』
『アーラーハイゲルエルトリア!!アーラーハイゲルエルトリア!!アーラーハイゲルエルトリア!!…』
大エルトリア帝国宇宙軍第三艦隊提督ヘンデル・エル・ヨハネスブルクの全軍に対する演説により、作戦の終了が宣言され、大エルトリア帝国軍の前に星暦2153年(西暦2012年)地球連邦は降伏した。だが、この強大な帝国に立ち向かった地球の姿勢、特に惑星の1地域に過ぎない小さな島が大帝国と最後まで戦った姿勢は、他の中・小惑星国家は勇気づけ、エルトリアの皇国侵攻作戦は大幅に遅れることとなった。