第拾壱話 Option~~選択~~
大変お待たせ致しました!!
次回からは、月2~3回のペースで更新していきますので、よろしくお願い致します!!
西暦2012年8月15日に勃発した地球・エルトリア間の偶発的紛争は地球側の徹底抗戦姿勢により戦火は拡大。一時は撤退するに思われたエルトリア帝国軍はその策により、地球側に大攻勢を仕掛け、地球連邦宇宙軍月面防衛艦隊を壊滅させ、同艦隊司令長官のクリス・アストレイ中将を含め大量の戦死者を生むという結果をもたらした。シュウ・ヒイラギ司令率いる地球連合艦隊は残存艦を集め、エルトリア軍の包囲網を巧みに突破、地球上空まで撤退しISSの付近に集結し、エルトリアとの最終決戦に向け準備を整えていた。一方、エルトリア側は占領した月軌道上に集結していたが、戦闘終結から24時間以上経っても動きを見せなかった。
そのころ地球連邦政府では、連邦市民に現在、地球が立たされている状況を公表すべきという議論が始まったが、政府内は責任の擦り付け合いとなり議論は進まず、もはや議会も本来の機能を完全に失っている状態であった。
そして…。ついに、その時がやって来た…。
「申し上げます!エルトリア軍が動き始めました!!真っ直ぐ地球に向け侵攻してきます!!」
地球・某国防衛総省内
「くそ!とにかく防衛体制に入れ!地球連邦軍総動員だ!!」
「しかし、閣下!もはや当方の宇宙艦隊はほぼ壊滅状態です!」
「地球連合艦隊と残存艦がいるではないか!?」
地球連邦防衛相が言った。
「しかし、閣下。地球連合艦隊は約65%が先の戦いで喪失し、被害担当艦となった旗艦クイーン・オブ・エリザベスは地球上空で操舵不能となり日本近海に墜落し、戦闘不能状態。残存艦を合わせても20隻弱ではもはやエルトリアの侵攻を防ぐことは不可能です…。」
「ならば、本土決戦だ!核で奴等を消し去ってくれる!!」
「正気ですか!?そんなことをすれば地球は死の灰が覆う死の星になってしまいます!」
「ならば、どうするというのだ!降伏しろとでも!?」
「それしか道はありません。私にはそれしか…」
「もうよい!!下がれ!敗北主義者に用はない!!誰か、この臆病者をここから叩き出せ!!!」
数人の兵士が駆け寄り参謀長の腕を掴み、司令室から連れて行った。
「全軍に通達!!全軍第一種防衛体制に入れ!!」
「「「了解!」」」
司令室にいたオペレーター達が一斉に地球各地にある連邦軍基地へ指令を送り始めた。
時間は遡ること10時間。
日本国首都東京・某学園
「朝のニュースで見たんだけど、日本の近くに隕石が落ちたらしいぜ~!」
「あ~知ってる~!あたしもニュースで見た!」
「常陸君は見た?今日のニュース…常陸君?聞いてる!?」
「ん?あぁ、ごめんね聞いてなかった…。」
「どうしたの?今日、具合悪そうだね?先生呼んで来ようか?」
「ううん。大丈夫ありがとね。一応今日一時間目で早退する予定だし…。」
「えっそうなの?家庭の事情ってヤツ?」
「うん。まぁ、そんなとこかな。」
雨宮と常陸の会話に大上が割って入った。
「あんまり首突っ込むなよな。常陸が迷惑してんだろ。」
「何よ!私はただ心配して…」
「なんでも心配すればいいってもんじゃねえだろ。人にはそっとしていて欲しいときぐらいあんだよ。気付けバカ!」
「何よ!バカ明のくせに!!」
そう言うと雨宮は自分の席の近くにいた女子グループの中に消えていった。
「ったく。ごめんな、悪気がある訳じゃねえんだ。ただ、ちょっとお節介が過ぎるだけで、その…」
「分かってるよw本当に仲がいいんだね。」
「そ、そんなんじゃねえよ。ただ」
「ただぁ~ww」
常陸が机に肘をついた状態で前の席に後ろ向きに座っている大上の顔を覗き込むように言った。
「~~っ!なんだよ、元気じゃねえか!心配して損した!」
そう言うと、大上は怒って前を向いてしまった。
「(素直じゃないなぁ~。早く伝えないと、一生伝えられなくなるかも知れないというのに…)」
「ねえ、大上。」
不機嫌そうに大上が振り向いた。
「なんだよ、また嫌味かよ。」
「あはは、ちがうよwちょっと相談があって。」
とたんに、大上の表情が明るくなった。
「なんだよ、相談ってww」
「仮定の話なんだけど、もし、地球が宇宙人の侵略の危機に晒されていて、僕が一緒に地球を脱出しようって言ったらどうする?」
とたんに、大上の表情が暗くなった。
「やっぱ、早退したほうがいいな、お前。朝起きるときベットからおちたの?」
あからさまに、大上の表情が引きつっていた。
「うっさい!やっぱ、君になんか言うんじゃなかった。」
常陸は机に腕を枕にした常態にして顔を隠した。
「まぁ、でも」
「ん?」
大上が何かしゃべったのを聞いて常陸が顔を起こした。
「まぁ、でも。仮にそんな状態になったら、常陸は俺だけ助けるのか?」
大上が窓の外を見ながら言った。
「いや、自分の周りにいる全ての人命を全力で助ける。」
背筋をピンと伸ばして、真顔で真っ直ぐに大上を見て言った。
大上はそのいつもとは別人みたいな彼の姿勢を見て面を食らったような顔をした。
「おいおい。なんか、今日のお前やっぱ変だぞ。まるで、この前日本史の授業に出てきた軍人みたいだぞww」
大上が笑いながら言った。
「あはは、ごめん。冗談だから気にしないでwやっぱ、具合悪いみたいだ。」
常陸が苦笑いしながら言った。
そして、一時間目が始まったがあっという間に時間が過ぎ、一時間目が終わりそうになった時それは起こった…。
「はーい、じゃあ今日の授業はここまで!仮定法の宿題出すから、次の授業までにやって来るように!」
「えぇ~~!!」
「えぇ~~じゃない!ったく、これくらいできるだろ…」
ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ
何処かで携帯が鳴る音がした。
「おいおい。誰だ、携帯鳴らしたヤツは!授業中ぐらい携帯切っとけ!」
珍しく、常陸の携帯が鳴っていた。すぐさま立ち上がって常陸が謝った。
謝罪後、残り時間が自習時間になったので、すぐさま携帯の確認をした。その内容に常陸は驚愕した。
「(地球軍壊滅、だと!?そんな、それでは我が軍が到着する前に…。)」
さらに、メールが届いた。
「(地球からの即時撤退命令だと!?皇国議会決定!?なんだそれは!!)」
さらに、メールが届く。
「地球連邦が連邦市民に発表するだと!このタイミングで発表などしたら、大混乱になる!それさえも分からないのか!!?」
常陸が教室に響き渡るような声で言った。
「お、おい。常陸君!?大丈夫でございますか!?」
大上が顔を引きつりながら言ったが、常陸は気にしていない。
ピ、ピ、ピ
常陸が立ち上がったまま、携帯式無線通信機で副官の橘少佐に連絡した。
もちろん自習時間とはいえ、授業中である。先生はいつもは品行方正な教え子の変貌した姿に放心状態になっていた。
「閣下!」
橘が通信回線が開いた瞬間に言った。
携帯式無線通信機は通信モードにすると、映像を3Dみたいに立体的に出現させることができ、大きさはおよそ黒板の半分まで展開できる。常陸はそれをフルに使い通信していた。
それを見た学友たちは時間が止まったように常陸を見ている。
「状況は!?ガイア軍の様子はどうなのだ!!」
「は!状況は最悪です。エルトリア帝国軍は地球連合艦隊を撃破し、地球降下に向け準備を始めています。閣下!脱出するなら今しかありません!」
その時。
グイーーン!!!という音と共に緑色の円形の光が数個開いた。
「くそ!来たか!!」
呆気に取られていたクラスメイト達が我に返り、教室の窓から空を眺めた。もちろん他の教室の生徒や通りにいた人々や、東京中の人々が同時に同じ方向を見た。そして、我が目を疑った。その光の中から見たことのないような形の物体が姿を表したのだ。
「なんだよ…あれ?おい、常陸!!」
大上が振り向いて言った。
「エルトリア帝国宇宙軍アイス級駆逐艦部隊…別名・辺境の征服者…。」
「エルトル?アイス?何言ってんだ!!ふざけるのもいい加減にしろ!!」
ギューーーーン!ドォォォン!!
ワープアウトしたアイス級6隻中の1隻から緑色の光がでたと思った刹那、学園5階から薄っすら見える高層ビルが立ち並ぶ都市が、まるで火山が噴火したかのような噴煙と炎に包まれ、東京はその轟音に支配された。
「…なんだよ、あれ?」
生徒を含め、先生、その光景を見ていた人々が同じことを思っただろう。
「閣下!閣下!!」
その声で常陸は我に還った。
「閣下!エルトリアは大型艦による大規模侵攻ではなく、駆逐艦部隊による侵攻に変更した模様です。すでにアメリカ・中国・ロシア・欧州に侵攻が確認され、アフリカ方面・オセアニア方面には出現は確認されていません。」
「まずは、頭を潰すということか。日本の被害状況は!?」
「都市部に対する攻撃は脅しです。ですが、すでに新宿は壊滅。次の目標はおそらく政府機関を狙うかと…。」
「直ちに、白鷺に戻る!全艦隊発進準備だ!急げ!」
「はっ!了解しました。それと閣下。こんなこともあろうかと兵を閣下の近くに伏せてありますので護衛に。」
「ふ、用意がいいやつだ。分かった。出てきていいぞ!!」
常陸が大声で言った。
数秒後、何処にいたのかと不思議になるくらいの人数の兵が教室の廊下に集合し、隊長らしき人物が常陸まで駆け寄り敬礼した。
「神聖扶桑皇国宇宙軍第弐艦隊所属独立制圧部隊第一小隊隊長氷室龍之介大尉であります!!閣下を護衛に参りました!!!」
常陸が返礼した。その光景にもクラスメイトを始め先生の放心状態になっていた。
「任務ご苦労。よろしく頼む。」
「常陸…お前、本当に…。」
「大上、話は後だ。今は黙って自分に付いて来てくれ。皆も、お願いだ!このままここにいたら死んでしまう!だから…。」
常陸が必死な顔で言った。
「そんなこと言ったって、信じられるかよ!お前らも!わけわかんねえよ!」
その他の生徒達もそんな感じであった。生徒達は突然出現し攻撃してきた物体よりも、常陸のほうがより異形のものに見えていた。
「とにかく、家に帰ろうよ!あたし怖い。」
「そうだな!帰ろう!!」
そう誰かが言うと、悲鳴と共に教室から生徒が逃げるように出て行き、その流れは校舎全体に広がり、校門には生徒が殺到した。数人を除いては。
「おい、大上!って、うわ!!何だこいつら!常陸何してんだ!危ないからお前もこっちに来い!!」
隣のクラスの友達の御坂優と宮崎卓也が逃げ遅れたのか、やって来た。
「あっ!ここにいた!てか、何この人たち!!」
またもや、隣のクラスの宮崎優香と高町奈央が二人を追ってやって来た。ちなみに、卓也と優香は双子の兄弟である。
「閣下。時間がありません。お急ぎください。」
氷室大尉が言った。
「皆、お願いがある。自分を信じて付いて来てくれ!むちゃくちゃなことを言ってるのは分かってる!だけど、このままここにいたら皆死んでしまうんだ!だから、だから…。」
常陸が下を向きながら必死に言った。
「無理だな…」
大上が言った。
「っ!」
常陸が下を向いたままでいる。
「って、普通のやつらは言うだろうな!だけど、俺はお前を信じるぜ!なぁ、お前ら!!」
大上が教室にいた雨宮・御坂・高町・宮崎兄妹に言った。
普通の人なら真っ先に否定するが、ここにいた学生達は常陸の数少ない友達にして、常陸の理解者。親友と呼べる人たちだった。
「あぁ、俺も付いていくぜ!面白そうだしな!」
御坂が言った。
「私も付いていく行くよ!」
雨宮が言った。
「「まぁ今下に行っても帰れそうにないし、それに面白そう!」」
宮崎兄妹が言った。
「私も常陸君のこと信じる。」
高町が言った。
「だってよ。俺達、常陸についていくぜ!」
「ありがとう、みんな。」
常陸が笑いながら言った。
「宜しいですか?閣下。」
氷室大尉がそっと常陸に言った。
「あぁ、この人たちも司令部まで護衛してやってくれ。みな、よろしく頼む!」
皇国四大公爵が一人の突然の発言に数秒小隊の隊員は戸惑ったが、みな顔をそろえて敬礼した。
「「「「了解!!!!」」」」
「それじゃあ、皆付いて来てくれ!」
ここに、後に奇跡に例えられる脱出作戦が開始された。