第拾話 Warfare~~交戦~~(3)
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月上空・月面最終防衛線
「艦隊後方、フォーファイブより高エネルギー反応多数確認!!」
「何だと!!」
レクルスで敵機と格闘戦をしていたアイクも見えていた。
「何だ!あのリングは!次々に開いていくぞ!」
「隊長!!敵機がエリザベスに向かっています!」
「くそっ!次から次にうじゃうじゃと!!エリザベスを援護する!俺に続け!!」
「「「了解!!」」」
スタンフォード小隊は10機で編成されていたが、すでに6機を落としていた。
「確認しました!!敵エルトリア第三艦隊主力部隊です!!」
「そんなこともうわかっている!」
「高エネルギー反応!攻撃来ます!!!」
オペレーターが振り返って、ヒイラギに言った。
「くっ!!エネルギーフィールド最大!!全艦回避運動!!!」
地球連合艦隊を構成している主力艦のエリザベス級とマイヅル級宇宙戦艦は、唯一シールドシステムを搭載しており、シールド展開速度は火力を重視しているエルトリア製宇宙戦艦よりは2倍以上早いものだった。
「ダメです!!回避間に合いません!!!」
後方にワープアウトした敵アイリス級3隻より主砲が放たれた。
ビィーンという弾く音と轟音が3度鳴り響いた。
そして、最後に放たれたアイリス級の主砲がエリザベスのエネルギーフィールドを突破し、艦後部第四主砲塔を吹き飛ばした。
「「「うわぁぁああ!!!!」」」
艦全体が激しく揺れ、艦橋にいる士官達が叫んだ。
「くっ被害報告!!」
「後部ミサイル発射管破損!後部主砲第五主砲塔を残して応答なし!!ただし、機関部は損傷軽微!航行可能です!」
「艦隊の被害状況は!?」
「マイヅル級戦宙母艦ハリス、マルタ、オダワラは健在!ワシントン級ハリマ、ニューヨーク、ガルーダのシグナルを確認!!後はダメです!位置特定不能!!」
「くそっ!!艦隊司令部からの連絡は!?」
「っ!ダメです!戦闘の影響で通信ができません!!」
「月艦隊ともか!?」
「はい!全回線を使って交信を試みましたが、いずれも応答ありません!!」
「くっ!このまま交信を続けろ!」
その時、月艦隊では戦線が崩壊し各個戦闘を行っていた。
「ヴィクトリア、ウェールズ、フィラデルフィアのシグナルを確認!!後はプトレマイオスの通信圏外です!!」
「くそっ!たった3隻しかいないのか!?こんなところで私は!!」
クリス・アストレイ中将が悲痛な顔で言った。
「閣下!もはやこれまでです。撤退しましょう!」
プトレマイオス艦長のシュナイダー中佐が言った。
「何処に帰れというのだ!月面基地に撤退したところで状況は何もかわらん!敵を招き入れるだけだ!!」
「しかし閣下!!ここでみすみす艦を沈めていては皇国軍が来るまでに地球が占領されてしまいます!!」
「我々は何の為に戦っているのだ…。国民は我々の存在すらも知らず、このような戦争が起こっているという事実も知らず…」
「閣下!!撤退命令を!!!閣下!!」
「我々は…」
「敵艦接近!数13!!艦長!!」
「全艦後退!本宙域を離脱!!撤退する!!損害の大きい艦から優先して離脱させろ!!」
シュナイダーがオペレーターに対し言った。
「敵艦主砲、来ます!!」
「くそ!!回避ーー!!!」
「ダメです!!操舵不能!!うわぁーーー!!!」
「私は…。父さん…」
それが、クリス・アストレイの最後の言葉であった。