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溜息シンデレラ 中編

その日以降、おかしな契約を結んでしまった魔法使いは、連日足繁くエラのもとへやってきた。

その足取りは、鳥の羽でも生えてるかの如く軽い。

なんせ国一番の美人と呼ばれるエラと一緒にいられるのだ。

浮かれないほうがおかしい。


だけれども一つ問題があった。

毎回エラの相談事は、どうすればエラの想いが家族へ伝わるのかだけであった。

悩みを解決すれば、最も自身と別の会話もしてくれるのではないかと考えて、思いつく限りのアイディアを出す。

だが、全てエラの「デモダッテ」で却下になってしまう。

きりがないので、強引に家族の話がでなさそうな話題を振ってみる事にした。

例えば、「エラが好きな食べ物は・・・」と話をふる。

けれど、返答は全て「継母が作ってくれた〇〇で~」と必ず家族の話に持っていかれてしまい、最終的にエラの相談事に戻るという負のループであった。


今日もいつものように、エラの家へやってきたが、話題をいつもの相談事だった。


魔法使いは、連日エラと話すうちに、そもそも今回の舞踏会が諸悪の根源ではないかと思い始めていた。

これさえなければ、エラがこんなにも悩むことはなかったのではないかと。

そう!全て舞踏会のせいだ。

俺がエラと普通の会話ができないことも、上手くアプローチできないことも、全て舞踏会のせいだ!

そう結論付けた魔法使いは、諸悪の根源をエラ自身で蹴散らせればいいのでないかという考えにいたり、エラに舞踏会への参加を勧める。


「もうさ、おめかしして、エラも今から舞踏会へ行っちゃえよ。舞踏会で一番目立って周りを蹴散らせきな」

「えっ、突然何を言ってるのよ・・・家族も望んでいないわよ」

不安そうに言うエラ。

「大丈夫だって!家族の人達、申し訳無さそうに、エラに舞踏会へ連れていけないって言ったんだろ」

「そうです!!」

「であれば、考えられることは一つ!お金がないんだよ」

「えっ?!」

「この家見てると、広さの割に召使いが殆どいないし、皆古ぼけた衣装だろ」

「・・・」

「それにな、噂では、今回の強制出席者は貴族令嬢らしいぜ」

「??」

「エラの父親は商人で今の継母は貴族だから、エラは準貴族ってところだろ?姉達は両親とも貴族だから強制参加をどうしてもしなければならない、お金がないからエラの分までの衣装の準備出来なかったんだろうよ」

「!!」

その考えに至らなかったエラは愕然とした。

そういえば、この家召使いはスポット雇用で、義母も義姉達も家の事をしていたなと。

衣装も自分達で補修しながら着用していた・・・

(私ったら、なんて浅はかな考え方をしていたのかしら)


エラは、この魔法使いの推測こそがきっと真実だろうと胸を痛めた。

更に家族達は言わないが、父親の商船が沈没してしまったせいで継母の私財まで借金返済にあてたことをそれとなく知っていた。

(私ったら、そんな大切な事を忘れていたなんて・・・私に出来ることは一つだけよ!)

決心したエラは魔法使いにおねがいした。


「魔法使いさん!私にお金を下さい」

「はっ?!」

「何でも願いを叶えてくれるんですよね?だったら、私に沢山のお金を下さい!」

「・・・」

「山のようなお金があれば、家族達に私の想いが伝わると思うんです!」

「・・・お金は駄目だ」

「何故です?」

「お金を偽造すると、犯罪者になってしまうだろう!俺は魔法使い協会から魔力を取り上げられ、一生牢獄行きになるんだぞ」

「でも私の家族仲を取り持ってくれるという契約書にサインしましたよね?契約はちゃんと履行してもらわないと。バレた場合は、ちゃんと差し入れしにいきますので」

「おいっ!・・・だが、一つ方法がある。今度の舞踏会用の衣装を用意してやることはできる。俺が使う布はシルクだ。遠い異国の地のものだから、こちらでは知られてないものだ。アクセサリーも一流のものを用意してやる。エラが会場で踊って生地の良さをアピールして、その後に売れば合法的に一攫千金狙えるぜ!俺も魔法使い協会に直訴されないしwin-winだ」


エラは魔法使いの提案を考えた。

どうやらお金は、駄目だか現物支給はいいらしい。

さらに、魔法使いを一回限りで使い捨てするより、今後も呼び出せば、細く長く色々してもらえるだろうと思い、渋々同意するふりをするのであった。


流石、元やりて商人の娘、算盤を弾くのが早かった。


こうして、別の目的で舞踏会へ参加することになったのであった。

善は急げとばかりに、魔法使いは一振り杖を降ると、エラの衣装はたちまち美しいラメ入りドレスに変わった。

首元には大振りのダイヤのネックレス、耳にもお揃いのダイヤのイアリング。

更に靴は精巧なガラスの靴だった。


(確かに・・・これ売れば、暮らしに困らなさそう!)

エラは嬉しくなり、魔法使い抱きつきお礼を言った。

美人に抱きつかれたことなど、生まれて初めてだった魔法使いは、顔まで真っ赤になって固まったのであった。


そして、その姿をこっそり影から見ていたものがいたのだった。


(こ!これは、大スクープだ!)

そうあの記者だった。


だが、独占スクープのはずなのに記者はちっとも嬉しくなかった。

エラを追いかけているうちに、自然と彼女の事を好きになってしまっていたのだった。

だけれども、彼女は貴族で自分は一般的な平民。


所詮かなわぬ恋。


ほろ苦い感情が記者の心を埋め尽くすのだった。


そんな記者を置いて、エラは魔法使いの杖の後ろに乗って、あっさり王城へ向かってしまった。


王城へついたエラは、早速家族を探し始めた。

(それにしても、おかしな雰囲気だわ・・・)

エラがそう思うのも仕方がなかった。

令嬢たちは揃いも揃って、古ぼけた衣装を纏い、ピエロみたいなお化粧をしていたからだった。

ダンス広場で踊るものは誰もおらず、ただ壁に顔を向けて立っていたのだった。

辛うじて前を向いているものを見れば、視線は食べ物の方へ向けていた。

誰一人として、王子の方を見ているものは居なかった。


逆に会場にいた令嬢たちは、エラの姿をみるなりどよめき安堵した。

自分達も見惚れるぐらい美しい衣装を纏った、とびきりの美人がやってきた。

この人生贄になるために来てくれたのだと思うと、皆心の底から、エラの勇気に拍手喝采するのであった。


諸々の事情を知らないエラは、急に令嬢たちが自分の方を拝むように見てきて、頭の中にはてなマークがうかんだ。


(これはいったい・・・)


そう思っていると、王子と思われる人がやってきた。

やけに綺羅びやかな衣装を身に纏い、これでもかと言わんばかりに、スベテノ指に大粒の指輪を嵌めていた。

図体はずんぐりむっくりしており、お世辞にも世間が想像する白馬の王子とはかけ離れていた。

(街で出回っていた王子の肖像画は、100倍美化されたものだったのね・・・)

ちょっと残念に思うエラ。

そんな事を考えていると、王子にダンスを誘われた。

(この体格で踊れるのかしら?)

内心不思議に思いながらも、ドレスの広報として活用する気満々のエラは、快く誘いに応じた。


美しいシャンデリアの灯りのもとで、二人は一緒に踊る。


鳥の様に軽やかに踊るエラ。

モタモタと踊る王子。

対象的な二人だった。

エラは王子に気を遣うことなく、これみよがしに絹がもつ光沢をシャンデリアに照らさせて観衆に見せつけた。

エラほどの腕になれば、パートナーがいなくとも、素敵に踊れるのだ。

そう、エラは途中から王子の腕を取る素振りを辞め、1人くるくる踊っていた。

最後だけ王子に合わせる風をして、ダンスは終わった。 

会場はエラの見事な踊りっぷりに、拍手と歓声に湧く。

エラへの拍車だというのに、勘違い王子は自らのダンスに対しての拍手喝采と受け取った。

手まで上げて、観衆に拍手はもういいぞと拍手を止めるふりをする。

その隙に、エラは観衆の中からぐいっと腕を引っ張られた。引っ張った相手は、継母と義姉であった。


三人はどこから持ってきたか知らないが、布をエラに被せると、慌てて会場を後にした。

その際、エラはガラスの靴を落としてしまうのだが、それに気づかず開場をあとにする。

帰りの馬車の中で、そんなに自分達との暮らしが嫌なのかと、三人はエラに問うた。


エラは驚いた。

まさか、そんな事を言われるとは思っても見なかったからだ。

慌ててことの発端になった経緯を話した。

とはいってもさり気なく、魔法使いに唆されてという隠し味を加えておいた。

最終的に、自分もとっくにこの家族の一員だと思っていること、そしてお金に困っている我家の為に、なにかしたかったと伝える。

その話を聞くなり、継母、二人の義姉は号泣。

そして、彼女らは両腕を広げた。


これは、あの時と同じ場面!

(今回は間違えないわ!)

エラは、迷うことなく三人の胸へ飛び込んだ。

狭い場所の中で、長年に渡るエラの憂いが解消された瞬間であった。


その後、冷静になったトレメインは、家に到着後、エラに即魔法使いを呼び出すように頼んだ。


エラは早速魔法使いから渡されてたベルを鳴らし、本人を呼び出す。

「エラ〜もう終わったのか?」

能天気差満載の声で姿を表した魔法使い。

その姿をみたトレメインは、突如魔法使いに掴みかかった。

「貴方ね!情報収集はちゃんと遣りなさいよ!お陰で、うちのエラちゃん、このままいくとあんな王子と結婚させられちゃうじゃない!あなた責任取りなさい!!」

といたくご立腹するのであった。

「はっ?・・・」

「あら?私が知らないとでも思ってるの?魔力が使える人は、どこの国においても、上位階級の貴族と相場は決まっているのよ」

「そこじゃなくて、あの舞踏会、王子の結婚相手探しだったのか?俺はただの交流会との報告を聞いて・・・」

「貴方上流階級の癖に、そんなに情報に疎くてどうするのよ」

「・・・・」

「まぁいいわ!エラちゃんを誑かして舞踏会へ参加させた挙げ句、あの女にだらしなく、品の欠片もない王子が、エラちゃんを見て探さないわけないじゃない!!あんな奴に比べたら、貴方のほうがマシよ、マシ!明日朝一番に家に迎えに来てくださるわよね。教会で入籍だけですませちゃうわよ」

「だが・・・」

「何よ?貴方うちのエラちゃんが不満なの?!!」

「違っ」

「じゃぁ、決定ね!」


そう伝えると、トレメインは用は済んだとばかり、さっさと魔法使いを家から追い出したのであった。

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