表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おれたち付き合ってますがなにか?  作者: ゴルゴンゾーラ
サプライズではないサプライズ
82/83

第82話_穏やかな日々

「上原さん、起きてくださーい」

「やっぱ、俺には無理......寝ていたい......」


土曜日の朝、6時。

明が俺の肩を揺さぶる。

俺は相当に寝起きが悪い。

だが明はしつこかった。


無理やり、上半身を起こされる。

「ほーらー、もう朝ですよー。

早く行かないと。弟子たちが集まっちゃいます」


俺は半分眠ったまま、顔を洗う。

そしてジャージに着替えた。

ヒゲは剃らない。

もうそのままでいいやと思った。


------------------------


ハァハァ


「明~、少しスピード落とせよ」

「キツイですか?今、キロ5分のペースです。

最初のころよりだいぶ早くなってきてますね」


明はランニングウォッチを見ながら言う。

「あと1キロはこのペースで行きましょう」

「えーっ、無理なんだけど!」


俺と明は、3か月くらい前から、土日は、毎朝ジョギングするようになっていた。

明は俺の体力を向上させたいらしい。


「運動神経は良いんだから、ちょっと鍛えればすごいことになりそう。

せっかくやってきた長年の空手が、これじゃあ勿体ないです!」


朝の6時。

俺たちは河原を走った。

起きるまでは本当にツライんだけど、走った後は気分爽快だし、

その後は充実した一日を送ることができた。


「ストレッチしましょう」

ようやくゴールだ。

河原の少し広めのスペースで、いつもストレッチをしていた。

ふくらはぎの筋肉を伸ばす。

気持ちがいい。


「毎週、走るペース上がってく気がするんだが」

「そのうち、一緒にマラソン大会にも出れそうですね」

明は、ニッコリと笑う。

息が全くあがってないのがすごい。


「あっ、弟子たちがきました」

明が俺の後ろの方を指差す。


俺と明は3ヶ月前から、ランニングをし、河原のスペースでストレッチをしたあと

空手の練習をしていた。

俺が基本的な動きを見せて、明がそれを真似する形だった。


「こんな動きであんなにケンカに強くなれるんですか?」

「空手はケンカに強くなるためじゃない」


明は、飲み込みが早かったし筋も良かった。


早朝なので、誰にも見られていないと思って、俺たちは空手の型の練習に熱中していた。

しかし、いつの間にか近所の老人たちが集まってきて、

俺たちの後ろで、同じように空手の動きを真似するようになってきていた。


老人同士、口コミで広がったのか。

その数は少しずつ増えつつあった。


明は、その老人たちを「弟子」と勝手に呼んでいた。


「いいんだろうか。こんな勝手に教室みたいなことして」

俺は不安だったが

「金を取ってるわけでもないし勝手に集まってくるんだから、いいでしょう」

明は呑気だった。


「次はちょっと、高度な動きをやろうかな」

俺も少し楽しみ始めていたのだった。


明は、月に一度くらいの頻度で姉に会いに行く。


姉と再会してから、明の俺に対する束縛のようなものは激減していた。

明がときおり襲われる「不安感」。

その不安感が、姉と話すことにより、なくなってきているようだった。


自分を犠牲にしてまで俺のために何かをすることも、そのうち無くなるだろう。

ずっと俺がそばについて見守っていくつもりだった。


明は精神的に安定し始めていた。

幼い頃の傷を少しずつ癒やしている。

そんな明の姿に俺は、心底、安心していた。


---------------------


俺と明は、佐々木さんに会いに行った。

明は佐々木さんに言った。


「不倫の証拠写真を送りました。

それに社内で噂を流しました。

脅迫罪、名誉毀損、どんな罪でも償います」

明はそう言った。

俺も頭を下げた。


謝罪は自己満足でしか無いかもしれない。

でもそうするしかなかった。


佐々木さんはショックを受けていた。

だが言った。


「事情はわかりました。

飯田さんからどう聞いているかわかりませんけど。

もともと夫とは離婚するつもりでいたんです」


「えっ......」

俺たちは顔を見合わせた。


「飯田は、離婚することになって佐々木さんが困っているって」

「あの人、嘘つきですよね。

私もあんな男に騙されて後悔はしてるんです。

でも噂が広まって、会社にいられなくなってしまったのは、正直ツラいですね」


佐々木さんは、下を向いた。

「僕のせいです。すみませんでした」

明は、土下座する勢いだった。


「もういいんです。不倫した私も悪いんだし」


---------------------


佐々木さんのこと。

すっきりした終わり方ではなかったけれど、

明なりにけじめをつけた。


不倫の密告は、飯田と同じ土俵に立って、同じレベルになりさがること。

俺がそう言うと、明は「そのとおりですね」と言ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ