第77話_最悪の事態
青井美奈から聞いた場所は、明から聞いたとおり新宿だった。
新宿に借金取りの事務所があるらしい。
そこに向かいながら、明に何度も電話した。
しかし明は電話に出なかった。
とにかく、新宿の事務所の前で待っていれば、
明は、時間にあらわれるだろう。
そう思って俺は、電車に飛び乗った。
青井美奈と、ホンモノの姉の島田緑さんは
そのままアパートに置いてきた。
ホンモノの姉のほうは、俺と一緒に行きたがったが
「危険かもしれないので」と伝えた。
青井美奈の方は、横になりテレビを観はじめていた。
信じられない神経だ。
ホンモノの姉の島田さんと
連絡先だけ、俺は取り急ぎ交換した。
「あとで必ず連絡します」
そう伝えた。
俺自身も分からないことが多かった。
なぜ、青井美奈は、明の居場所を知っていたのか。
なぜ、やすやすと、明の姉のフリをできたのか。
でも細かいことを気にしている時間はなかった。
借金の返済場所、新宿の事務所に向かわねばならなかった。
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青井美奈の自宅から新宿までは1時間ほどかかる。
時刻は17時。
ギリギリではないか。
新宿に着くと、全力疾走した。
何人かとぶつかり、悪態をつかれる。
こんなに走ったのはいつぶりだろうかというほど。
事前に電車の中で、地図は頭に入れたので迷うことはなかった。
はぁっ、はぁっ、、、
息が切れる。
明のようにランニングをしておくべきだった。
俺は目的地である事務所の前で汗をぬぐった。
なんとか18時前についた。
腕時計を見て安堵する。
まさかもう、中にいたりしないよな?
俺は不安になり、事務所を見上げた。
このビルの3階だと聞いたけど。
そのとき、前方から、明が現れた。
「明!」
俺は叫んだ。
「よかった!」
「上原さん、どうしてここにいるんです?」
明は驚いている。
「姉ちゃんに場所を聞いたんですね?
上原さんは帰ってください」
「違うんだ!明......」
俺は、全力疾走したせいで息が整っていなかった。
「もう約束の時間になる」
明はそう言いながら、雑居ビルの階段をずんずんと上がっていく。
「明!あの姉は、ニセモノだったんだ」
俺がそう言うと、明は立ち止まってこちらを見た。
「ニセモノ?」
しばらく黙ったのち、明はまた階段を登りはじめた。
慌てて明のあとを追いかける。
「あれは、本当の明のお姉さんじゃないんだ」
「ハハハ。そんなわけ無いです。上原さん、僕を止めようとして変なウソ、つかないでください」
「ホントだって」
俺は日頃の運動不足を呪った。
明はどんどん階段を登っていく。
引き換え俺は、全力疾走がたたって、足がフラフラした。




