第75話_絡み合う糸
俺がどんなに反対しても、明はお姉さんの借金を肩代わりするだろう。
この調子だと、一生続くかもしれない。
明はお姉さんに死ぬまで寄生され、搾取されていくというのか。
この泥沼から抜け出すには、どうしたらいい?
明は今日の18時、新宿に借金の返済をしに行くと言っていた。
俺は、明との通話を切ると、
すぐに名刺入れの中身を床にぶちまけた。
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取引先や関連企業の名刺に混じって
異様にキラキラした派手な名刺があった。
「よかった!捨ててなかった」
俺はキラキラした名刺を宝物のようにそっと拾い上げた。
キャバクラのレナさんに連絡するつもりだった。
レナさん、つまり明のお姉さんである島田さんだ。
島田さんにはキャバクラの名刺をもらっていたのだ。
運のいいことに、その名刺にはQRコードが載っており
そこにアクセスすればレナさんとメッセージのやり取りができそうだった。
メッセージを送る。
「こんにちは、お久しぶりです。上原です」
「明さんとお付き合いさせていただいている上原蓮です
おぼえていますか?」
そんなメッセージを送った。
しばらく既読もつかず、諦めかけたころ。
「上原さん!憶えてるよ。あれからお店来ないじゃん」
という返信が来た。
「ご無沙汰してすみません。ちょっとお話があって」
「ってかさー、今から電話して良い?」
そんなメッセージが来たのち、島田さんから電話が来た。
「もしもーし!上原さん、どーしたの?
明となんかあったぁ?ケンカしたとか?」
島田さんは、そう言ったあと何がおかしいのかゲラゲラ笑い出した。
「そうではなくって。明のことで直接あって話せないかな、と思いまして」
「なになに~?いいよ。昼ご飯おごってね」
やった!
あっという間に島田さんと話すチャンスを作ることが出来た。
俺はガッツポーズをつくった。
島田さんに話すんだ。
明をもう解放してくれと。
島田さんの家の最寄り駅の前で待ち合わせをする。
彼女は、夕方から明と一緒に借金を返しに行くはず。
だが俺にはそんな話は一切しなかった。
俺と会ったときに話すつもりだろうか。
それとも一切、その話題には触れないつもりなのだろうか。
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駅の改札付近で島田さんを待っていた。
遅い。
時間を15分も過ぎていた。
スマホに着信が入る。
「上原っち~?悪いけど、あのあと寝ちゃってぇ。
ちょっとまだ準備できてないんだわぁ、ごめんごめん」
「えっ。そんな」
「あーもう、めんどいな」
島田さんは電話越しにそんな事を言う。
なんて人だろうと思う。
仮にもついさっき、した約束ではないか。
「何の話か知らないけどさ、じゃあ、ウチのアパート来てくれる?
こんな時間から出かけるとか超ウザくってさぁ」
島田さんはそう言うと、自宅アパートの地図を送ってよこした。
ここの301号室ね。
などと書いてある。
仕方がない。
いや、むしろ好都合かもしれない。
アパートなら、土下座をして明と縁を切るようにお願いすることだって
できそうだと思った。




