第72話_寂しさ
明が副業をがんばっているのは、
いつの日か独立するため、フリーランスになるためではないかと勝手に想像していた。
だが違った。
姉に貢ぐために稼いでいるのではないか。
そんな疑惑が浮かんできたのだ。
会社の給料だけでもじゅうぶん食べていけるはずだった。
だが明の場合は、奨学金の支払いや堂島に渡した100万などで、
貯金が底をついたのかもしれない。
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金曜日の夜だった。
「上原さん!」
明はうちに入ってくるなり
かばんを放り出して俺に抱きついた。
飼い主に飛びつく犬そのものだった。
「会いたかった」
キスをして、抱きしめ合う。
明のおでこと俺のおでこが当たったまま、話す。
「ちょっと痩せたんじゃないか」
「えー、そんなことないすけど」
「いや。確実に痩せてる気がする」
俺は明の両脇腹を触って調べた。
「明は筋肉が発達している。
つまり代謝が良いから、たくさん食べないとすぐに痩せる」
俺は最近、栄養学の本も読み始めていた。
「今日は時間ある?泊まっていけるんだよね?」
「はい!でも明日の朝イチで帰らなきゃなんですけど」
「ほんとに忙しいんだね」
俺はため息を付いた。
つくっておいた料理を二人で食べる。
明は、ガツガツと食べる。
「そんなに慌てなくても、よく噛んだほうが」
「だって美味しくて」
「だよな!この豚バラ大根、うまいよな」
明が驚いた顔をして、こちらを見つめている。
「なんだよ?」
「上原さん、食べ物に関して、うまいとか言うの珍しいですね」
そう言えばそうだった。
これまで、食に興味がなく腹が満たされればいいと
そんなふうに思っていたのだが、
明と食べていると、「うまい」という感想が自然と出てくるのだった。
自分で作ったものだからなおさらかもしれない。
「明と一緒に食べていると、うまいって感じるみたい」
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シャワーを浴びたあと、
ソファに座って二人でくつろいでいると、明はウトウトしだした。
俺に寄りかかって眠っている。
俺と久しぶりに2人きりになったのに、睡魔に負けてしまったのだ。
明がここまで疲れているなんて。
こんなこと今までなかった。
寝顔を見ていると胸が苦しくなった。
アキラの前髪に触れる。
かわいそうに。
こんなに疲れるまで働くなんて。
明がビクッと体を震わす。
「う......ん、上原さん、すみません。
どれくらい寝てました?」
「ほんの2分も寝てないよ。明、もう今日は寝よっか」
「いやです。そんなの。やっと会えたのに」
明は俺の上に覆いかぶさる。
だけどいつものギラギラしたような元気がなかった。
俺は、上半身を起こして明の両肩をつかんだ。
「明。話があるんだけど」
「話!?」




