第70話_不信感がつのる
結局、キャバクラには1時間ほどいた。
「延長しますか」
と聞かれたときに、チェックすることにしたのだ。
会計はかなりの金額だった。
延長していたらもっとかかっただろう
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「明~また連絡するからネ」
島田さんが言う。
「また来てくださいね~」
店の出口で女性の見送りを受けた。
ようやく帰れる。
あまり楽しい場所ではなかった。
俺はもしかしたら、女性に興味がなくなってきているんだろうか。
フトそんなことを思う。
「上原さん、楽しそうでしたね」
明から見たら、俺は楽しそうに見えたのか?
「下着みたいに露出度の高い服の女の子が隣りに座って。
やっぱりドキドキしましたか?胸の谷間とかすごかったし」
明は、恐る恐る俺に聞いてきた。
「ヤバいかも」
俺は答えた。
「やっぱり、興奮したんですね?」
明が暗い声で聞いてくる。
「まったく女の子に魅力を感じなかった自分。ヤバいかも」
「えっ?」
明は俺の方を不思議そうに見た。
「俺は明と早く帰りたいって、そればっか考えてた」
「ほんとですかぁ~!?」
「ほんとだよ。楽しくなかった。
胸の谷間なんて気づかなかった。
明。いくらお姉さんのお願いだからって、
あんなに高い店には無理していく必要ないと思うんだけど?」
「でも......」
明は歯切れが悪かった。
いつもの明なら、あんな店には行かない。
たとえ実の姉のお願いでも彼は断るはずだ。
どうして断れないんだろう。
理解できなかった。
血の繋がった家族のことだ。
俺にはこれ以上、口出しをする権利はないかもしれない。
「うちに来て欲しい」
明の手にそっと触れながら言った。
明が欲しかった。
店にいたときから、明に対し欲情していた。
「それが無理なんです。副業のほうの納期がせまっていて。
今日はもう徹夜でずっとやらないと間に合わないんです。
上原さんといたら絶対、仕事にならないし」
明は俺に近づくと耳元で囁いた。
「いますぐにでも上原さんに抱かれたい。
つらいです。来週はぜったい会ってくださいね」
別れ際、明にキスしたい衝動に駆られる。
でも人目があって、できるわけなかった。
俺たちは駅前で別れたのだった。
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翌週、明はゲッソリとやつれた顔でオフィスに現れた。
「山ちゃん、どうしたのぉ。なんか目の下のクマすごいよ」
金井さんが驚いている。
「ほんとですか。やだなぁ。副業のほうがちょっと立て込んでて寝てないんです」
明は自分の顔に手を当てる。
「頑張り過ぎだよ?少しは休まなきゃ」
桜さんも明を心配していた。
そうだ、そうだ、もっと言ってやってくれ。
俺は心のなかでそう思っていた。




