第65話_考えごと
「俺は賛成できない。その考えかた。
なんというか......違和感あるな」
「えっ、手切れ金のことですか?」
山野井は不思議そうに俺を見る。
「実は副業をしていて。僕はそっちでも収入があるんです。
だから100万くらいは大丈夫ですよ?」
「副業か」
うちの会社は最近になって副業を認めている。
だから山野井のやっていることは、なにも悪いことではなかった。
「でもお前が一生懸命稼いだ金だし。
だいたい他人にまとまった金を渡すっておかしい。貸したわけでもないんだよね?」
山野井はふぅ、とため息を付いた。
「上原さん、佐々木さんの不倫の密告をしたときも、そんな風でしたね」
「そうだよ。あのときと同じ」
そうだった。
あのときの話し合いだって、平行線。
結局、解決しないまま、俺の違和感はそのまま残っていた。
「でも僕は上原さんを守りたいだけなんです。
春斗は、ピエロの格好をして上原さんを襲いに来ます。
あいつすごく嬉しそうにして、興奮してたんですよ?
僕は心配でおかしくなってしまう」
「あぁ~ピエロか」
なんと言ったらいいのか分からなくなってしまった。
堂島春斗に
「金をくれるなら海外に行く。姿を消す」
とでも言われたのだろうか。
山野井は、それに従ったのだろうか。
「もうやめましょう。春斗の話なんて」
山野井は俺の隣に移動してきた。
「あいつは、もう上原さんを苦しめません」
そう言いながら俺に寄りかかってきた。
「でもその解決方法。俺はありがとう、とは言えない」
「それでもいいです」
「俺はピエロの克服をしようと思う。
そうすれば、山野井も安心だよね?
そういう解決方法が、真っ当だと思うんだけど」
「克服できるとは限らないじゃないですか。僕は確実な道を選びたい。
ね。この話はもう終わりです」
山野井はそういうと、俺の肩を自分のほうにグイッと引き寄せた。
「ずっと上原さんに冷たくされて。
昨日の夜は、ぐっすり寝ちゃうし。
僕がどれだけ、つらい思いをしてるか分かってないですよね?」
山野井が俺の着ているジャージのジッパーを下げる。
「まって。まだ話が……あっ」
キスで口を塞がれた。
少し乱暴に服を脱がされ、マットレスの上に押し倒された。
昨夜おあずけを食らったせいか、山野井は興奮していた。
俺も山野井のシャツをまくり上げ体に触れながらキスをする。
山野井の......明の息が徐々に荒くなっていく。
100万渡した。
そのことに対する違和感は胸に残る。
金額の大小の問題でもないし......。
「上原さん。考えごとしないで」
明が上ずった声で言った。
「僕のほうをみて。他のこと考えないで」
「わかった」
俺はいったん考えることを止めた。




