第56話_消えた堂島
「上原さん、何があったのか、春斗にだいたいのことは聞きました」
山野井からメッセージが来た。
「僕のせいなんです。ピエロの件。
僕の日記を春斗が読んでしまったみたいで」
そういうことだったのか。
どうして堂島が俺のピエロ恐怖症を知っているのか。
それだけが、ひっかかっていたのだが。
「上原さんごめんなさい。
腹がたつのは当たり前だと思います
でも会いたいんです......」
「腹を立ててるわけじゃなくて。
ちょっと時間がほしい。考えさせて欲しい」
俺は、山野井にそんな返信を送った。
好きなひとの元カレに、情けない姿を見せた......。
しかもピエロに怯えるなんて、ほんとにヤバすぎる。
はっきり言って、滑稽ではないか。
気持ちの整理のため時間が欲しかったのだ。
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俺は、ちょうど展示会と関連企業への訪問で大阪へ出張していた。
山野井にしばらく会わないことで気持ちの整理ができる。
大阪にいるあいだ、忙しさも相まって連絡も取らずにいた。
するとしばらくしてまた、山野井からメッセージが来た。
「上原さん、こんばんは。
春斗のことなんですけど、もう二度と
上原さんの前には姿を表さないようにしました。安心してください」
山野井は、またしても今回、
なんらかの手を使って、ゴタゴタを解決してしまったのか。
でも。
二度と姿を表さないって?
「えっ......」
思わず声が漏れる。
一体どういうことなんだ?
「堂島さん、どこかへ行ったの?」
俺は慌てて返信を打つ。
「返信してくれて嬉しいです!
春斗は遠くに追いやりました。もう上原さんを怖がらせることはありません」
遠くに追いやった?
それって、どういうことだよ?
俺は不安になった。
山野井はいままで、「俺のため」にいろいろしてきた。
ヤクザに殴りかかろうとしたし
トラブルを解決するために、大学に潜り込んだり、
飯田とのトラブルのときは、浮気の密告もした。
そして今度は、一人の男をどこかへ追いやったというのだ。
堂島は、山野井にまだ未練があったのに。
みずから、どこかへ行くとはとても思えなかった。
なにか嫌な予感がした。
山野井が……まさか。
「上原さんのためなら何でもします」
「後悔はしてません」
そんな山野井の言葉がふと頭に浮かぶ。
俺はどうして、堂島と起きたトラブルを
すぐに山野井に話さなかったんだろう。
話さずに隠したうえ、山野井を怒鳴りつけた。
そして連絡も取らず冷たい態度をとってしまった。
そのことにより山野井を必要以上に追い詰めてしまったのだ。
山野井が堂島春斗を消した。
文字通り?
二度と姿を表さないってどういうことだ。
だけどこれ以上、詳しく聞く勇気が出ない。
スマホを握りしめた手が震える。
俺は呆然と立ち尽くしていた。




