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おれたち付き合ってますがなにか?  作者: ゴルゴンゾーラ
山野井の過去
54/83

第54話_自己嫌悪

「マジでピエロがだめとは!」


堂島の笑い声が聞こえたような気がした。

ふいに意識が戻る。


意識が戻った瞬間、

俺はピエロの横っ面を殴った。

しかし恐怖で力が入らず、弱々しい攻撃だったと思う。

「うっ」

呻くピエロの声。


殴られて腹が立ったのか、ピエロのほうも俺を強く殴った。

激しい動きにピエロのお面が少しズレる。

堂島の顔が半分見えた。


チャンスだった。

震える手でピエロのお面を相手から剥ぎ取る。

そしてできるだけ遠くに投げた。


堂島の顔があらわになった。

ヤツは俺に馬乗りになったままニヤニヤと笑っている。

柏木にされたことがフラッシュバックして、俺は一瞬ひるんでしまう。

堂島はそのスキを逃さなかった。


俺の両手を掴み、自由を奪う。


「いい加減にしてください!

山野井!?山野井は?」


「バカですね。アハハハ。

明がここにいるわけないじゃないですか」


だまされた!

冷や汗が背中をつたう。

俺は堂島を思い切り突き飛ばして、起き上がった。


柏木のときのように薬を飲まされてなくて良かった。


「痛いじゃないですかあ。意外に力が強いんですね」

堂島はニヤニヤ顔を止めなかった。



フラフラと立ち上がり、リビングから出ようとする。

「上原さんってば。ちょっと悪ふざけが過ぎました。

そんなに怒らないでくださいよ~」

堂島の呑気な声が聞こえる。

「まさか、そんなにピエロが怖いとは普通、思わないじゃないですかぁ。

あんまり怖がるから、カワイイなって思ってエスカレートしちゃった」


「......」

堂島はおかしい。

俺のピエロ恐怖症も相当なものだが、

これだけ怖がったら、止めてくれるのが普通だと思う。


っていうか、どうして堂島が俺の恐怖症を知っているんだろうか。


「明から上原さんのスマホに電話がありましたよ。

あいつもうすぐ、ここに来るんじゃないかな」

堂島がそんなことを言う。


「そう......ですか」

俺は、堂島が手に持っている俺のスマホを

乱暴に奪い取る。

いつの間に俺のスマホを?

俺はどれくらい気を失っていたんだろう。


もうこれ以上、この部屋にいたくなかった。


玄関から外に出ようとすると背後から

堂島の笑い声が聞こえた。


ピエロのお面をかぶり追いかけて来るのではないかと思うと背筋が凍る。

俺は、震えながら、堂島の部屋をあとにした。

-----------------------


俺は堂島のマンションのエントランスにしゃがみこんだ。

足がうまく動かなかったのだ。

それに、ここにいれば山野井に会えるだろうと思った。


しゃがみこんで、両手で顔を覆う。

大人の男が、ピエロが怖いなんて。

俺は堂島の前で変な声を出して、這いずり回ったのだ。

自己嫌悪が波のように襲ってくる。

顔が熱くなった。


情けない。

堂島にあんな姿をさらした。


どうしてこんな目にばかり合うんだろうな。

柏木のときに引き続き、身の危険を感じた。


ただ、山野井を探していただけなのに。


しかも今回、柏木のときや飯田のときとは、わけが違う。


堂島は山野井の過去の恋人。


自分の好きなひとの元カレの前で情けない姿をさらしたのだ。

俺のプライドは深く傷ついていた。


----------------------


「.......さん、上原さん」

山野井の声。


「大丈夫ですか。何があったんですか?」


山野井が堂島のマンションまで来た。

ものすごく心配そうに俺の顔を覗き込む。


山野井に助けに来てもらう。


こんなシチュエーションばかりだな。

我ながら呆れる。


「なんでもない。

山野井のこと探してただけだよ」


これ以上、心配させたくないと同時に、

堂島にさらした醜態を絶対に知られたくない。


そんな気持ちから、俺は山野井に嘘をついた。


「なんでもない」

と言ったのだった。

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