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おれたち付き合ってますがなにか?  作者: ゴルゴンゾーラ
山野井の過去
49/83

第49話_春斗とのこと(山野井)

「明。前みたいな関係に戻ろう?」

春斗が僕の頬に触れる。


2年近くも経つのに。

僕は春斗の手の感触を憶えていた。

あのころ、僕は春斗に夢中で、春斗のためなら死ねるとさえ思っていた。


「そんな言葉を聞くためにお前を部屋に入れたんじゃない」

「へぇ?じゃなんのため?」


仕事から返ってくると、アパートのオートロックの前に

春斗が座り込んでいたのだ。

僕の帰りを待っていたらしい。

春斗を部屋に入れたのは間違いだったか。


「もう上原さんに余計なことは言わないで欲しい。

彼は、ダメって言ってもあの店に来るかもしれないし。

そうなれば、お前と鉢合わせするし」


「あぁ。上原って。お前の今の恋人か?

あの真面目で可愛い感じのサラリーマン」

春斗は上原さんを思い出してクスっと笑う。


「僕だって今は真面目なサラリーマンなんだよ?

とにかく上原さんを不快にするような言葉を言わないで欲しい」


春斗は、僕の髪に触れた。

僕はその手を振り払う。


春斗は僕の目を覗き込むようにして言う。

「上原さんに山野井さん。

お互い名字で呼びあって。面白いな。純愛ごっこ」


「そんなんじゃない。本気で好きなんだ」

「お前の本気は重いからな。上原ってやつだって、

怖くなってそのうち逃げ出すんじゃないか?」


---------------------------


数年前。

僕は春斗に夢中だった。

だが、春斗は僕に隠れてしょっちゅう浮気した。


浮気してほしくなくて、僕だけのものになってほしくて

春斗に対し、僕は束縛しはじめた。

それも異様なほどの束縛をしてしまった。


毎晩電話をして、帰りが遅ければ納得するまで詰問した。

後をつけることもあった。


春斗はそんな僕に対し

「息苦しい」

と言った。

そして浮気を繰り返し、最後には僕の親友にまで手を出した。


しばらくして春斗はワーキングホリデーだといって外国に飛び立った。


-------------------------------------


「あのときは俺も若かったからな。

浮気を繰り返したのは悪かったよ。

いまは、もう落ち着いたし。そんな事しない」

春斗は、僕に顔を近づける。

飲んできたんだろうか。

アルコールの匂いがした。


「お前だけを大事にするし、束縛にも耐えられると思う」


春斗は平気でウソをつく。

全部ウソだ。

昔は何度もダマされたんだけど。


それに、春斗の言ってることが本当の気持ちだとしても

僕にはもうどうでもいいことだった。

僕には上原さんがいるし、目の前のこいつのことはなんとも思ってない。


そのときスマホが鳴った。

表示を見ると上原さんからだった。


ほら。

彼からの電話だ。

僕は愛されている。

安心して良いんだ。

春斗のときとは違う。


「上原さんか?出ないと心配されるぞ~」

春斗が茶化すように言う。


「ちょっと待ってろ」

僕は万が一、春斗が声を出したりしたら

上原さんに誤解されると思い、部屋から出た。

共用廊下で電話を取る。


「もしもし。上原さん。ちょっと立て込んでて。

後で掛け直します。

えっ、手錠の鍵が無い?

なに一人で遊んでるんですか?

鍵なら袋に入ってませんでした?」


----------------------


春斗は明のデスクを眺める。

一冊のノートを見つけた。


(こいつ、昔から日記を書くのが好きだったよな......)


大学ノートには、思った通り短文だが、日記のようなものが綴られていた。


上原さんの特徴、と書かれた項目が目に入る。


「なんだこりゃ」

春斗は鼻で笑う。


上原さんの特徴

優柔不断

押しに弱い

異常に少食

鈍感

隙だらけ

足つぼに弱い

負けず嫌い

手を握るのが好き

心配しすぎると怒る

野菜はたくさん食べる

掃除が苦手

海外ドラマが好き

芝居をする時がある

ピエロが苦手


「ピエロが苦手......?」

ノートの隣には、ピエロのお面が顔を下向きにして置かれていた。


-------------------------


「何を言っても通じないみたいだね。

僕は上原さんを愛してるし、お前に興味ない。

帰ってくれる?」

春斗に言う。


春斗は

「またあのバーにも行くし、ここにも来る

お前はあの可愛いサラリーマンとはうまくいかないよ。

心に大きな闇を抱えているからな。俺にしか受け止められない」


そんなことを言いながら春斗は帰っていった。


僕はピエロのお面がなくなっているのに気づかなかった。

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