第47話_遊んでない感じ
堂島さんは言った。
「上原さんて普通の真面目なサラリーマンなんでしょ。
なんか、見た感じ遊んでなさそう。
明はあなたに満足してるのかなぁ」
分かっていた。
堂島さんは山野井の元カレ。
だから、俺に対し嫉妬心を持っている。
それで嫌味を言っているだけなんだと。
「山野井と俺は精神的なつながりが強いですから。
あまりそういうの気にしてなかったです」
堂島さんの目を真っ直ぐ見て言った。
負けるわけにはいかなかった。
堂島さんは俺の言葉を聞いてフッと笑う。
「明のこと、山野井って名字で呼んでるんですね。
精神的なつながりかぁ。
だったら友だち関係でいいでいればいいのに」
大介くんはハラハラしながら
俺と堂島さんのやり取りを傍らで聞いていた。
「明は、上原さんに夢中ですよ!
いつも話し聞かされますもん」
と言う。
「お前は黙っとけ」
堂島さんは大介くんに一喝する。
話題の中心、肝心の山野井は、仕事の電話がかかってきてしまい、
店の外に出ていた。
この緊迫した空気はなんなんだ。
ただひとつだけ確信したことがあった。
堂島春斗は、山野井にまだ未練があるということだ。
「帰りますね」
俺は席を立った。
これ以上、堂島さんと会話していると息が詰まりそうだった。
店の外に出た。
店の外には山野井がいた。
だが彼は、まだ電話中だった。
背中を向けているので俺には気づいていない。
仕方がない。ひとりで帰るか。
山野井の背中を横目で見ながら、
俺はとりあえずバーを離れ、帰宅したのだった。
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「上原さん、もしもし」
帰宅後、すぐに山野井から電話がかかってきた。
「春斗になんか言われました?
急に帰っちゃうから......」
「うん、いろいろ言われた」
「えっ」
山野井は息を呑む。
「明はお前じゃ満足しないだろうって。
そう言われた」
俺は山野井を少し困らせたくなって、
ちょっと大げさに言ってみた。
どうしてだか、山野井にいじわるしたくなったのだ。
「あいつ、そんなこと」
山野井の声がワントーン低くなった。
「俺は真面目で遊んでなさそうだから、
きっと明を満足させられないって言われた。
なんだか、悲しくなったなぁ」
「上原さん、今から行ってもいいですか?」
山野井が言う。
「いや。もう今日は疲れたから。
眠りたいし。悪いけど」
残業続きで睡眠不足だったのはホントだ。
だけど、山野井に冷たくして困らせたい。
そんな気持ちもあった。
「上原さん、聞いてください。
あいつ......春斗と僕は過去に付き合ってました。
でもそれは、幸せな時間じゃなかったんです。
また今度、ゆっくり話を聞いてください」
山野井は震える声でそう言うと電話を切った。
やっぱり、いじわるなんてすべきじゃなかった。
山野井の暗い声に心がチクっと痛んだ。




