第44話_2次会の幹事メンバー
俺はずっと心に引っかかっていることがあった。
佐々木さんのことだ。
佐々木さんと飯田の不倫は、やはり社内でウワサになっていた。
山野井が密告したことにより、壊れた家庭。
佐々木さんは旦那さんと離婚するのだろうか。
彼女は今月一杯で、別の派遣先にうつるということを誰かが言っていた。
俺は今まで佐々木さんと個人的な話をしたことがない。
だから、いきなり「離婚するんですか?」
なんて聞けるわけがなかった。
また聞くことで何かが変わるとも思えないし
聞くこと事態、身勝手な行為だと思えた。
だが、結婚式の二次会の幹事という役割を通して、
俺は佐々木さんに接近することが、やがて可能となった。
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会社の近くのカフェ。
ランチの時間帯だった。
結婚式二次会の幹事、4人で集まって話し合いが行われていた。
当日の流れを話し合う必要があったのだ。
メンバーは俺と山野井。
そして、金井紀香と桜弥生の4人だった。
「二次会の会場は、良さげでした。
雰囲気良かったし、広さも十分でした」
「山ちゃんと二人で食べに行ったんだよね?
私達も行きたかった!」
「いや~、こういうのは僕たちのような
ひま人が行くべきだと思いまして!
お二人は主婦でもあるし忙しいでしょ」
山野井が笑った。
「それじゃ新郎新婦のほうで店の予約をするだろうから。うちらは細かいとこ、詰めてこう」
………
山野井は
「二次会の幹事メンバー同士で恋愛に
発展しやすいってよく聞きますけど
今回のメンバーに限っては安心です。
だって、金井さんと桜さんは二人とも既婚者ですからね!」
と喜んでいた。
金井さんと桜さんは、
俺の2つ上の先輩で、既婚者。
それぞれ、小さな子どもをかかえている。
子どもの世話があるので、夜は忙しい。
打ち合わせはもっぱら昼間に行われていた。
ややこしいことは、起こりようがない。
「ウェルカムボードなんだけど、
佐々木さんにお願いしようと思って」
「ウェルカム......?」
なんのことだろうと思って首を傾げると
桜さんが、スマホの画像を見せてくれた。
「こんなのだよ。知らんの?
上原も将来の自分の結婚に備えて
今回いろいろ勉強になるな!」
桜さんがニヤリと笑う。
「あぁ~確かに。いい経験になるよねぇ。
山ちゃんは、謎に知識豊富そうだけど」
金井さんが山野井の方を見る。
会社の先輩達は、山野井のことを山ちゃんと呼んでいた。
「いや、僕は知識ゼロっすよ。
でもとにかく、楽しい感じに盛り上げれば良いんでしょ」
そうだね~
それが大事だわね~
とみんな頷いていた。
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「んで、ウェルカムボードなんだけどさ。
佐々木さんには新婦のほうからお願いしてあるからさ。
悪いんだけど出来上がり次第、
上原が佐々木さんから現物を預かっといてくれる?」
桜さんにそう指示を受けた。
女性陣は二人とも先輩なので、いろいろとこき使われることになりそうだ。
新婦と佐々木さんは仲が良い。
だが今回、佐々木さんは結婚式と二次会への参列を取りやめたらしい。
やはり周囲の目が気になるのだろう。
その代わり、できる限りの協力はしたい。
そう言っているらしかった。
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金曜の夜だった。
山野井の部屋で海外ドラマを観ていた。
俺が一時期、ハマっていたドラマで、
山野井も、観てみたいと言ったからだ。
ドラマを観ながらふと思い出す。
「あ、そういえば2次会の参加人数ってどれくらいになるんだろう」
「さあ?100人くらいって聞きましたけど」
山野井が、のんびりした口調で返す。
「100人?マジか」
「二次会の幹事、ちょっと面倒ですね」
ドラマを観ながら山野井が後ろ向きなことを言う。
「そう?俺はけっこう、張り切ってるけど」
「上原さん。井口さんたちの結婚式に参列して
やっぱり女と結婚式挙げたいとか思わないでくださいよ~」
山野井が冗談ぽい口調で言ったが、目は笑ってなかった。
かれこれ、ドラマを3時間くらい観続けていた。
「ちょっと、登場人物が多すぎて
いまだに憶えきれないんですけど。でも確かに面白いっすね」
山野井が言う。
「しかも毎回続きが気になる感じで終わる」
「そうなんだよなぁ。次が観たくなるよな。中毒性あるというか」
「でも僕は、そろそろいいかな。
ドラマよりも中毒になっていることがあるんで」
山野井はそう言うと、俺に寄りかかってきた。
床に押し倒されて、ゆっくりキスをかわす。
背中がひんやりとした。
「床が冷たい」
と俺が不平を漏らすと
「風邪引いちゃいますね。ベッドにいきましょう」
山野井が俺の手を引いた。




