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おれたち付き合ってますがなにか?  作者: ゴルゴンゾーラ
社内でのゴタゴタと山野井の行き過ぎた行為
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第39話_人事部長からの呼び出し

飯田は本当に人事部に写真を送った。


それも匿名の密告という手段であることを

俺たちは、後から知ることになる。


--------------------


山野井は俺の将来を心配しているのか。

よそよそしい態度を続けていた。


以前のように、

「デートしましょう」とか

「飲みに行きましょう」

などと、一切言わない。

毎晩の電話もピタリと止んだ。


今までになく山野井が遠くに感じられた。

俺の将来なんて気にする必要ないのに。


それとも、いろいろありすぎて、

俺と付き合うのが面倒くさくなったのだろうか。


そんなある日、俺たちは、人事部長から呼び出しを受けた。

俺と山野井、二人同時にスケジュールが押さえられ

ミーティングルームへ呼び出されることとなった。


わざわざ人事部長が?

万が一、お咎めがあるとしても

課長クラスからの呼び出しじゃないかと思っていたのだけど。


不思議に思いながら、オフィスのエレベータに向かうと

山野井もちょうど、エレベータの前に立っていた。


「上原さん、すみません。僕のせいです」

山野井はエレベータの前で、階数表示を見上げながら言った。

「でも大丈夫です。僕が無理やり上原さんを付き合わせた。

上原さんは、どちらかと言えば被害者だと、そう言いますから」


「......」

俺は山野井の言葉を無視し、黙ってエレベータの到着を待った。


やがてエレベータが到着し、二人で中に乗り込む。

中には誰も乗っていなかった。


「なんで黙っているんですか。

後悔してるんですか。僕なんかに関わったから、こうなったって」


「山野井」

俺は、山野井の手を握った。


山野井はびっくりしてこちらを見る。


「そんなに、びっくりして」

俺は可笑しくて笑った。

「上原さんは予想外過ぎます」


エレベータの扉が開いたので、俺は山野井の手を離した。


------------------------


ミーティングルームでは人事部長がすでに着席し、待っていた。

ほかにも人事メンバーが居るのではないかと思ったが、

部長のみで、誰もいなかった。


窓からは午後の柔らかい日差しが差し込んでいる。


送られてきた匿名のメールの写真が俺たちに見せられた。


山野井が部長に向かって何か言おうとした。

だが俺が先に口を開いた。


----------------


「山野井さんが好きです。恋愛感情があります」

俺は人事部長の目を真っ直ぐ見て言った。

恥ずかしいという気持は全くなかった。


隣に座る山野井に視線をうつすと

彼は呆然とした表情で、俺の顔を見つめていた。


なんだ。

ちっとも恥じる気持ちなんて起きなかった。

自分でもあっけにとられた。

山野井のことが好きだ。

それは隠すことでもなんでもない。


どうして俺は今まで、自分の気持ちを恥ずかしく思っていたんだろう。


「ちょっと驚きました。誤魔化すのかな、って思っていたから。

そんな風に、まっすぐ、素直に認めると思わなかったものでね」


50代と思われる部長は女性だった。

メガネをかけ、小柄で痩せた女性だ。

礼儀を重んじ非常に厳しいと評判だった。


彼女は結婚せずに、ひたすら働くことで今の地位をつかんだのだと

聞いたことがある。


「なにも悪いことはしてませんので」

そう言って、ニッコリと笑う余裕さえあった。


「そうですね。私もあなたがたを責めるために呼んだのではないのです。

この写真を送ってきた人物に心当たりがあるのか。

それを知りたいだけなんです。

差別的な思想を持つ人間が社内にいるのは、今の時代、非常に問題ですから」

部長はそう言うと、顔の前で両手を組み、こちらをじっと見つめた。


「差別......」


山野井が口を開いた。

「それを送ったのは、SESのエンジニアで先月まで働いていた

飯田悠一さんです」

人事部長は山野井の言葉を聞くとPCに何かを入力した。


「飯田悠一さん、そうですか。確かですか」

「はい。その写真を実際見せられて、脅迫のようなことも受けましたから」

「脅迫ですか。どのような」

「はっきりとした要求は無かったのですが、自分に従った方がいいというようなことは言われました」

山野井はスラスラと答える。


「うーん」

人事部長は眉間にシワを寄せると

「ありがとう。分かりました」

と言った。


「部長。上原さんは今後の人事考課などで、なにか不利になるんですか?」

山野井が思い切ったように聞く。

「山野井、そんなのどうでもいいのに」

俺の言葉を山野井は手で制する。


「それは一切ありません。

この写真を見たものは数名ですし、人事の人間なのでみな、口が堅い」

部長は初めてここで笑顔を見せた。


「そうですか」

山野井はまだ、ちょっと納得していないようだった。


しばらく沈黙が続いたのち。


「実は私のパートナーは女性なんです」

ふいに部長がそんなことを言ったので、俺たちはびっくりした。


「もちろんここだけの話ですよ。さぁ、仕事に戻ってください

仕事の効率が落ちるようなら、話は別です」


部長は立ち上がった。

終了の合図だった。


俺たちも立ち上がり、一礼すると部屋を出たのだった。

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