第35話_仲直りのチャンスはいつ?
山野井とケンカになってしまった。
自分がこんなに寂しい気持ちになるなんて
思いもしなかった。
こんなに後悔するなら、ケンカなんてすべきじゃなかった。
山野井は今夜も出会いを求めて、フラフラするんだろうか。
そう思うと悲しかった。
翌日出社すると、飯田さんがニコニコ顔で俺を待ち構えていた。
「昨日は先に帰ってしまってすみません」
俺は飯田さんに謝った。
「いいんですよ。私も昨日は急用ができてしまったので」
そして飯田さんは、俺の肩に手を置くと、
「それより、いい店だったでしょう?また行きましょうよ」
と言う。
「はぁ......」
俺はため息のような返事をした。
一体、飯田さんは何がしたいのだろう。
俺は、飯田さんと付き合うことは絶対にないのに。
この人の行動は全く理解できなかった。
そんな俺と飯田さんの様子を遠くから山野井が見ていることに、
俺は気づいていなかった。
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「えっ?開発の飯田さんがウチを離れるって?」
「そうそう。なんでだろうね。急だよね」
「えっ?知らないの。飯田さんはいろんな女性に手を出していて。
不倫もしていたらしいよ」
その日、朝から女子社員たちが騒いでいた。
飯田さんの社内での行為が、どうしてだかバレたらしい。
俺は思った。
これで飯田さんはうちの会社を離れざるを得ないだろう。
あっけなく一件落着か。
仕事中しつこかった飯田さんとも離れることができる。
山野井と目が合う。
山野井はこちらをじっと見ると、やがて目をそらした。
彼は俺のことを、もう何とも思っていないのだろうか。
俺自身は、山野井のことが好きだった。
彼に謝りたい。
そう思っていた。
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飯田さんはうちの会社を実際に離れた。
やがて代わりの人間がウチにやってくるだろう。
あれだけ派手に社内で不倫を繰り返していれば、
遅かれ早かれ、バレていたに違いない。
社員じゃない、外部の人間を切ることは
会社にとってたやすいことだった。
わざわざ説得しなくても
やつは自分から破滅したのだ。
これで飯田さんとの縁も切れるな。
そう思っていたのだが。
「上原さん、離れることになって残念です
上原さんと山野井さんの写真のことなんですけど」
今さら、何を言っているのだろう。
メッセージをさらに読み進める。
「あの写真、御社の人事部に送ってもいいですかね」
最後の悪あがきのつもりだろうか。
そんなメッセージを送ってきたのである。
「本気ですか。うちの会社は
社内恋愛、同性の恋愛をとくに禁じてません。
送りつけたところであなたが恥をかくだけです」
俺はそんな返信を送った。
「同性の恋愛などに罰則はなくても頭の固い連中には
記憶に残るんじゃないですかね
それにわたしは匿名で送る方法を知っています」
そんなことを言う。
「一度だけ、会ってくれたら、写真はデータごと消します」
そう書かれていた。
「どこに行けばいいんです。
二人きりになるような場所は嫌ですけど」
そう返信した。




