第34話_後悔(山野井)
上原さんは言っていた。
バーには飯田さんに連れて来られたんだって。
飯田さんと二人きりで会うなんて。
上原さんは、どうしてそんなバカなことするんだろう。
僕をわざと心配させようとしている?
公園で言われたこと。
「山野井も普通にゲイ同士で付き合えばいい」
上原さんはそう言っていた。
この間、僕が上原さんに言ったこと
「普通に女性と恋愛して結婚すれば」
あの言葉の、そのままお返しって感じなんだろうな。
そのまま返してくるところが、可愛いんだけど。
でも傷ついた。
いまさら、上原さん以外を好きになんてなれないのに。
上原さんがそのことを、分かってないって部分に傷ついた。
だいたい、煮え切らない上原さんが悪い。
いつも僕を振り回してばかりじゃないか。
確かに、上原さんと出会う前までは、あのバーで出会った男と
遊んだりしていた。
だけど、上原さんに出会ってからは遊んでいない。
他のやつなんて、どうでもよく思えたからだ。
ただあのバーには知り合い、友人がたくさん出入りしているので、
話し相手が欲しくなると、行くことが多いってだけ。
それなのに、僕は
「出会いをもとめてる」
なんて彼に嘘を言ってしまった。
上原さんは素直だから、きっとそれをそのまま信じてしまっただろう。
どうしよう。
取り消したいけど、僕も腹が立っている。
勝手に行動した上原さんに対して腹が立っていた。
でももし、このまま彼が、僕のことを忘れてしまったら?
本当に誰か別の女性と付き合ってしまったら?
そう思うといてもたってもいられない。
そんな気持ちになる。
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このまま家に帰るのも、暗い気分になりそうなので
僕は店に戻った。
なにより、飯田さんがまだいるのなら、
話をつけようと思った。
「おかえり~明ちゃん。可愛い友だち帰っちゃったの?」
「あ、はい」
「また連れてきて欲しい~。彼、華があるわ」
店内をキョロキョロと見回す。
「誰か探してるのお?」
マスターが聞く。
「はい。飯田さんって人、知ってます?」
「あぁ、飯田さんはね、さっき帰ったわよ」
帰られたか。
くそっ。
「明~。何やってたんだよ。飲もうよ。
さっきの友だちは?」
みんな上原さんのことを気にする。
彼は目立つからな。
このバーでは、筋肉モリモリでマッチョなやつがモテるんだけど。
上原さんのように芸能人並みの見た目だと
それはそれで、人目を引く。
上原さんにはこのバーにもう二度と来て欲しくない。
「彼は帰った」
「あの彼が、明の新しい相手?」
大介が興味津々の様子で聞いてくる。
「いや。僕は好きなんだけど、向こうがなかなか」
「へええ。でもなんで、ここに来たんだろうね?」
「もうこの話題は終わり。
それよかさ、こないだのサッカーの試合見た?」
僕は別の話題に移った。




