第33話_言い争い
よりによって、山野井がこの店に今夜、来るとは。
俺は店の入口近くの席に座っていた。
店に入ってきた山野井と俺はすぐに目があってしまう。
山野井は俺を見て固まっていた。
「えっ」
山野井は小声で俺に話しかける。
「上原さん、どうしてここに?
上原さんが来るような場所じゃないのに」
マスターは
「あらっ!明ちゃんと知り合いだったの?」
と驚いている。
俺に一杯奢ろうとしていた中年男性は
いつの間にかどこかに消えていた。
「山野井はよく来るんだ?ここに」
山野井と視線が合わせられず、俺は下を向いたまま聞いた。
「上原さん、とりあえず出ましょう?
彼の分は僕が払うんで」
山野井は店主にそう言うと、俺の腕を引っ張った。
すると店の奥から
「明、遅いよ。こっちで飲もうぜ」
若い男が、山野井の方にやってきて言った。
そして俺の方を見ると
「あれ?知り合い?よかったら、あなたもご一緒にどうですか?」
と言う。
「いや、彼は帰るところだから」
と言って山野井は俺の腕をまた引っ張っる。
俺と山野井は店の外に出た。
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「上原さん、一体どうして」
バーの近くにある公園に入った。
ベンチと滑り台があるだけの狭い公園だった。
「あの店って、出会いを求める店ってことで合ってる?」
「まぁ、そうなんですけど」
山野井は頭をかく。
「上原さん、どうしてあの店にいたんですか?
偶然来たなんて信じませんよ」
「連れてこられた」
「誰に」
山野井は追及の手を緩めない。
「怒らない?」
「怒りませんから言ってください」
「飯田さんに連れてこられた」
飯田さんの名前を出した途端、山野井の顔色が変わった。
「どうして、飯田さんと二人きりで会ってるんですか。しかもあの店で」
山野井の口調が激しくなる。
「怒らないって言わなかった」
山野井は「はぁぁ」とため息を付いた。
「あのバーだって強引で危険なやつが何人か
出入りすることもあるんです。
何かあったらどうするんですか?」
「なんで俺だけが責められるんだよ。
山野井だって、あのバーにしょっちゅう出入りしてるんだよな。
だったら山野井だって危険じゃん」
俺はイライラしてきた。
なんでいつも俺ばかり怒られたり心配されるんだ。
「山野井はもう、俺の心配なんかせず、
普通にゲイ同士で付き合えばいい。
さっきのバーの男の子みたいな?」
俺はそう言ったあと、すぐに後悔した。
何を言ってるんだろう。
思ってもいないことを言ってしまった。
「そうですよ!そのつもりです。
だからさっきのバーで相手を探していたんです。
上原さんも、さっさと彼女つくったらいい。
そしたら、飯田さんも諦めるんじゃないですかね」
山野井は一気にそう言うと黙り込んだ。
完全に喧嘩になった。
お互い下を向いたままだった。
「俺、帰る」
山野井にそう告げると公園を後にした。




