第29話_脅される?
山野井は、忙しい仕事の合間に、
飯田さんと3人で話し合う時間をつくってくれた。
「飯田さんにちゃんと迷惑ですって言った方がいいですよ。
でも二人きりじゃ心配だし。
上原さんは、はっきりと断れない性格だから僕も同席します」
ということだった。
山野井がいてくれるなら安心だ。
俺はそう思っていた。
だが、話し合いは意外な方向へと展開してしまうのだった。
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「山野井さんのこと、好きなんですか?」
飯田さんは俺にそう尋ねた。
「なんで飯田さんにそんなことまで
言わなきゃいけないんですか」
俺はそう言って誤魔化した。
山野井ほうを見ると、傷ついたような顔をしていた。
山野井は俺に
「山野井のことが好きだ」
とはっきり言ってほしかったのだろう。
俺はまた、やつを傷つけている。
「どうですか、一度3人で遊んでみませんか」
飯田さんがふいに、そんなことを言いはじめた。
「遊ぶ......?なにをして」
俺がたずねると、
山野井は、急に怒り出した。
「話にならない。とにかくもうこれ以上、
上原さんにちょっかい出すのは止めてください。
業務上関わるのは仕方ないとしても」
「山野井さん、真面目だなぁ。
そんなに怒らないで。もっと楽しまないと」
飯田さんは余裕だが、山野井は顔を赤くして怒っていた。
山野井がこんなに取り乱すのは珍しい。
「山野井?」
俺はまずいと思った。
山野井の様子がおかしい。
ハッキリと断らない俺に怒っているのか。
そこで、
「飯田さん、個人的なお誘いも
必要以上の接触も困ります」
飯田さんに強めの口調で言った。
さらに続ける。
「飯田さん、あなたの自由ですけど、
社内で不倫もしていますよね?
見たんです。佐々木さんと歩いているのを」
俺が思い切って、そう言うと、
飯田さんは、目を見開いた。
「見られてたかぁ」
「不倫は、やるほうの自由なんで口出しはしませんけど、これ以上しつこくするなら、仕事に集中できないとして上に報告します」
それだけ一気に言った。
俺にしては、かなりハッキリと言った。
山野井が怒りだしたので、俺もなんとかしなくてはと焦ったのもある。
でも一番は、飯田さんに対して、かなりウンザリしていたのだ。
できる限り、がんばったつもりだった。
すると飯田さんは
「上原さん、怒った顔もいいですね。
じつはこんな写真があるんですよ」
飯田さんは俺にスマホを見せた。
山野井も飯田さんのスマホを覗き込む。
そこには、手を繋いでいる山野井と俺が写っていた。
あの公園デートの日の写真だった。
そして、二人でアパートにはいっていく写真も。
山野井が俺の背中のあたりに手を回していて、
親密な様子の写真だ。
「いつの間にこんなの撮ったんですか?」
おどろいた。
「まぁ、決定的な写真じゃないですけど。
みれば分かる、そんな写真ですよね。
こういうの、バラまかれたら
仕事がやりづらくなるんじゃないですか?」
飯田さんはニッコリと笑う。
こいつ......。
山野井はイライラと言った。
「こんな写真、バラまかれても
何とも思いません。むしろ嬉しいですね。
上原さんとの仲が、みんなに認められれば」
「古い体質の上場企業でしょう。オタクは。
役員は60代の昭和人間ばかりですよ
大人しく僕に従った方がいい。
少なくとも、中途採用の山野井さんと違って、
新卒入社で出世コースに乗っている上原さんには
大きな痛手でしょう。
どうやら、上原さんは、山野井さんとの恋愛にも躊躇しているようですしね」
ニヤリとこちらを見る飯田さん。
こんな脅しをかけてきて、
俺たちをどうしたいというのだろうか。




