第27話_飯田さんは普通ではない
22時。
スマホが鳴った。
きた。
山野井からだろう。
「やっぱり飯田ってヤバいやつですよ!」
山野井は興奮気味に言った。
「今日の昼間のこと?
顔が近すぎるって、俺も飯田さんに注意したんだけど」
「あれはセクハラ確定です。めっちゃ見ていて不愉快でした。
男が男にするセクハラも認められるべきです!」
「うーん、それはなかなか難しい気が......」
「なぜです?上原さん、当事者のくせに頭が固い!」
山野井は、興奮した様子で話を続けた。
「とにかく!僕は飯田に腹が立って。
それで女子社員たちから情報を集めたんです」
「女子社員から?」
「そうです。あいつ、飯田についての情報です。
あいつ、佐々木さんと付き合ってるし、それ以外にもなにかありそうだと思って。
そしたらビンゴでした」
山野井が言うには、飯田さんは多くの女性を誘っているらしい。
今日聞いただけでも4人の女子社員が、
飯田さんと深い仲になっている可能性があると言う。
「4人も?」
「そうです、しかもいずれも既婚者っぽいです」
俺は思わず考え込む。
「飯田さんって、うちに常駐し始めて
どれくらいになるっけ」
飯田さんは、ウチの会社の社員ではない。
うちの部署に常駐して技術を提供していた。
「半年くらいですかね」
「半年で4人と不倫......」
どう考えても異常だ。
「僕の女子社員情報網から入手できただけで4人ですからね
もっといるかもしれない」
「それにしてもなぁ、女子社員情報網ってなんだよ」
「僕は、女子たちと仲がいいですからね。
彼女たちから得られる情報って、会社で生き残っていく上で重要なんですよ?」
山野井が女子社員のお弁当を食べさせてもらって
キャッキャッと喜んでいる様子を思い出した。
「ふうん。そうだよな、お前、女たちにモテるもんな......」
「あれっ。ヤキモチ焼いてます?」
電話の向こうでニヤけている山野井の顔が浮かぶ。
「いいなぁ、こういうのも」
山野井が嬉しそうに言う。
「えっ、いいなぁ......ってなんだよ」
「いつもどちらかというと、僕のほうが上原さんに対して
不安を感じることが多いから。
たまには僕もモテるってとこ見せて、
上原さんを不安にさせないと」
「お前、女に興味ないじゃん」
「そんなこと、ひとことも言ってないですよねー?」
「いや、見てりゃ分かるって。
女の方も、お前に下心がないから、心を開きやすいというか」
「ふーん、僕だって中学生の頃は女子と付き合ったことだってあるんですからね」
山野井が慌てて言う。
「ハハハ。そんな昔のこと」
俺は鼻で笑う。
「とっとにかく、僕は女子たちに信頼されているんです」
「わーかった、わかった。話戻そう」
かなり話がそれてしまった。
「飯田さんは、ちょっとおかしいね。
そもそもうちの社員じゃない、外部の人間だからといって
モラルというか、意識が低いんじゃないか。
こんなのって、おかしい」
「ですね。おかしい。アイツが不倫してるってウワサをみんなにもっと広めたら良いんじゃないですか」
「山野井。それはダメだよ。倫理的にどうかと思う。
それに不倫の噂を広めることは名誉毀損にもなるって聞いたことがある」
「上原さん、そんなことよく知ってますね?」
「まえにテレビドラマで観たんだ」
「へえ、なんのドラマっすか」
そこから話題は別の方向へいってしまった。
飯田さんについての結論は出ないままだった。
だがやがて、物事は意外な方向へ展開していくのだった。




