第24話_日向ぼっこ
「デートしてください」
山野井からそんなメッセージが来た。
「デート?」
「普通に会いたいんです!」
「どうしようかな~」
と返事する。
男二人でイチャイチャと街中を歩くのだろうか。
別にイチャイチャしなくても、普通に歩くのか?
何するんだろう?
しばらく返事をしないでいると、
「焦らして楽しんでます?」
山野井から、怒りの絵文字付きで
メッセージが来た。
「いや。デートって男二人で何するんだろうと思って」
「食事したりとかですよ」
「う~ん」
またしばらく返信できずにいると。
「じゃあ、今週の日曜日!14時に上原さん家の最寄り駅で待ってます!」
山野井は煮え切らない俺に、イライラしたのか、
勝手に決めて勝手にメッセージを終了した。
約束の日曜日。
待ち合わせの場所に行くと山野井がすでに来ていた。
俺を見つけると、笑顔になって激しく手を振る。
飼い主を見つけた犬みたいだった。
「それで、例の飯田さんとの件は、あれから何か進展あったんですか?
っていうか、進展あったら困るけど」
山野井は、俺と会ってすぐに、そのことを聞いてきた。
「連絡は来たけど、うまくかわしてる」
「うまくかわしてる?無視でいいんじゃないですかね?」
「仕事で何度も会う人だよ?そんな失礼なこと出来るかよ」
「差し支えなければ、そのメッセージのやり取り、見せてください」
山野井は意外に嫉妬深く束縛も強いようだった。
「実際のやり取りまでは見せられない
そんなことしたら飯田さんに悪いし」
山野井は、悲しそうな顔をした。
「ごめん。でもほんと、世間話しかしてないから」
本当は、飯田さんから再三、プライベートで会いたいと
誘いを受けていた。
ニブい俺でも、これは「誘われている」と分かった。
「今日はいい天気ですよね!上原さん家の近くの公園
気になっていたんです」
あまり人混みをウロウロ歩きたくない。
仕事で疲れているので、気合を入れたデートも疲れる。
そんなわけで、その日は俺の家の近くにある大きな公園を散歩することにした。
鯉に餌をあげ、遊歩道をぐるっと歩く。
屋台が出ていたので、みたらし団子を二人で食べた。
公園の中につぶつぶの石がたくさん並んだ不思議な場所があった。
「足つぼ」と書いてあるので、どうやらこの上を歩けということだろう。
ほかの人も靴下で歩いていた。
「上原さんやってください」
山野井が言うので、靴下になり歩いてみる。
「うっ......」
思った以上に痛い。
歩くたびに足の裏にくるのだ。
へっぴり腰になり、歩くたびに悲鳴を上げ、
しまいには、まともに歩けずに四つん這いになった。
山野井は大笑いしていた。
やつは、涼しい顔をして足つぼの上を歩いてみせた。
「どういうことだよ!お前、事前にここで練習しただろ」
俺は納得がいかなかった。
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「穏やかな休日って感じっすね
上原さんとこんなふうに過ごせるようになるなんて、思わなかったな」
「前から俺たちって仲良かったじゃん?」
「えっでも、プライベートで会ったりはしなかったじゃないっすか」
「そうかぁ、仕事のあと飲んだりしたよね?
でも休みの日にまで、会ったりしなかったかぁ」
そんなことをボソボソと話す。
芝生に寝転がり、冬の太陽の光を浴びた。
弱々しい陽の光だったが、体が充電されるような、そんな気分になった。
そのとき
「上原さん、あれって」
山野井が俺の肩を叩く。
「あれは......」
飯田さんとうちの会社の佐々木さんが歩いているのが見えた。
佐々木さんはうちのシステム部の女性で派遣社員だった。
腕を組んで、かなり親しそうな様子だった。
「飯田さんってバイなんですかね」
「バイ......?」
「男性も女性も両方いけるってことです。上原さんみたいな」
「俺もそういうカテゴリなのか......知らなかった」
俺たち二人は兵士のように芝生にうつ伏せになり、
飯田さんと佐々木さんの様子を目で追った。
二人は、俺たちの目の前を歩いていたのだ。
二人は腕を絡ませ、今にもキスしそうな勢いだった。
「佐々木さんって結婚してなかったっけ」
俺は気づいてはいけないことに気づいた。
「ですね。子どもがまだ幼稚園だったような」
俺と山野井は目を合わせた。
「見なかったことにしよう」




