第19話_梨央との別れ
「蓮さん」
梨央は目に涙をいっぱいためていた。
「ほんとうにごめんなさい......
あの日、喫茶店で蓮さんに相談したこと。
私の様子がおかしいって香苗にバレちゃって」
梨央がニューヨークにたつ。
山野井と俺は、空港まで見送りに来ていた。
「もうぜんぶ忘れたほうがいいよ」
俺と梨央の様子を山野井は離れた位置から
腕を組んで眺めていた。
山野井の表情を見なくても分かる。
おそらく、冷めた目で俺たちを見ていることだろう。
「香苗には、明さんに何か助言されたとか、
そういう事はバレていないです。
私が独断で、親に相談して海外に逃げることにしたと。
香苗ははそう思っているはずです」
「梨央にも俺たちに対しても、もう彼女からの報復はない?」
「そのはずです」
「アメリカでがんばれよー」
俺は、彼女の肩をたたいた。
そろそろ梨央は保安検査場にはいらなければならない。
ここでお別れだ。
「蓮さん。最後に会えてよかった。
会えなかったらずっと心残りでした。
もう一度言わせてください。
ほんとうにすみませんでした」
梨央は深々と頭を下げる。
「もういいって」
そして、梨央は俺に駆け寄ると、
俺のことをぎゅっと抱きしめた。
「私は蓮さんのことが本当に好きでした」
そう小さな声で言った。
「香苗に、お金をだまし取ってこいって言われたんだけど
でもそんなこと出来なかった
買ってくれた品物はごめんなさい、
全部、香苗に取られました。
いつか私も働き始めたら、お金を返します......」
そう早口で言うと
手を振りながら保安検査場に向かっていった。
「梨央......」
俺は梨央に向かって手を降った。
日本を離れるのが一番いい。
安全な地で、のびのびと失った青春を取り戻して欲しい。
自由に過ごしてほしかった。
俺は涙もろいところがある。
泣きそうになったが、山野井の目もあるので、こらえていた。
「感傷に浸らないでください」
後ろから山野井のイライラした声が聞こえてきた。
「山野井。なにイライラしてるんだよ。
感動的な場面なのに。お前も感動したろ?」
俺は振り返って、山野井を見上げた。
「感動しませんね。
好きなひとが、抱きつかれてるの見せられて。
しかも彼女は、上原さんを振り回したんですよ。
イライラしかしませんよ
せいぜいニューヨークで人に揉まれて
修行してきてほしいっすね」
「山野井。お前はひねくれている」
俺は、プリプリと怒っている山野井を残して歩きはじめた。
「あっ、上原さん!待ってください。
置いてかないでくださいよっ。
そうだ、空港でなんか食べて帰りましょうよ
そのあとデートしましょう!」
後ろからそんなことを叫ぶ声が聞こえた。




