第11話_梨央が抱えているトラブルとは
「助けてほしいって」
嫌な予感がした。
金銭関連だろうか。
なにかの勧誘?
宗教。
マルチ。
世間にはさまざまな落とし穴がある。
もう別れたのに。
助けてやる義理なんて無い。
山野井だったら、ここで席を立つだろうな、
そんなことをぼんやりと考える。
だが俺は優柔不断で
人から好かれたい。
そんな思いが強い人間だった。
「何があったのか言ってみて。
力になれるか分からないけど」
梨央にそう言ってしまった。
「香苗とは中学から一緒なんです」
梨央は香苗さんのことを話しはじめた。
「そうなんだ。あの大学の付属中学とか?」
「そうです。エスカレーター式で。
いわゆるお嬢様学校で」
「香苗は親がお金持ちで。
ウチなんかより裕福なんですけど、
その分ワガママで。
私のことは何でも言うことを聞く使用人のように思っています」
「えっ。香苗さんが?」
「そうです。
高校時代にはクラスにカーストみたいなのがあって。
香苗はカースト最上位。私は、下から二番目くらい」
「カースト」
田舎の県立高校、男子校出身の俺には
想像できない世界だった。
「香苗の言うことを聞いていれば、クラスでいじめに合うこともなく
安泰だったんです」
「ふーん、そうなんだ......」
俺にはイマイチ想像がつかないが、とりあえず相槌を打った。
「大学に入れば解放されるかと思ったけど、
上下関係はまだ続いていて。
今度は香苗は男の人を誘惑することに興味を憶えたんです」
「男の人を誘惑?
それで街コンに参加したり、社会人と遊んだり?」
「私は嫌なんですけど」
正直に言うと、
香苗さんは、あまりモテる外見ではなかった。
しかし梨央は、男が振り返るような魅力がある。
香苗さんと梨央のふたりは親友と言えるほどの仲だと
思いこんでいたのだが。
「もう大学生なんだし。
香苗さんとは距離をおいたら?
高校の時みたいにいじめられる心配もないよね?」
香苗さんとズルズルと縁が切れない
梨央にも悪い部分があるのではないか?
話を聞いていた俺はそう思った。
だが。
梨央は、俺の言葉を聞いて
首をふるふると横にふると、
さらに涙を流し始めてしまった。
「一体、香苗さんと何があったんだよ」
「私は香苗に弱みを握られているんです」
という。
梨央の話を要約すると、
かなり悲惨な内容だった。
梨央は、香苗さんの紹介で
悪い男と引き合わされ、レイプされてしまった。
そのとき、動画を撮られたとのこと。
その動画をネタに、さまざまなことを
強要されているらしい。
「ネットに流すっていうんです
もうどうしたら良いか分からなくて。
乱暴されてから、キスとかそういうのも
怖くて。蓮さんには失礼なことしたかもしれない」
だからあんなにキスや手をつなぐことに
緊張していたのか?
「犯罪だよ。警察に行ったほうが良い」
俺は当然のことしか言えなかった。
だが、警察に行けないから、俺に相談しているのだろう。
しばらく沈黙が続いた。
「俺が香苗さんに話してみようか?」
そう言ってみたのだが。
「そ、そんなことしたら、香苗がキレます
何するか分からない」
梨央は慌てていた。




