帝国放送協会報道特集『統一への道 第六回 1993年 東京 年末』
設定絡みは基本ソードワールド方式で行く予定。
「矛盾が発生したら、後から書いたものを優先する」というやつ。
また、「書籍についての記述を最優先にする」事にもしています。
それで解決できない矛盾が出た場合……
……目をつぶってみなかったことにしてくださいorz
間もなく統一から十周年を迎える今年は各地で記念行事が行われている。
しかし、バブル崩壊から続く経済不況と統一にかかったコスト及び社会問題は未だ多くの軋轢を残しつつ今も横たわっている。
今回、統一記念番組として各局合同の報道特集番組を制作したのは、このような状況下において我々の選択を今一度振り返り、よりよき未来へ共に歩んでいくことを願うからである。
願わくば、二十周年を迎える頃においては、これらの問題を過去のものにできている事を祈って。
--冒頭ナレーションより抜粋--
『やっと機密が解除されたゾルゲ事件ですが、あの事件が第二次世界大戦に多大な影響を与えたことが分かりました。
当時、日本の方針は北進(対ソ戦)と南進(対英仏戦)の二つに分かれていたのですが、南進を決定する事になります。それが太平洋戦争に繋がるのですが、ゾルゲを使っていたソ連にとってはシベリア方面の戦力が転出できる事を意味していたのです。
ですが、ゾルゲをはじめとしたスパイグループの逮捕に伴って全貌が明らかになり、この事実を利用したソ連への報復が行われたことで、状況が一変しました。
ソ連大使への日ソ中立条約違反への抗議と太平洋レンドリース船団への臨検発表はソ連独裁者に疑心暗鬼の種を植え付けるのに十二分であり、日本側が警告と威嚇射撃までしてソ連船団を追い返した事が決定打になりました。
日本が対英米戦を目指していたにも関わらず、その開戦までレンドリース船団は太平洋を渡れず、モスクワは危うく陥落しかかったのです。
マリアナ海戦後の降伏においてソ連が協力的だったのは、この太平洋からのレンドリース船団を安定化させたいと言う思惑があったようです。
とはいえ、ソ連はこの報復として満州戦争を引き起こしたわけですから、この選択が正しかったのかは誰にも分からないでしょう』
--当時の外交関係者のインタビューより--
『なぜ警察内部に帝都警が作られたか、その遠因として第二次世界大戦時の政変があげられます。
あれは端的に言えば軍に対する警察からのクーデターでした。
二・二六事件を忘れていなかった警察は当時の同盟国だったドイツからの技術供与で装甲兵の運用を始めました。
実際には張子の虎だったわけですが、そんなことは徴兵された兵士に分かるはずもなく、街路に立っているだけで威圧感が違いましたね。
マリアナ海戦後の政変で帝都警をはじめとする警察が都内を制圧した事と、近衛師団が動かなかった事、陸軍主力が大陸側に転出していた事が決定打になったのですが、同時に早期講和を意図していた重臣の関与もあったのでしょう。
「統帥権の干犯」と軍は激高しましたが、最終的には「ご聖断」があったことで勝負がつきました。
更に言えば、都内の制圧は二・二六で決起軍がやって見せたのですから、それを警察が真似できない道理もありません。
圧巻だったのがあの時桜田門に進出していた特車隊でした。警察内部では「特車」と呼ばれていましたが、その実態は97式中戦車です。どこから流れたかと言えば、財閥の秘密資金でマリアナに送られるはずだった生産品の中に紛れ込んでいたとか……』
--当時の警察関係者のインタビューより--
『統帥権問題は連合国への降伏後も燻り続けました。
特に陸軍は「海軍の不始末を押し付けられた」と不満たらたらでしたが、これらの反対過激派をロシアの、地中海の、欧州の戦場で使い潰す事で粛清して見せたのです。
何しろ降伏後で上位司令部は連合国にあるし、文句を言って帰る事もできない。
そりゃ派手に恨みを買ったと思いますよ。
けど、このタイミングでしか統帥権をどうこうするチャンスはなかった。
統帥権問題の根本は、内閣の下に軍が無い点にあります。
だからこそ、内閣下に「軍隊でない」軍隊が必要になったのです。
警察予備隊。海上保安庁。航空自衛隊。後の陸海空自衛隊はそういう意図のもとで設立されました。
それを連合国側も文民統制の観点から歓迎したというのも大きいでしょうね。
満州戦争は陸海軍及び陸海空自衛隊の混在戦闘でしたが、この戦争で大本営の指導限界と米国との政治介入で大本営及び陸海軍が消えて、自衛隊に統一されたのは良い事だったと思っています。
もちろん、占領された南樺太の事はありますけどね』
--当時の自衛隊関係者のインタビューより--
『第二次二・二六事件。
あれは不可解な事件でしてね。
天才作家の決起に帝都警が呼応し自衛隊に波及しかかったというのが一般的な知識なのですが、未だに多くが機密の壁に阻まれて全貌は明らかになっていません。
自衛隊側は陸海軍の復活を目指しての呼応というのは分かるんですが、帝都警側の決起理由がいまいち分からない。
何より、あの事件で襲撃を受けた政治家・官僚・財閥要人・華族は私腹を肥やしていた連中ばかりで、実際の被害が無かった地方ではあの事件を義挙として喝采をあげた所も多かったんですよ。
明治維新からまだ百年。
それを真似ようとして失敗した昭和維新からまだ四半世紀ほどしか経っていませんからね。
結局、事件は自衛隊の治安出動を招いて、帝都警は解体され、その多くは地下に潜った末に北日本に亡命したと言われています。
じゃあ、北日本政府の謀略だったのかと言えばどうもそれも違うらしく、安保運動を弾圧していた帝都警の解体を喜ぶ報道がされています。
あの事件の機密指定は絶対に解かれる事はないから、きっと永遠の謎になるのでしょうね』
--当時のマスコミ関係者のインタビューより--
『あくまで噂ですよ。
北日本に逃れた帝都警の連中が北日本崩壊時に決定的な働きをしたって話は。
装甲兵はその全身を覆う装甲のせいで、中が誰か、本人確認がしにくいですからね。
まぁ、対北日本軍の装甲兵部隊のアグレッサーをやっていた帝都警の部隊にとって、北日本の装甲は苦にもならなかったでしょうね。
ただ、面白い話として、国内ではあれだけ徹底的な捜査を行っていた警察が、統一後には第二次二・二六事件の関係者の手配書を樺太の警察署及び交番に張り出していないんですよ。
もちろん、現場は今でも奴らを許すなと捜査を続けていますがね。
公安が米国の諜報筋と会っていたとか、樺太華族の不逮捕特権の中に元帝都警関係者が居たとか、面白おかしくアングラ雑誌には書かれましたけどね。
裏取り?
する訳ないじゃないですか。私も命が惜しいですから』
--当時の樺太マスコミ関係者のインタビューより--
太平洋戦争改変
ゾルゲ事件で某西の公爵家が失脚する代わりに瑠奈の爺様が台頭する事に。
結果独ソ戦のソ連苦戦からのノンマンディー失敗の流れに。
このあたりはあまり細かく決めない予定。
特車隊
元ネタは『機動警察パトレイバー』のOAV『二課の一番長い日』。
97式AV代わりに97式中戦車を持ってこれると分かった時の私はとてもいい笑顔だった。
統帥権
大日本帝国の憲法では陸海軍の大臣が内閣総理大臣と同格という致命的欠陥を持つのだが、その結果軍の暴走が防げない事に。
このあたりは某龍神様を書いていた際の設定の流用である。
大体察している人もいると思うが、これ全部が押井守系『ケルベロスサーガ』と『パトレイバー』のオマージュである。