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道化遊戯 正義の傀儡のバラッド ゲオルギー・リジコフ その4

(近藤俊作の言う振付師が対戦車地雷を手に入れたと想定して、それを新宿ジオフロントのテロにどう使うのか?)


 仕事である新宿ジオフロントの警備中にも時間があれば、ゲオルギー・リジコフはそれを考え続けていた。


(こういう時は、自分がテロリストになったとして考えろ。

 テロの標的は恋住総理であって桂華院瑠奈公爵令嬢ではない……)


 この手のターゲットの選定はすごく大事な事である。

 まとめて殺せるならばそれにこした事は無いが、最後の最後で選択しなければならない場合その仕掛けが変わるからだ。

 避難経路も普通ならば、恋住総理と桂華院瑠奈で分けられているはずである。


(恋住総理がターゲットならば、『キャスリング』が全部囮という訳だ。

 その上で、どうやって対戦車地雷で彼を殺す?)


 当たり前だが、式場下に設置して爆破は多分ない。

 日本の警察はそこまで無能ではない。

 ゲオルギー・リジコフは思いだす。

 地下で発生した装甲兵同士の戦闘。『マースレニツァ革命』での攻防戦だ。


(地下戦闘で何より恐ろしいのは酸欠。次に火災だ。

 対戦車地雷を爆発させて火災を起こして酸欠を狙うというのは多分間違いがない……)


 休憩中に職務権限で見れる新宿ジオフロントの見取り図を確認する。

 式典は大勢の来場者と退路の確保から、第一層の地下駐車場にて行われるはずだった。

 そこで、前に起こった事件がつながる。


(地下換気システム周りのセキュリティーホールはこれが理由か。

 火災発生でセキュリティーがエマージェンシーモードに切り替わるから、メインコントロールルームからフロアに消火剤を撒ける。

 サブコントロールルームにもエマージェンシーモードは適用されるから、ハッキングしてそこから会場と避難路に消火剤を撒いて酸欠という所か……)


 巡回コースがコントロールルームの傍を通るので確認する。

 パソコンが並び、壁にもモニターがつけられたその施設には職員だけでなく、警察から派遣された警官も警備として端に立っていた。

 警官が声をかけるまえに身分証を提示してその場を離れる。

 そのままサブコントロールルームにも足を運ぶ。


「こっちの回線は何処に繋がっている?」

「これは……おい!これ接続間違っているぞ!?」

「畜生。またウイルスか……」


 サブコントロールルームでは完成式典前とは思えない修羅場が展開されていた。

 セキュリティーホールの存在が分かっているからこそ、できる限り防ごうという努力をしているのだろう。

 それでも完全に防げそうにないが。


「式典終了までショッピングエリアの回線遮断できないか?」

「無理だろう。式典終了後にどっと客が押し寄せて来るのに、回線を止めると開店準備ができないぞ」

「サブコントロールルームの封鎖は?」

「セキュリティーホールがメインコントロールルームだったら目も当てられないぞ。

 たとえ、ここがハッキングの踏み台になっているとしても、メインコントロールが落ちた時の事を考えたら使わざるを得ない」

「それに、エマージェンシーが発生した時の指揮は結局ここかメインコントロールルームでしないと避難誘導すらできない」

「全部ふさげるのかよ…これ……」


 ゾンビのようになりながら作業をする職員とやっぱり警備に立っていた警官に身分証を見せてゲオルギー・リジコフはサブコントロールルームから出る。

 巡回しながら、今度はショッピングエリアに足を向ける。


「商品の搬入急いで!」

「講習でやったように動いてね。まずは挨拶から」

「「「いらっしゃいませ!」」」


 近づく開店に向けてどの店も作業で忙しい。

 ここで回線を止めてシステムの再チェックなんてしたら間違いなくマスコミにかぎつけられて式典に泥を塗られることになる。


(考える事は二つだ。

 対戦車地雷を振付師は何処に仕掛けるのか?

 そして、振付師は何処からハッキングをするのか?)

 

 コントロールルームへハッキングする必要から、振付師はここのショッピングエリアのどこかにいる必要がある。

 そして、ハッキングの成功条件が対戦車地雷の爆発によるエマージェンシーモードへの移行だとしたら、何処に対戦車地雷を仕掛けたかが大事になる。

 巡回しながら今度は工事区画に入る。

 新宿ジオフロントは新宿新幹線を通すという目的があり、それに合わせての上層地下街の形成という目的もあった。

 そのため、新宿新幹線が来る予定のエリアはいまだ工事中になっている。

 

(仕掛けるとしたらここだろう。

 だが、どうやって爆発させる?)


 工事区画もショッピングエリアも広い。

 それを一人で探すのは無理があるので、一旦忘れてゲオルギー・リジコフは仕事に戻る事にした。

 仕事が終わり、近藤俊作と電話で意見交換をする。

 振付師が本土のヤクザの可能性が高いという情報を彼から聞いたゲオルギー・リジコフは受話器を片手に考える。


「……ゲオルギー。どうした?

 考え込んで?」


「すまない。

 東京ジオフロントでヤクザが絡んでいる工事ってあるか?」


 電話の遠くから愛夜ソフィアの声が響く。

 スピーカーモードにして聞いていたのだろう。


「一応表向きは関係がない事になっているけど、フロント企業じゃないかって言われてるのが末端下請けに五社。

 樺太華族が絡んでいる会社がその中で四社」


「工事区画は?」


 しばらくの沈黙の後、愛夜ソフィアの声が届く。

 キーボードをたたく音と共にその場所を告げた。


「地下最下層。

 廃棄物処理区画ね」

フロント企業

 元の言葉は企業舎弟でそっちのwikiをペタリ。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%81%E6%A5%AD%E8%88%8E%E5%BC%9F


廃棄物処理区画

 元ネタは『ニンジャスレイヤー』のアンダーガイオン。

 なお、地下下水処理場はこんな論文があったりする。

 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jriet1972/29/5/29_5_403/_pdf

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