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道化遊戯 コールランナー 愛夜ソフィア その4

この時期のコールガールはAVに出ていた可能性あるよな……あっ!

あと2.3話で一区切り。

 小金井警察署を出た四人の内、ゲオルギー・リジコフは一人で電車で帰り、残った近藤俊作と愛夜ソフィアと三田守の三人は三田守の引っ越しの手続きをして鶯谷に戻る。

 管理している不動産屋に菓子折りを持って賃貸契約の解除と違約金の支払い、国分寺市役所に行って引っ越しの手続きなどを終えて鶯谷に戻ってきたのは夕方だった。

 まだ契約時間内なので北樺警備保障が警備をしていたが、この確認の後で契約終了と言う事になっている。


「よぉ。何だか大変そうだったじゃないか」

「おやっさん。来ていたんですか?」

「まぁな」


 待っていたのは小野健一麹町警察署副署長で、私服なのに待っていたせいか下谷警察署のパトカーが興味深そうに近くから見守っていた。


「爆発物はありませんでした。

 侵入された形跡はありましたが……何か盗まれたかを確認していただけると」


「わかりました。

 三田くん。

 警備の人と一緒に私の部屋のパソコンを持ち出して頂戴。

 捨てるから」


「捨てちゃうんですか!?」


 三田守のもったいなさそうな声に、愛夜ソフィアも同意するが変えるつもりはないらしい。

 なお、この設備だけで軽く五十万はするが、当然買いなおしである。


「取られて困る情報は無いけど、パソコンに何か悪さをするぐらいは当然考えるでしょうね。

 まったく大損よ。大損」


 そんなことを言いながら、これも経費にしてやると考えていたり、こういう時の女と言うのはたくましい。

 その一方で、北樺警備保障の警備員が警察と共に中を確認した結果も報告する。

 愛夜ソフィアの警戒は正しかったことが証明される。


「調べた結果、この店全体で隠しカメラが一つ、盗聴器が七つ発見されました。

 この内、新しくつけられた盗聴器が三つ、かなり昔からつけられていたカメラと盗聴器が四つあったんですが何かご存じですか?」


「あー。

 それは、この店がラブホテル時代にあったものじゃないかなと。

 そういうAVもここで撮影されていましたし。

 もちろん、処分してくれたんですよね?」


 そのAVに当たり前のように出ていたのが愛夜ソフィアである。

 十本ほどそういう作品に出て、ヒットした一本は今をときめく写真家石川信光のパッケージ撮影だったりする。

 その大当たりがヤクザの目にとまり、愛人として囲われITバブルを迎える。

 身分を買ったときに愛人契約は切ったらしいが、娼婦として仕事をしていたあたり完全には切れておらず。

 近くで聞いていた小野副署長が近藤俊作に小声で確認する。


「たしかあの娘、身分を裏から買ったんだっけ?」


「ええ。こっちに売られて、売春をしながらIT革命で財を成してこの店を買ったんですが、その権利やら身分やらのもろもろはまっとうでない所からの調達なんですよ」


「そうか。じゃあ、これ渡してやれ。

 ご祝儀だ」


 小野副署長が封筒を手渡す。

 近藤俊作がその封筒を開けると、いくつかの申請書類と桂華グループのICカードであるケーカが入っていた。


「樺太生まれで北海道夕張市に引っ越し、そこで育って上京。

 ……という経歴が入っている、正規の身分だ。

 結婚の書類で偽造がバレるなんて嫌だろう?

 華族や財閥ってのは凄いな。こういうのを平気で用意してきやがる」


 固まる近藤俊作を見ずに小野副署長は煙草に火をつける。

 路上煙草はあまり行儀は良くないが、吸わないとこれから先の話ができない。


「この一件、ヤクザの抗争という事になっている。

 だから、ヤクザの事務所をガサ入れしたんだ。

 あの娘がらみのあれこれはほぼ潰したから、裏が絡んだら遠慮なく断るといい」


 それは、この一件の闇がそれほど深かったことを意味する。

 下っ端に対してもこれだけの待遇を用意する。

 だったら、小野副署長と共に深淵を見た場合、どれぐらいのものが……


「すいません。おやっさん。

 最後までついてゆけなくて」


「いいさ。幸せになりな」


 肩を叩いて小野副署長は近くに止まっていた下谷警察署のパトカーに乗り、そのまま走り去ってゆく。

 近藤俊作も煙草を吸おうと口に咥えると、火がすっと差し出される。

 待っていたのだろうなと彼はエヴァ・シャロンの火を煙草につけて吸う。


「たいしたことできなくて悪かったな」


「構いませんよ。

 桂華は巨大コングロマリットです。

 あなたたち以外の人にも働いてもらっていますし、今回はこちらの満足する仕事をしてくれたじゃないですか」  


 北樺警備保障が主導した平成天誅の逮捕は、近藤俊作たちが捕まえた四人を含めて18人が逮捕されていた。

 賞金首のおよそ二割を捕まえたというのは、賞金稼ぎとして十二分に働いたと評価していいだろう。


「これ、報酬です。

 まぁ、ご祝儀という奴で」


 当然のように近藤俊作と愛夜ソフィアの結婚を知っているのだから探偵は笑いたくなるが、煙草が落ちるのでかみ殺し、そこそこ分厚い封筒を受け取った。

 中を見ると、ゴムで束ねた使用済み万札の束が五つ。

 朝の愛夜ソフィアの力説は何だったのかと言いたくなるが、それを言うには口の煙草が邪魔だった。


「ちゃんと申請もしておいてくださいね。

 そっちも払いますから」


「一千万ももえらる仕事かね?これは?」


「何かあったら、兆円ですから。だったら誤差ですよ。誤差」


 煙草を投げ捨てて踏み消す。

 睨むが、エヴァ・シャロンの笑顔は崩せない。


「危ない橋は渡らんぞ」


「いいですよ。

 契約内で契約通りの仕事をしてくれるだけで、こちらとしては満足ですよ。

 新宿ジオフロントでも期待しています」


 そう言って、エヴァ・シャロンも近寄ってきた車に乗って去る。

 高価そうな車というか、米国大使館のナンバーで来るんじゃねえと突っ込みたくなるが、きっと意味があるのだろう。


「結局、望んだとはいえ、真相は闇の中……か……」


 ハードボイルド探偵ならば、もらった二つの封筒を近くのごみ箱に捨てただろう。

 だが、自分が望んだ舞台に立った時、己が半熟卵でしかない事を思い知ってしまっていた。

 だから、彼なりの美学と損得の結果、札束から一枚だけ抜いてごみ箱に捨てて二人の元に近寄る。

 三田守の驚愕の声と愛夜ソフィアのうれし泣きが見れる数秒前の間だけ、近藤俊作はハードボイルド探偵を気取ることにした。

パソコン

 この時期XP全盛期。


AVパッケージ撮影

 あの写真家撮っているのかなとサイコロ振ったらクリった。

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